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高齢期の体組成・体力とその健康影響―男性では骨格筋量、女性では脂肪量が筋力・歩行能力と独立して余命に影響―

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発表の概要

東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チームの藤原佳典 研究部長らの研究グループは、1)要介護化(要支援・要介護状態の新規発生)には、男女一貫して身体組成(骨格筋量注 1)・脂肪量)よりも身体機能(握力・歩行能力)が強く影響する一方、2)余命には、男性では骨格筋量・女性では脂肪量が、それぞれ身体機能とは独立して影響することを報告しました。

本研究成果は、国際誌「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に掲載されました。

 

研究の背景

高齢期の身体組成(骨格筋量・脂肪量)や身体機能(筋力・歩行能力)は、要介護化や余命に対して異なる影響をもつのではないかと考えられてきました。しかし、各指標の健康予後に対する独立した影響やその関連の形状については十分に検討されておらず、特に欧米人に比べてやせ型であるアジア人を対象としたデータは、絶対的に不足していました。そこで本研究では、日本人高齢者の身体組成(骨格筋量・脂肪量)と身体機能(握力・歩行能力)が要介護化・余命に及ぼす独立した影響を量・反応分析注 2)という手法によって検討しました。

 

研究成果の概要

群馬県と埼玉県の高齢者健診受診者 1765 名(男性 862 名、女性 903 名、平均年齢 72 歳)を対象に、平均 5.7 年(最大 9.5 年)間の追跡研究をおこないました。身体組成指標として生体電気インピーダンス法注 3)で求めた①骨格筋指数(四肢の筋肉量を身長の 2 乗で除したもの)と②脂肪指数(全身の脂肪量を身長の 2 乗で除したもの)を、身体機能指標として③握力と④通常歩行速度をそれぞれ評価し、これら4指標と新規要支援・要介護認定および総死亡との関連形状を分析しました。

その結果、男女とも一貫して、骨格筋量や脂肪量に関わらず、筋力・歩行能力が高いほど要介護状態になりにくく、低いほどなりやすいという関係性が明示されました(図 A)。一方、余命にも筋力・歩行能力が強く影響するものの、これらとは独立して、男性では骨格筋量が多いほど余命が長いという正の関係性がみられました。女性では脂肪量が高値であっても余命に有意な影響はなかったものの、脂肪量が少ないほど余命が短いという関係性が示されました(図 B)。

 

研究成果の意義

本研究結果から、高齢期の介護予防では、骨格筋量・脂肪量が多い/少ないに関わらず、まずは身体機能の維持・向上を一次予防のターゲットと据えるべきであることが明確になりました。すなわち、定期的な筋力運動等の実践によって、日常生活動作を円滑に遂行できるよう筋力や歩行能力を保持しておくことが重要です。一方、余命延伸の観点では、身体機能の維持・向上だけでなく、骨格筋量(男性)や脂肪量(女性)の減少による“痩せ”にも注意を払う必要があります。これには、運動実践と、たんぱく質をはじめとした多様な食品の摂取を組み合わせることが重要です。

当研究チームのホームページ(https://www.healthy-aging.tokyo/)では、筋力運動・食習慣に関するチェック表や、これらの具体的な実践のためのテキスト・動画等を公開しております。日々の健康づくりにぜひご活用ください。

 

 

用語解説

注1) 骨格筋量:

骨格に沿ってついている筋肉の量。自分の意志で動かすことができるため随意筋とも呼ばれる。本研究では四肢(両腕・両脚)の骨格筋量を測定。

注2) 量・反応分析:

原因となる要因の程度や変化によって、生じる結果や効果がどのように異なるかを連続的に検討し、関連の形状を明らかにする分析。

注3) 生体電気インピーダンス法:

体内に微弱な電流を流し、体水分量から筋肉量や体脂肪量などを間接的に求める方法。

 

掲載論文

・雑誌名:Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle

・論文タイトル:Dose–Response Relationships of Sarcopenia Parameters with Incident Disability andMortality in Older Japanese Adults(日本人高齢者のサルコペニア関連指標と新規要介護認定および総死亡リスクとの量・反応関係)

・著者:Satoshi Seino, Akihiko Kitamura, Takumi Abe, Yu Taniguchi, Hiroshi Murayama, Hidenori Amano,Mariko Nishi, Yu Nofuji, Yuri Yokoyama, Miki Narita, Shoji Shinkai, Yoshinori Fujiwara

 

詳細▶︎https://www.tmghig.jp/research/release/2022/0304.html

注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単に論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎません。論文で報告された新たな知見が社会へ実装されるには、多くの場合、さらに研究や実証を進める必要があります。最新の研究成果の利用に際しては、専門家の指導を受けるなど十分配慮するようにしてください。

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