ミャンマーのリハビリテーションの現状と特徴(NRH、国立リハ病院を中心に)

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停電が頻発する施設

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 私の配属先はリハビリテーションを主たる目的とする唯一の国立の病院であり、2013年7月まで5年間のJICA技術プロジェクトの拠点でした。1958年!からの歴史があり、建物は老朽化していますが理学療法と義肢装具の作製を主とするリハビリテーションサービスが提供されています。ただし、医療機能は貧弱、停電が頻発する状況にも関わらず自家発電設備はありません。2014年末時点での概要は下記です。  

  • 入院病床:定床50最大65、外来1日平均40
  • 職員:医師(常勤)4(院長含む)
  • 理学療法士11(技師長1名他1名外部研修中)
  • ソーシャルワーカー1
  • 看護師8、義肢装具士20
  • その他含めて全職員は75名ほど

スタッフの制服は色鮮やか

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入院では義足作製のための切断患者と脊髄損傷患者が多く、外来は腰痛、肩痛、膝痛などの治療(物理療法が主)に訪れる人や在宅の片まひ患者等、小児は脳性麻痺が主な疾患・障害となっています。患者数に比して理学療法士数が不足しているため、対応の多くは物療や自主訓練の指導となり、患者一人一人に応じた適切な治療・訓練は十分には行えていません。スタッフの理学療法士は皆女性で(医師も看護師も全員女性)、看護師以外は仕事中でも色鮮やかなドレス(民族衣装、ロングスカート風の物、写真参照)を着用しています。厳しい環境(暑季の訓練室は40度になりますが、エアコンは無く扇風機のみ、停電時はそれも止まります)の中でも皆さん、まじめに仕事をしていますが、知識に比べて、臨床技術の不足は否めず、総合的なリハビリテーションとしての成果をあげることが困難な状況があります。ただし、これらの問題は、作業療法士等の他の専門職が居ないことも含め一施設や職種等だけの責に帰せることではなく、ミャンマーの医療・福祉全体の、ひいては社会・経済の問題でもあります。

作業療法士・言語聴覚士の資格・要請は国内にない

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ミャンマーでのリハ医療の歴史はすでに紹介しましたが、現状、リハ医(Physical Medicine &Rehabilitationを専門とする医師)はおよそ140名、全国でリハ科のある病院が約60と、それなりの数のように見えますが、物療を主たる治療手段とする後療法が優先で総合的リハまでは手が回らないといった印象です。理学療法士は250名ほど、作業療法士、言語聴覚士の資格・養成は無く、義肢装具士の養成が本年より開始されます。医療全般は、国立の病院等による基本的な医療の無料提供システムと私費による私立病院等による診療が混在していますが、 私立病院・診療所は一部の大都市のみで地方、村落部にはほぼ存在せず、高額な費用負担が可能なのはごく一部の富裕層のみです。国立病院では医師の治療・診断等は無料ですが、検査、薬剤の一部、材料、入院費用等の負担が必要 であり、それらの費用負担が困難で治療継続できない場合は多く、リハが必要でも行えず在宅で寝たきりというケースも少なくありません(上写真)。また、 国立施設や医療職・病床等は絶対数も不足しており、養成を終えた医師や理学療法士等に十分な就職場所も提供できていないのですが、リハ以前の基礎的保健・医療サービスや電気や水・道路・住宅といった社会インフラの整備が優先されざるを得ない現状があります。

大塚進先生経歴

経歴

国立障害者リハビリテーションセンター勤務を経て、7年間の大学教員の後、2010年10月からJICAシニア海外ボランティアの作業療法士としてタイに赴任。2年強の活動を終えて、2014年2月から12月までは、ミャンマーの国立リハビリテーション病院にJICAシニア海外ボランティアの作業療法士の短期ボランティアとして活動された。

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ミャンマーのリハビリテーションの現状と特徴(NRH、国立リハ病院を中心に)