第一回:祖父の死で感じた逝き方を選択するということ【看護師/理学療法士/介護福祉士|羽田真博先生】

  • Line
  • Hatena
1854 posts

 

知識がないとできないサービスがあり、それは価値となる

 

 理学療法士になったきっかけは?

羽田先生 

実は、理学療法士になる前、介護福祉士養成校に通っていました。親や周りの大人に流されて通っていたという感じです。高校生の時は、美容師になりたかったんですよ。大学進学に興味がなく、「カリスマ美容師」というのが、当時流行っていて、「美容師になればモテるだろうし、稼げるだろうと。その上、チヤホヤされて、気持ちのいい思いが出来る。兎に角、絶対に気持ちのいい思いがしたい。」と思っていました。

 

そんな浅はかな考えを見透かされていたのか、学校の先生や親の反応はあまりよくなくて(苦笑)。「大学に行く気もないなら介護の仕事はどうだ?これから高齢者増えるからいいぞ。」という強めの提案をいただいて・・・。指定校推薦ももらえるし、受験勉強も大してしなくていいなら、まぁ介護でいいかという感じで。元々、祖父母と暮らしていたこともあって、高齢者と関わることに抵抗はなく、介護についても「話し相手や将棋の相手をしていたらいいんでしょ。」くらいの認識しかありませんでした。現実は全く違いましたけど(笑)。


理学療法士に興味を持ったのは、その養成校の実習の時ですね。初めて理学療法士の仕事を見たとき、私の担当させていただいている利用者様に対して、私には全然できないことを目の前でされていたのを見て、単純にすごいなって思ったのがきっかけです。

 

色々と説明は受けましたけど、その説明はとても難解でさっぱり理解できなくて、漠然ともっと知識を付けないといけないなと感じました。理学療法士の人に対する細かい視点は、当時の私にとっては、非常に魅力的に見え圧倒的でもありました。マッサージや散歩のようなものを見せられていたら、そのようには感じなかったとは思いますので、運もよかったのだと思います。

 

 そこで感じたのは、専門的知識がないとできないサービスがあり、それには価値が付くということ。この出来事をきっかけに、漠然と理学療法士になりたいと思いました。周囲から、「先生、先生」って言われてましたし、「あれ?これは美容師とは別のパターンのモテるやつかもしれない」という仮説も少しだけ立てました。少しだけ(笑)。

 

実際、理学療法士として勤めてみてどうでしたか?

羽田先生 最初に勤めた病院は認知神経リハビリテーションの理論を積極的に取り入れている病院でした。実習でお世話になっていたのですけど、学校教育と学ぶことが違って新鮮で刺激がありました。当時は、脳科学等を積極的に勉強する病院が周囲にはありませんでしたので。

 

脳科学に関しては、直感的に「大事なんだろうな(モテる上でも)」という程度に思っていたこともあって、そこでお世話になることになりました。

研修でイタリアへも行かせていただきましたし、そこで出逢った方々は物凄くバイタリティーが溢れていて、今でもお世話になっている方がいます。

 

自分の意思とは関係ない形で人生の最後を迎える

 

そこから看護師になろうと思ったのはなぜですか?

羽田先生 僕が20歳の頃に亡くなった祖父の逝き方が大きなきっかけだったと思います。祖父は、とにかく病院嫌いな人でした。糖尿病の管理が不良で、入院しても早く出せというタイプの人でした。医師から、このままだと先は長くないと言われても、出せ、自由にさせろって言うタイプ。最期はゴルフ場のグリーンの上で心筋梗塞を起こして、そのまま救急車で運ばれて病院で救命・延命措置をして頂き、その後、意識が戻らないまま10日ほど生きたというか、生かされたのですが、その姿は、なんか祖父らしくねーなと。生前の「病院?ク○食らえ!!」的な生き方とのギャップと言いましょうか。どうも祖父らしくない。個性が全くない。愛くるしい孫の私を愛人に預けるような破天荒さがないなと。

 

もちろん、家族としては、その10日ほどの期間がお別れの時間になったので、そういった意味では良かったのかなと思いつつ、色々なチューブに繋がれて薄暗い病室にいる祖父を見て、自分の知っている祖父はそこにいませんでした。それまで好き勝手やってきていた祖父でしたが、そんな祖父が最後は自分の意思とは全然関係ない形で人生の最後を迎えるという出来事は、私の中ですごく大きなことだったのです。家族は哀しみの涙だったと思いますが、僕は悔し涙の割合が多かったように記憶しています。じぃちゃんの個性が殺されたって。

 

それがキッカケで「将来的には在宅医療に携わりたいな」「逝きたい場所で逝ける社会がいいな」と漠然と思い始めたのだと思います。ただ、この時点では、看護師になろうなんて考えはありませんでしたし、そもそも訪問看護ステーションの存在すら知りませんでした。知ったのは理学療法士になってからです。ただ、当時も今もですが、訪問看護や在宅医療を一緒にやってくれる看護師って探してもなかなかいないんですよ。病院で働くことが当たり前、患者が運ばれてくるのが当たり前で、地域で重症化を予防しようとか、逝く場所の選択肢を病院以外にも増やそうとか、そういうムーブメントに乏しいというか。地方の人口8万人前後の田舎都市に、私と訪問看護をやろうと思ってくれるような人って全然いなかったんです。

 

今でこそ訪問看護ステーションは、全国10000ステーションくらいありますけど、都心に偏っていますし、その当時は5000ステーションくらいしかなかったので余計にいなかったのだと思います。最近は、職域として在宅分野も一つの選択肢としてあるけど、まだ急性期=医療みたいなところがあって、在宅を選ぶ人は少ないですよね。都心でしか機能し辛いビジネスモデルでもありますし。

 

だったら、「自分がなるしかないか」「不確定要素を待っていても仕方ない」という感じで看護学校に飛び込みました。勢いと覚悟ですね。幸い、非常勤で理学療法士として働きながら看護学校に通うこともできました。看護学を学びながら、訪問リハビリに携われたことは、とても恵まれた環境だったと思います。資格取得に関しては、正直、理学療法士の知識があれば、勉強もそこそこで、取れました。簡単に取れるというと怒られちゃいますが、国家試験に費やした勉強時間は1週間ほどで特別難しいものではありませんでした。これは、私だからではなく、似たような資格を取得していれば難しい話ではないと思います。そもそも、資格は取ってからが大事ですし。活かし、周囲に還元して初めて価値が出るものだと思います。ツールですね。

 

― 看護師の実習について理学療法士の実習との違いはありましたか?

