今回は人工股関節術後の評価・治療について、紹介したいと思います。僕は以前、人工股関節全置換術を非常に多く行っている病院に勤務し、人工股関節術後の患者さんを毎日見ていました。そんな僕が考える人工股関節術後の評価・治療について、これだけ知っていると自信が持てますよという内容をお伝えします。
人工股関節術後の患者さんは、新人時代から担当する事も多く、また学生さんの症例にもなりやすい患者さんだと思いますので、知っておくと必ず役に立つと思います。
内容としましては、
①術後急性期には何をすればよいか?
②可動域訓練においてのポイント
③歩行改善のポイント
の順に紹介していきます。是非最後までご覧ください。
①術後急性期には何をすればよいか
まず最初に術後急性期に何をすればよいのかについて紹介します。術後急性期は、痛みも強く術式によっては荷重やROMが制限されることもあるので、「いったい何をすれば・・・」と困る事も多いのではないでしょうか?
そこで僕がお勧めしたいのは、「どうやったら痛くなく過ごせるか?」を患者さんと一緒に確認する事です。術後急性期の強い疼痛の原因は術創部周囲の炎症痛です、そして術創部痛の多くは術創部周囲が伸長される事で生じます。
そのため、「この人は手術でここを切っているからこうゆう動作は痛いはず」と事前に把握しておき、患者さんに説明することで術創部周囲の炎症痛を軽減することが出来ます。
例えば、後外側アプローチでは、大殿筋と腸脛靭帯の間や梨状筋などの深層外旋筋などを切って手術を行います。その為、腸脛靭帯が伸長される股関節内転動作や大殿筋や梨状筋などが伸長される屈曲や内旋動作で疼痛が生じやすいのでは?と考えることが出来ます。
よって病棟での生活の際に、股関節を外転・外旋位にした状態や骨盤後傾位のまま動作を行うように指導すると、少ない疼痛で動作を行えることが多いです。また、深層外旋六筋を切っているため仰向けで寝ると臀部が痛いという方も多い為、早期からうつ伏せをとる練習を行うと患者さんは非常に楽になります。
同様に前外側アプローチでは、中殿筋と大腿筋膜張筋の間から侵入し、前方関節包を切離して手術を行いますので、股関節伸展や内転で痛みが生じやすいです。この場合は、骨盤の前傾や股関節の外転を意識させた動作を指導・練習することによって少ない疼痛で動作を行えることが多いです。「先生の言う通りにやったら痛みが楽だよ」というようになれば患者さんの信頼は一気に高まります。是非、急性期では痛くない動作の指導・練習から行ってみてください。