第三回:運動と医学の出版社を設立【コンディション・ラボ 所長|理学療法士 園部 俊晴先生】

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なぜ出版社をはじめたのか?

 

 先生は「運動と医学の出版社」の仕事もやられているじゃないですか。やろうと思った理由はどんなところからですか?

 

園部先生 それは、ある時から自分の講演をするときに、自分の講演に対してどういう意見をもった人がいるのか、直接聞きたくてアンケートをとるようになったんです。

 

それで途中から、どんな臨床家がいるんだろうと思うようになりました。私は入谷先生ばかり追っていたから、臨床家をほとんど知らなかったんです、実は・・・。

 

アンケートでは「あなたが注目する臨床家は誰ですか?」という質問を最後にするようにしたんです。あっという間に何千という数が集まりました。驚いたのは、そこで名前が挙がった上位10人のひとは、ほとんど単独の書籍を持っていなかったんです。

 

例えば入谷誠先生や福井勉先生、紀伊克昌先生など、こんなすごい先生達でも当時は単独で執筆した書籍を持っていなかったんです。つまり書いているのは、学校の教員だけだったんです。

 

しかも学校の教員の中でも、本当に臨床家と言えるような人たちは、意外と書いていなかったんです。教員の書いた基礎医学とかはすごく大事だし、否定もなにもないです。ただ、本当の臨床家が書いた書籍やっぱり必要だと思ったし、臨床の現場から生まれた臨床に役立つ書籍を出版していきたいと思うようになったんです。そういうことがあって、この「運動と医学の出版社」という出版社を仲間と一緒に設立することになったんです。

 

それで、最初に成し遂げたかった入谷先生の「入谷式足底板」という本を出しました。また、日本で初めての日本人インストラクターが執筆した「ボバースアプローチ」 も出版できました。それ以外にも福井勉先生の「皮膚テーピング」、赤羽根先生の「肩関節拘縮」、林典雄先生の「評価と解釈」、そして私の「健康寿命」の書籍など、膨大な時間を費やしましたが、本当に臨床に役立つ書籍を出版できたことにとても満足しているんです。そういう風に本物の臨床家が書いた、本当に臨床に役立つ書籍を、臨床家の視点で出版していきたいなっていう想いが運動と医学の出版社にはあるんです。その強い想いがあったからこそ、こんなド素人が何も分からずに、一から出版社を始めたにもかかわらず、ここまで10年間やって来られたんだと思います。こんなちっちゃい出版社なのに、1番売れた本は2万部近く売れたんですよ。この業界が20万人しかいないんだから、その凄さがわかりますよね。それに海外出版もすでに4冊決まっているんですよ。すごいと思いませんか(^_^)。

 

ボバースから学んだこと

 

 先生に対する勝手なイメージですが、バイオメカニクス的なものをベースに臨床をやっているイメージがあって、ボバースの先生とかも呼んだりしてるじゃないですか。そのマッチングはどういう風に考えているんですか?

 

園部先生 出版社もそうなんですけど、私の研究会などで本物の臨床家と言われる人たちを呼んできました。そこでいろんな臨床家の先生方のアイディアや考え方を知ったことが、自分にはすごく大きくて、そのことによって自分はすごく成長できたと思っています。

 

特に、ボバースのインストラクターの先生方出会ったことによって体幹のことがかなり分かるようになってきたことが自分の成長には大きかったと思っています。我々とボバースのインストラクターの先生たちとは少し見方が違います。だからボバースの書籍を作るときに正直なところを言うと、私が不勉強なこともあって、先生方の書いた内容がほとんど分からなかったんです。そのため、かなりディスカッションしたんです。

 

「失礼ながら僕が分からなかったら3年目のPTは分かりませんので」と、しつこく聞いて、内容を繰り返し直していったんです。でもインストラクターの先生方はかなり粘り強く付き合ってくれたんです。特に古澤正道先生という有名な先生が主に付き合ってくれたんですが、普通憤慨するような修正も何度も何度も粘り強く付き合ってくれたんです。古澤先生の器の大きさには本当に感謝しています。

 

