変えるのではなくコネクトできるようにする
仲間 運が良かったのは、一番最初の学校に入った学校の校長先生が素敵な先生で、その先生から色々学べたことです。ゆいまわるのコンセプトはその教えからきています。
校長先生は「教員が自信を持って教育ができれば、発達障害の有無にかかわらず、全ての子供たちは必ず元気に育つ。これは私の教育人生を賭けてでも言える」とお話しいただきました。
それまで、私は先生を変えるために関わろうと思っていたのですが、そうではなく、作業遂行の実現にうまくコネクトできるようにすることが私の仕事なのだと気付きました。
今、先生たちは子供たちに対する困りごとによって、各々が大切にしている「教育」に焦点が当たらなくなってしまっています。
教員が自分の教育に焦点を当てて、その実現に向けて、子供の人としての力、教師としての力、教育的スキルを最大限に活かせれば、子供は障害の有無にかかわらず育つと考えています。
ー この記事を見た作業療法士が小学校に関わりたいって思った人が、学校に入るためにはまず活動を理解してもらうためにはかなりコミュニケーション能力が必要な気がするのですが、どう思いますか?
仲間 学校に関しては文化があるので、この文化を理解するまではどんなに素晴らしい話術を持っていても難しいかと思います。共通言語あって、それが実践です。なので最初は焦らずに、段々と理解をしてもらいながら関わりを深めていくのが良いと思っています。
実際には、「じゃあ、2回くらい来てみれば?」みたいに、回数制限をかけられることが多いです。その時に、「その2回でどうなったら良いですか」というのを聞いて、そのキーパーソンになりそうな人の希望を叶えてあげることがポイントだと思います。
ー その変化って、定性的な評価でしか測れないですよね。
仲間 そうですね。だから、圧倒的に変えなければいけません。なので、やっぱり最初は、ボランティアや読み聞かせといった、子ども達との接点になる行事に参加して、経験を積んでいくのが良いと思います。
読み聞かせにしても、やっぱり全然集中出来ない子どもがいたりします。その時に、自分なりに評価したり分析したりすれば、臨床力が磨かれると思います。臨床に出るしかないと思っています。
「届けたい教育」に焦点を当てる
ー 子どもは先生以外に親の影響をすごく受けると思うのですが、そこに対して何か取り組んでいることはあるのでしょうか?
仲間 今は学校と家庭の関係が良くないところも多いと感じていて、それは問題に焦点が当たっているからだと思っています。
問題解決思考だと「問題があるんだから親としてこうしなさい」「いや先生がもっとこうしてください」という話しになるので、問題の擦りつけあいが始まってしまします。仲良くなれるはずがないですよね。
今、ゆいまわるが行なっているのは、届けたい教育に焦点を当てているので、話し合いの内容もガラッと変わります。でも元をたどれば、届けたい事があるからこそ、問題に感じるんです。
話し合いの始まりの時点では、親は「どうせうちの息子のこと悪く言うんでしょ」と思っていますし、先生も悩みながらくるので、とても重い空気から始まります。
でも、「届けたい教育」をみんなで出し合って、目標を決める話し合いをしているうちに、自然とイキイキした表情で意見を出し合うようになります。
届けたい教育に、焦点をあてる事で親は安心して先生と会議ができますし、それを叶える為のチームの一員として、「親としてできることはあれかしら?これかしら?」と自由に発想するようになります。
ー 違う矢印の方向を向いているのをちゃんと合わせてあげるってことですね。
仲間 合わせるというか、作業に焦点を当てると自然と合わせたくなる感じです。なので、連携も上手くいきやすいんです。
患者さんとしてではなく、一人のおばあちゃんとして
ー 仲間先生が作業療法士になろうと思ったきっかけについてお伺いしてもよろしいでしょうか。
仲間 母親が理学療法士なので、最初は理学療法士になろうと思っていたのですが、「これからは理学療法士の時代じゃない、作業療法士の時代よ。アナログな世界ではなくなるから、理学療法もきっと人の手を使わなくて済むようになる。それと比較して、作業療法の領域は人以外に代替できないから開拓すべきだ」みたいな話になって。」と説得されて作業療法士になりました。
ー お母様、かなり先見の明がありますね。(笑) 作業療法士になってから最初は、普通に病院で働いてたんですか?