羽田先生 看護学生の実習は理学療法士のそれとは全く違い、1人で病院に行って実習をさせていただくスタイルではありません。公立校であれば、大概、近隣の公立病院が主たる実習先になります。県外へ実習なんて、まず有り得ません。教員も同行する機会が多いです。ですので、外の世界(色々な病院)をあまり知ることができません。

 

レポート課題もありますが、複数の学生に対して指導者が1人なので、理学療法士の実習とはフィードバックの量が圧倒的に違います。理学療法士の時は、学生1人に対して色々な先生の指導を受けれますから、そういった意味では恵まれた教育環境だなって思います。

 

看護師の場合、どうしてもできない子がいるとそこに対して指導が偏ってしまうし、その環境の中で学習にどう活かすかというのは、難しいかもしれません。個人的に大変だったことは、視点が全然違うことですね。どうしても理学療法士としてやってきた分、その視点が強くなってしまうので、看護師の視点で視野を広くすることが大変だったかなと思います。でもそれくらいですね。

 

戸惑いもあったし、大変だったけど、勉強になることばかりでした。そこで得た多角的な視点と視点の活かし方・使い方は今でも活きています。例えば、理学療法士だと、療養環境の温度・湿度や照度等をあんまり勉強しないですよね。看護師は、その辺りのことも勉強もします。学問として環境整備は単なる掃除ではないと学んだ時は、結構、衝撃だったというか、改めて目から鱗だったというか。

 

よくよく考えると、リハビリ室も適温がいいだろうし、適度な湿度がいいだろうから、そういう意味では別々の学問ではないのかもしれません。一つの事実や現象に対して、見る視点が違うだけだと思います。そこが重なると相乗効果を生むというだけで。

 

多くのセラピストに伝えたいのは、部屋の温度・湿度から呼吸・循環、栄養、睡眠状況等々、それらの多角的な視点を加えたらより良いリハビリを提供できることに繋がるよってことですかね。療養環境が快適でなければ、よい理学療法等は提供できないと思います。

 

続くー。

 

【目次】

第一回:祖父の死で感じた逝き方を選択するということ

第二回:理学療法士の技術を活かせなかった病院勤務時代

第三回:価値ある人間であれ

最終回:ナンパをしたら給与が上がる??

 

羽田先生オススメ書籍

お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)
Posted with Amakuri
佐藤 航陽
幻冬舎
売上げランキング: 3
「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法
Posted with Amakuri
中室牧子, 津川友介
ダイヤモンド社
売上げランキング: 492
究極の男磨き道 ナンパ
Posted with Amakuri
零時レイ
BBR
売上げランキング: 42
「言葉にできる」は武器になる。
Posted with Amakuri
梅田 悟司
日本経済新聞出版社
売上げランキング: 864
やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける
Posted with Amakuri
アンジェラ・ダックワース
ダイヤモンド社
売上げランキング: 114
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
Posted with Amakuri
リンダ グラットン, アンドリュー スコット
東洋経済新報社
売上げランキング: 48
伝え方が9割
Posted with Amakuri
佐々木 圭一
ダイヤモンド社
売上げランキング: 166
採用基準
Posted with Amakuri at 2018.1.25
伊賀 泰代
ダイヤモンド社

 

羽田真博先生のプロフィール

看護師/理学療法士/介護福祉士

職歴

2006年4月:医療法人 仁斎会 国府病院 理学療法士

2012年4月:岡崎市民病院 看護局 看護師

2014年1月:協和ケミカル株式会社入職 

同年5月:総合ケア在宅支援事業部 

       キョーワ訪問看護リハビリステーション 寄り添い屋開設 マネージャー就任

2018年1月:株式会社 AGRI CARE入職 新規事業開発部 部長就任

 

その他

一般財団法人 日本尊厳死協会東海支部 理事

エンディングサービスセンター かかりつけライフマネージャー

自立支援リハビリテーション研究会 役員

株式会社COCOHALE 温故知新プロジェクト「-tsutau-つたう」 PR/プレス

医療・介護「働き方改革」推進協会 世話人

POTENTIALIZE(ポテンシャライズ) 

販売戦略室室長/適性・性格検査ポテクト 公認エバンジェリスト              ・・・等


 3次救急病院ERから療養型病院、介護施設、在宅まで様々な領域で経験を積み重ねてきた過程で得た「見る・視る・観る・看る・診る」といった多角的な視点と、職種・領域の違いによって起こる連携上の課題を実践知として経験していることが最大の強み。多様な「み方」を用いて、臨床・共育・組織マネジメント・異業種連携に携わっている。 弱みは、一つの領域に対する経験の浅さと、女子からの「おねだり」と「お願い」。座右の銘は、「日々是愛撫」。

無料会員登録をする
  • Line
  • Hatena
第一回:祖父の死で感じた逝き方を選択するということ【看護師/理学療法士/介護福祉士|羽田真博先生】