古澤先生も「いいものを出したい」という執念を感じたし、ディスカッションと古澤先生の臨床を実際に見る中で、なんか言葉に出来ないけど・・・分かってきたことがたくさんありました。当時は大変だということしか感じなかったけど、今思うとあれだけ長い時間を国際的なインストラクターとマンツーマンでディスカッションできたなんて凄いことだと思うし、それによって本当にたくさんの知識と感覚を身に付けることができたと思っています。もう本当に感謝の一言に尽きます。

 

それから体幹の診え方が変わってきたんです。だから倒立振り子をみるときも、常に自然に体幹を診られるようになりました。体に力が入るとか(姿勢筋緊張)、そういう診え方が変わってきたのがすごい進歩になったんです。

 

それと同時にすごく影響が大きかったのは、林 典雄先生です。

局所のところで、機能解剖学的な見方というのが、私にはあまりにも足りないと感じたんです。

 

はじめて林典雄先生と会った時は、ワンピースの海軍大将の「青キジ」とか「黄猿」とかを見たときみたいにびっくりしましたよ。ああいう度肝抜かれるような感じがあったんです(笑)

林典雄先生から学んだこと

 臨床を見てですか?

 

園部先生 臨床でなく、講演を聞いて、「こんなのありなんだ」という感想を率直に持ちました。と言うのも、力学だけをずっと追い続けてきたけど、「局所からこうやって治せるんだ」というのが分かったんです。

 

力学だけ見てきて、「入谷先生はできるのに、なんで自分はこんなに足りないんだろう」という疑問がそこで分かってきたんです。それは何かというと、例えば膝が内反して歩いているというのにも理由がいっぱいあります。

 

例えば外反するのが怖い人も内反して歩きます。一方で、内反になってしまう人も内反して歩く。お皿が外を向いて、膝が伸びない人も内反します。だから種類がいっぱいあるわけです。それを一律して内反しているという力学で捉えようとすると無理があるって気付いたんです。

 

そしてそのことで、「臨床で患者を診るのには順番がある」と分かったんです。つまり、今までは患者が痛みを有するのは、力学的に原因を求め、力学だけでなんとかしようと考えていました。でもこれではダメなんです。局所から見て、そして局所の原因と局所の仮説検証を行って、まずは「痛みを拾っている組織と原因を明確にする」ことから始めないといけないと悟ったんです。あまりにも当たり前のこの過程がないから自分は一歩前に進めないんだと気付いたんです。そのことに気付いてから、「局所(組織の機能解剖)から全体(力学)」という順番必ず辿るようにしましたこの流れになってから画期的に自分が変われたんです。だから、体幹のことが分かってきたということと、局所(組織の機能解剖)のことが分かってきたことが、自分の理学療法のにすごい大きな変化をもたらしてくれました

 

冒頭でここ5、6年で最高に進歩したと言いましたけど、それは特にプロスポーツ選手を診るときの選手の反応でも感じることなんです。それまでは関東労災病院にいたから、それほど力がなくても有名な選手を診ることはありました。でもやっぱりプロの選手は正直満足した顔になってなかったんです。でもいまは、来る選手が満足して帰るというのが、実に当たり前になりました。これは自惚れではなく、前のだめな自分を知っているからこそ、今の自分が成長してきたことが分かるんです。

 

それはやっぱり体幹のことが分かってきて、局所のことが分かってきて、そして根本的な動作の診え方として倒立振り子というのが見えてきたという点に尽きるんだと思います。そして、本当に進歩したと思っているのが、関東労災病院を辞める前の1年間だと思っているんですよ。

 

 辞める前の1年間ですか。

 

園部先生 そうです。今までが甘えていたわけじゃないけれど、やっぱり、ここで開業すると決めたときに、開業するという緊迫感がそうさせたように思います。

いま開業してから、半年間経ったけど、この半年間が臨床家としてさらに成長したと感じます。そして「まだまだ自分は成長できる」という確信があるんですよ。

 

 ここを開くということを、私はFacebookで知ったんですけど、衝撃的でした。関東労災病院でずっとやってきた園部先生が開業するとなると、それこそ一定の地位を得てわけじゃないですか。そこから開業しよう思ったのは何かきっかけがあったんですか?

