毎年1万人以上の理学療法士が国家試験に合格し、混沌とした空気が漂う今の理学療法士業界。
一昔前は、臨床力を磨き、セミナー講師を目指すというキャリアモデルに憧れる人も多かったが、ここ最近はどうも違ってきた。若手に「最近の悩みは?」と聞くと、返ってくるのは給与の不安や病院のグチばかり。病院や介護施設でも実質的なリストラの話もポツポツと聞くようになり、いよいよ療法士サバイバルは間近に迫ってきた。
二極化されていく時代の中で、淘汰されずに生き残るために今やるべきこととは。約300名以上のメンバーが集うオンラインサロン「Free PT salon」を運営しているネクストリーダー理学療法士で吉田直紀さんに、生き抜く術を伺った。
サバイバル能力の高い人の2つの特徴
ー サバイバル社会の中で、今後生き残っていく療法士はどのような人だと思いますか?
吉田 やっぱり主体性がない人は、厳しいんじゃないかなと思っていて。それは別に自費に行っても、うまくやっていく人とやっていけない人と二極化していると思います。
主体性を持つためには、「自分がやりたいことを徹底的にやる」ことが大事で、それこそ、乙武プロジェクトに携わっている理学療法士のうっちー(内田 直生さん)があれだけメディアに取り上げられて、活躍しているのは、彼が主体性を持って動き続けているから。
経験年数とか年齢とか関係ありません。行動の量とスピードと熱量を一気に引き上げられるかどうかが大事。そういうセラピストは生き残るんじゃないかなと。
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社会の流れを捉えてニーズを掴み・先を読むタイプの人と。行動・スピード・熱量でニーズを作り出して押し切っちゃうタイプの人。この2種類のタイプの人たちは、サバイバル能力高いと思う。
今は、色んな面で追い込まれてきている時代です。環境の変化に合わないヒト・モノ・環境は淘汰されていく。宇宙の法則だから誰にも変えられないですよね。増えすぎたものは減るし必要のないものは淘汰される。自然の摂理だなっと。
垂直展開と水平展開
ー それでは、具体的にはどんなアクションを起こせばいいと思いますか?
吉田 それは、垂直展開と水平展開の2軸で考えればいいと思っていて。垂直展開としてセラピストの知識を学ぶセミナーに行ったり勉強するのはすごく大事。
ただそれと同時に水平展開として、学んだ知識をセラピストの枠の外でどういかすかというのがより需要になる。現代風に「理学療法」をアレンジして、デザインするということ。
それは、Free PT salonのメンバーで作成した車いす×旅行雑誌「ベィmagagine」を作っていて、すごく感じる。一般の企業は車椅子の人がどう生活をしているのか、どう移動するのか、どうしたら快適に過ごせるか、理学療法士が当たり前に考えることを求めている。
そういった意味では、専門的なことを噛み砕いて、一般の人に分かりやすく伝えることができる人が今後生き残っていくと思う。それこそウッチーもFree PT salonでプレゼンをやってもらったとき、抜群に噛み砕く力が高かった。
「噛み砕き力」の身につけ方
ー 「噛み砕き力」ってどうやれば身につきますか?病院で普通に働いているだけで自然と身につくものなのでしょうか?
吉田 それだけだと難しい。臨床経験とか全然関係なくて。学会発表で「専門職」に伝えることと社会の中で「一般の方」へ伝えるということは全く別物。
普段から、どれだけ噛み砕くトレーニングをしているかが大事で、ブログでもSNSでもなんでもいいから普段から情報発信をして、人に伝えるということをやったほうがいいと思う。批判されたりすることもあるんだけど、それも1つの反応として捉えて。
波風の立たない発信はプラスにもマイナスにもならない。人の心を動かしていないということ。でも誰かの心を動かさないと何も始まらない。
今の若いセラピストは、僕らよりもずっと早くからデジタルに触れてきた世代だから、発信自体が得意な子も多いんじゃないかな。
本来なら、理学療法を誰にでもできるようにシステムを残すことが大事なのに、それをしている人が少ないばかりか、誰にでもできないように複雑化させようとしている人の方が多いよね。それだと、理学療法がどんどん孤立化してしまうのでは?って思う。
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