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作業療法士協会に”喝”! 会長候補者選挙に出た理由【首都大学東京 教授 大嶋 伸雄】

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第336回のインタビューは首都大学東京大学院教授の大嶋伸雄先生。大嶋先生は、昨年5月に行われた日本作業療法士協会会長候補者選挙に立候補し、惜しくも落選した。会長に通っていた場合に考えていた改革プランの構想は?今の作業療法士協会に何を思うのか。心のうちを直撃した。


時給1,000円の国家資格

 

ー 大嶋先生は昨年、OT協会の会長候補者選挙に立候補して落選していましたが、立候補しようと思った理由はどういったところにあったのですか?

 

大嶋 まず、今の作業療法士は断崖絶壁ギリギリの瀬戸際に立たされていることを自覚して、もっと危機感を持たなければいけないと考えます。国家試験を通って資格を取ったら一生安泰なんて、そんなことはあり得ないんですよ。

 

少し前にFacebookのタイムラインでたまたま流れてきたニュースを目にしましたが、訪問リハビリの就職情報で僅か時給1,000円でPT・OTが募集されていました。もう、その辺のコンビニでアルバイトするのと賃金が変わらないわけです。「4年間養成校に通って国家資格を取得する意味って一体何だろう?」と考えますよね。時代のニーズで介護福祉士の方のほうがPT・OTよりも給料が高い施設もあります。

 

資格が紙切れくらいの価値にしないためにも、日本作業療法士協会は、もっとこれからの作業療法士養成の方向性をきちんと示さなければいけません。

 

一方で有資格者がどんどん増えても、卒後研修などの整備が遅れた結果、残念ながら質の低い人材も増えてしまいました。そうなると専門職全体の評判も落ちるので、医療保険点数も下がっていくという悪循環に陥ってしまいます。

 

アカデミック側の人間も、自分達のやりたい研究・教育ばかりやって引き籠もっているのではなく、もっと協会活動に意見を出して、日本の作業療法士の方向性について議論して欲しいと思います。

 

ー また2年後に会長選挙が行われますが、先生はまた出馬される予定なんですか?

 

大嶋 次のことはまだ考えていないです(笑)。もう60歳を過ぎて余生も長くないので、個人的にはあまりそういう活動に時間を割きたくないというのが本音です。しかし、やはり自分の専門職にはプライドもあるし、作業療法自体も素晴らしい専門性です。その専門資格がどんどん衰退していくのを見るのはつらいという気持ちはあります。何か良い方法があればそれを考えて行きたいと思います。

 

私が厚労省の医系技官で、今のままのOTだったら資格を取り消し、別の資格と合併するかもしれない!

 

ー では具体的に今の作業療法士業界をみてどんなところに課題があって、改革のメスを入れる必要性があると思いましたか?

 

大嶋  まず身体障害の多くの作業療法士は、理学療法の真似ごとをしているだけですから、もし私が厚労省の医系技官だったら、絶対なくします。同じような専門職は全く必要ないですから。

 

私も若かりし頃は「自分の手で患者を治す」と意欲に燃えて、AKAやボバース法を勉強していたこともありました。しかし、40歳のころに教員となって作業療法を改めて学んでいくうちに、その大きな間違いに気づきました。

 

作業療法の仕事というのは、簡単に言うと「障害があっても、クライエントのできることを増やしてあげる」という仕事です。クライエントのやりたいことができるようにサポートする専門家であって、決して治すための専門家ではないんです。

 

よく回復期リハ病院の作業療法士さんは上肢の麻痺が改善することだけしか頭にないようなアプローチをしたり、反対に地域の理学療法士は調理訓練などをやっているんですよ。病院では作業療法士が理学療法のコピーをして、地域では理学療法士が作業療法のまねごとをやっていて、お互いのアイデンティティの危機ですね。

 

次のページ>> 身障の患者には心理アプローチを用い、精神科患者には身体機能へのアプローチを増やす。

 

作業療法士協会に”喝”! 会長候補者選挙に出た理由【首都大学東京 教授 大嶋 伸雄】

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