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【書評】MMTの新たなスタンダード|日本理学療法学会連合版 徒手筋力検査法

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『日本理学療法学会連合版 徒手筋力検査法』は、理学療法士にとって新たな基準となる実践的かつ信頼性の高い徒手筋力検査(MMT)を解説した重要な書籍です。本書では、日本の臨床現場に即して策定されたMMTの要点をシンプルな形で216ページにまとめており、理学療法士にとって必携の1冊となっています。

歴史的背景と発展

徒手筋力検査の発展は、20世紀初頭にロベットとライトによる抗重力運動を基準とした筋力評価に始まり、1940年代にはケンダルやダニエルスによって体系化されました。これらの手法は、米国を中心に広まり、日本でも標準的な評価法として受け入れられています。

ダニエルス法(Daniels and Worthingham’s Muscle Testing)は、簡便な筋力評価法として広く用いられていますが、度重なる改訂による測定方法の変化に伴い、課題も生じていました​。日本理学療法学会連合は、この課題に取り組み、2012年に理学療法基本評価検討委員会を設置し、日本独自のMMTを策定することとなりました。

本書の特徴

『日本理学療法学会連合版 徒手筋力検査法』の最大の特徴は、日本の臨床現場に即した評価手法が明確に整理されている点です。以下に要点を示します。

1.関節運動を基軸とした評価: 単一の筋ではなく、関節運動に焦点を当てた評価手法が採用されており、筋群の作用をより正確に捉えることが可能です。これにより、複数の筋が関与する運動の評価がより精緻に行えます​。

2.重力の影響を考慮したグレーディング: 重力の影響を受ける運動とそうでない運動の区別を明確にし、2つのグレーディングスケールを採用しています。この方法は、特に高齢者や体位変換が難しい患者に対しても、正確な筋力評価を可能にします​。

3.臨床現場での実用性の向上: 本書では、腹臥位での検査を採用せず、座位や側臥位での評価を可能にするなど、臨床現場での使いやすさが考慮されています。これにより、現場の負担を軽減し、効率的な筋力評価が可能となります。また、徒手筋力計を使用した評価方法も併記されており、より精密な筋力測定についてもサポートされています​。

4.段階的な評価方法の改善: 従来のMMTでは、グレード4と5の間の評価が難しく、変化を捉えることが困難でした。本書では、グレード3を基軸とし、筋力の細かな変化をより捉えやすい評価基準が設けられ、臨床現場での信頼性が向上しています​。

臨床への影響

従来の評価方法では見逃されがちだった筋力の微細な変化や、患者の体位に合わせた柔軟な検査手法により、より正確な治療計画を立てることが可能になります。さらに、本書で提案されている評価手法は、日本の臨床現場における高齢化や多様な患者層にも対応しています。座位での評価方法や重力の影響を考慮した評価方法は、高齢者や体力の低い患者にとっても安心して使用できる評価手法です。これにより、患者の機能回復に対して、より適切なアプローチを選択できるようになります。

理学療法の未来への寄与

『日本理学療法学会連合版 徒手筋力検査法』は、理学療法士にとって評価技術の向上を目指した重要なツールであり、日本の理学療法の未来を築く一助となるでしょう。監修者が述べるように、この書籍は臨床における信頼性の高い指標として、今後も多くの理学療法士に活用されることが期待されます​。

本書は、エビデンスに基づいた評価法を提供するだけでなく、今後の研究や臨床実践にも大きく貢献する可能性を秘めています。理学療法の標準化に向けた取り組みとして、日本の理学療法士が評価手法を確立し、研究成果を国際的に発信していくための礎石となるでしょう。

まとめ

『日本理学療法学会連合版 徒手筋力検査法』は、過去の評価法の歴史を踏まえつつ、日本独自の改良が施された一冊です。本書は、理学療法士の臨床業務を支えるだけでなく、日本の理学療法の発展にも大きく寄与することが期待されます。理学療法士にとって、患者の状態をより正確に評価し、効果的な治療計画を立てるための不可欠なツールとなるでしょう。

書籍の詳細や購入はこちらから:日本理学療法学会連合版 徒手筋力検査法

【目次】
1章  総論
  イントロダクション
2章  検査法
  頸部
    No.1 頸部屈曲(GS1)
    No.2 頸部伸展(GS1)
    No.3 頸部回旋(GS2)
  体幹
    No.4 体幹屈曲(GS1*)
    No.5 体幹伸展(GS1*)
    No.6 体幹回旋(GS2)
  肩甲帯
    No.7 肩甲帯挙上(引き上げ)(GS1)
    No.8 肩甲帯下制(引き下げ)(GS2)
    No.9 肩甲帯屈曲(GS1)
    No.10 肩甲帯伸展(GS2)
  肩関節
    No.11 肩関節屈曲(前方挙上)(GS1)
    No.12 肩関節肩甲骨面挙上(GS1*)
    No.13 肩関節伸展(GS1)
    No.14 肩関節外転(GS1)
    No.15 肩関節外旋(GS1)
    No.16 肩関節内旋(GS1)
    No.17 肩関節水平外転(GS1)
    No.18 肩関節水平内転(GS1)
  肘関節
    No.19 肘関節屈曲(GS1)
    No.20 肘関節伸展(GS1)
  前腕
    No.21 前腕回外(GS2)
    No.22 前腕回内(GS2)
  手関節
    No.23 手関節掌屈(GS1)
    No.24 手関節背屈(GS1)
  手指
    No.25 手指屈曲(GS2)
    No.26 手指伸展(GS2)
    No.27 手指外転(GS2)
    No.28 手指内転(GS2)
  母指・小指
    No.29 母指・小指対立(GS2)
  股関節
    No.30 股関節屈曲(GS1)
    No.31 股関節伸展(GS1*)
    No.32 股関節外転(GS1)
    No.33 股関節内転(GS1)
    No.34 股関節外旋(GS1)
    No.35 股関節内旋(GS1)
  膝関節
    No.36 膝関節屈曲(GS2)
    No.37 膝関節伸展(GS1)
  足関節・足部
    No.38 足関節・足部底屈(GS1*)
    No.39 足関節・足部背屈(GS1)
    No.40 足関節・足部回内(GS1*)
    No.41 足関節・足部回外(GS1*)
  足趾(指)
    No.42 足趾(指)屈曲(GS2)
    No.43 足趾(指)伸展(GS2)

【書評】MMTの新たなスタンダード|日本理学療法学会連合版 徒手筋力検査法

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