 

園部先生 いっぱいあるんですが、1つは病院が急性期化してきたという背景があります。私がやっていることが、急性期とはちょっと違いますから。そして最も大きかったのは、いつからか、「自分を追求したい」という想いが強くなっていったことなんです。

 

他にも、病院で働きながら他のこともやっていたから、忙しすぎたというのもあります。でも辞めても結局もっと忙しくなって困っています。。。。

とにかくいろいろ理由はあったけど、関東労災病院で本当に仲間に恵まれたと思っているし、切磋琢磨する環境があったことにとても感謝しています。

 

特に今屋や勝木とか尊敬できる理学療法士もいて、そしてディスカッションできる環境があって、お互い高め合う環境もありましたし、関東労災病院に対しては感謝の気持ちだけです。もちろん迷いもありました。だけど、人生短いし、70歳位までしか臨床ができないと思うから、だから本当の成長を目指すためにはいまの病院では、真の臨床追求できないなと思ったのが最終的な決断の理由になりました

 

だからこそ、このコンディション・ラボ、誠実に臨床を繰り返し行っていって、本当の意味で極めていきたいんです

この想いがある限り、まだまだ必ず成長しますから・・・。

 

園部俊晴先生の無料講座「力学的推論を理解するためのステップ講座(全49回)」は下記のURLから登録可能です。是非ご覧下さい。

▶︎ http://pt-sonobe.com/mail-lecture

 

【目次】

第一回:師入谷誠との出会い

第二回:倒立振り子理論

第三回:運動と医学の出版社を設立

第四回:コンディション・ラボを開業

第五回:家族

 

園部先生のオススメ書籍

肩関節拘縮の評価と運動療法 (運動と医学の出版社の臨床家シリーズ)
Posted with Amakuri at 2018.1.9
赤羽根良和(さとう整形外科病院)
運動と医学の出版社
脳卒中後遺症者へのボバースアプローチ〜臨床編〜 (運動と医学の出版社の臨床家シリーズ)
Posted with Amakuri at 2018.1.9
古澤 正道・曾根 政富・鈴木 三央・掛越 逸子・椎名 英貴
株式会社運動と医学の出版社

 

園部先生コメント>>一般書では、松下幸之助の道をひらくっていう本がすごく好きです。あとは斉藤一人、勝間和代、マイケル・ボルダック、デール・カーネギー、ナポレオンヒル、スティーブRコヴィーとか好きです。1番多い年は200冊ぐらい本を読んだんですよ。下記は私のお勧めの書籍集です。ぜひご覧ください。http://pt-sonobe.com/books

 

園部 俊晴先生プロフィール

・コンディション・ラボ(インソールとからだコンディショニング専門院)所長

・運動と医学の出版社 代表取締役社長

・臨床家のための運動器研究会代表

・身体運動学的アプローチ研究会会長代行

経歴

平成3年4月 関東労災病院リハビリテーション科勤務

平成18年6月 秩父宮スポーツ医科学賞奨励賞

平成22年10月 臨床家のための運動器研究会 代表理事

平成28年1月 身体運動学的アプローチ研究会(入谷式を発展させるための会) 会長代行

平成29年3月 26年間勤務した関東労災病院を退職

平成29年4月 コンディション・ラボ(インソールとからだコンディショニング専門院)を開業する。 同時に㈱運動と医学の出版社 代表取締役 社長に就任。足・膝・股関節など、整形外科領域の下肢障害の治療を専門としている。故、入谷誠の一番弟子。一般からスポーツ選手まで幅広く支持され、、多くの一流アスリートや著名人などの治療も多く手掛ける。身体の運動連鎖や歩行に関する研究および文献多数。著書多数。新聞、雑誌、テレビなどのメディアにも多く取り上げられる。また、運動連鎖を応用した治療概念は、専門家からの評価も高く全国各地で講演活動を行う。

主な執筆書籍

改訂版・スポーツ外傷・障害に対する術後のリハビリテーション
Posted with Amakuri at 2018.1.9
園部 俊晴, 今屋 健, 勝木 秀治
運動と医学の出版社
医療・福祉で役立つ『効果的な文章の書き方』入門講座 (医療・福祉で働く人のスキルアップシリーズ)

 

 

テレビ出演

「ニースの森(TBS)」 「発掘あるある大辞典(フジテレビ)」 「バースデイ(TBS)」 「助けて!きわめびと(NHK総合)」など多数。

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