仲間 そうですね、6年間は普通に病院で働いていました。私が病院に入ったのは、今から17年前なので、PTが下肢、OTが上肢をやる時代です。3年目くらいまでは、私も機能訓練ばかりやっていました。
ー その3年目に何があったんですか?
仲間 私が入院中に担当していた患者さんで、退院後に患者さんが、外来で来たときに「私には高校生の男の子と、中学校の女の子がいるのよ。それで車椅子で動け?料理はヘルパーに任せろ?私は母親なんだよ」って言われたんですよ。
その時に、「私は6ヶ月間一体何をやっていたんだ」って思って、号泣したのを今でもたまに思い出します。もちろん、情報として高校生の息子と中学校の娘がいるっていうのは知っていました。ただ、入院していた時に、この人からそんなことは一度も聞くことなく、手の麻痺が動くようにばかり考えていました。
でも、その方は患者さんである以前に、お母さんだったんです。病院で「どんなこと困っていますか?」と聞いても、大抵は「ナースコールに来てくれない」とか「週に2回のお風呂じゃキツイ」とか患者さんとしての語りしか出てこないですよね。
でも、退院して家のソファーに座ってもらうと、顔色や表情も、出てくる話の内容もやっぱり違うんです。
作業科学と出会ったのは7年目くらいの時で、「作業療法士は病気を見ているんじゃない、作業遂行を見ているんだ」って書いてあって、「これだ!」って思いました。
ー ゆいまわるは、琉球大学とコラボして作業療法士を対象に「地域の子ども支援するインクルーシブ教育推進人材育成プログラム」というのをやっていますよね。どんな内容か簡単にご説明ついて教えていただけますか?
仲間 計5日、全15講座(1講座90分)を通して、地域のニーズに応え作業療法の視点を活かし貢献できる技術者を育てています。
<講座内容>
第1回 学校の作業療法とは
第2回 保育園・学校教育のシステムについて
第3回 こどもの生活を支える地域のシステム
第4回 子どもの生活と社会問題(いじめ、不登校、子どもの孤立、虐待)概論
第5回 災害時の子どもの支援/世界の動向
第6回 子どもの生活と社会問題と実践
第7回 コンサルテーションに必要な理論
第8回 作業療法の基礎的理論①
第9回 作業療法の基礎的理論②
第10回 感覚統合理論と実践
第11回 感覚統合の評価と実践(セルフケア・読み書き)
第12回 子どもの発達と遊び
第13回 協働関係の構築に重要な面接技術
第14回 作業遂行評価と情報提供
第15回 事例を通して考えよう
今現在、全然地域の需要に対して、作業療法士の供給が全く追いついていません。子どもの貧困問題やいじめ問題が社会問題になっていて、そこに対して国も予算をかけるようになってきました。
私は、みんなが作業に焦点を当てることで、勝手に健康になり、気づいたら貧困があっても育つ状態になると考えています。そういった社会”問題”に合わせなくても、作業に焦点を当てるだけですべての問題に対応することができます。
作業療法は、それだけすごい力を持っています。社会全体として今、子どもに注目をしている今だからこそ、地域の子供支援の専門家として、作業療法士が飛び出さなければいけない時期だと思っています。
【日時】 5月30日(土) 21:00~22:30
【参加費】無料 ※セキュリティーの関係上、POSTの会員登録(無料)が必要になります。
【定員】280名
【参加方法】ZOOM(オンライン会議室)にて行います。お申し込みの方へ、後日専用の視聴ページをご案内致します。
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【目次】