3月31日、社会保障審議会介護給付費分科会の介護報酬改定検証・研究委員会(第30回)が開催され、令和6年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に関する結果が公表されました。今回の検証では、高齢者施設と医療機関の連携体制構築、福祉用具貸与価格の適正化、リハビリ・栄養・口腔の一体的取組、地域における持続的サービス提供体制の4項目について報告されました。
医療機関との連携で救急搬送抑制効果
令和6年度介護報酬改定では、施設系サービスにおいて在宅医療を支援する地域の医療機関との実効性のある連携体制構築が義務化されました。介護老人保健施設では約7割、介護医療院では約7割、介護老人福祉施設では約6割の施設が、すでに協力医療機関を定めていることが明らかになりました。
注目すべきは、協力医療機関を定めている施設では、「平時からの連携→急変時の救急搬送を控える」効果が見られた点です。調査結果によると、協力医療機関を定めている施設のほうが、急変時における医療機関への相談や診療、入院の件数が多く、救急車による搬送が少ない傾向にあることが確認されました。
一方で、「協力医療機関連携加算」の取得率は施設によって差があり、介護老人福祉施設では27.2%、介護老人保健施設では54.1%、介護医療院では46.4%にとどまりました。加算取得の障壁として「定期的な会議の負担が重い」点が挙げられています。
調査責任者の今村知明委員(奈良県立医科大学教授)は「介護保険施設、医療機関が相当頑張っている状況が伺える」と評価しています。日本在宅療養支援病院連絡協議会の鈴木邦彦会長は「医療機関サイドから『上から目線にならない』ように配慮して、介護保険施設に協力の声かけをしていくことが重要」と指摘しています。
福祉用具貸与価格の適正化進むも経営は圧迫
福祉用具貸与価格については、これまでに3度の上限価格見直しが行われた結果、過度な価格設定の是正効果が見られています。令和5年10月から令和6年4月にかけての貸与額変化は約1億5千万円(0.4%)の減少と算出され、平成30年度調査の2.0%減少、令和3年度調査の0.9%減少と比較して効果は鈍化傾向にあります。
貸与事業所へのアンケートでは、62.0%が「収益が減少した」と回答しました。その主な理由として82.8%が「上限見直しにより貸与価格を下げた商品が多いため」を挙げています。一方で「水道光熱費や人件費などの諸経費の増加」も経営を圧迫しており、約半数の事業所が仕入先やレンタル卸との価格交渉を実施していることが明らかになりました。
リハビリ・栄養・口腔の一体的取組、効果と課題
リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の一体的取組については、介護老人保健施設で40.0%と最も高い実施率が確認されました。これにより「口腔衛生状態の維持・改善」や「専門職間の理解促進」などの効果が報告されています。
一体的取組に係る加算の算定状況は令和6年7月時点で、介護老人保健施設が16.0%、介護医療院が15.6%と比較的高いものの、介護老人福祉施設は6.2%にとどまっています。通所リハビリテーションでは5割以上の事業所が「管理栄養士・口腔の専門職の確保が困難」と回答しており、人材確保の難しさが加算算定の障壁となっていることがわかりました。
訪問介護は経営悪化、地域差も明確に
訪問介護については、2024年度介護報酬改定を挟んで経営の悪化が目立っています。特に中山間地・離島では58.7%の事業所が前年同月比で5%以上の減収となっており、地方ほど深刻な状況にあります。
興味深いのは、訪問介護のサービス単価自体は上昇しているにもかかわらず収益が減少している点です。単価上昇の背景には、各種加算の取得や身体介護中心へのシフトがあるとみられます。一方、利用者数は都市部と地方で異なる要因で減少しています。都市部では事業所間の競争激化により、地方では高齢者人口の減少により、それぞれ利用者獲得が難しくなっていることが指摘されています。
また60代以上の職員の割合が高いサービスが多く、若い世代のスタッフ確保が喫緊の課題となっています。川越雅弘委員(日本医療総合研究所地域づくり推進部部長)は「離職理由のトップは人間関係であり、市町村等の取り組みとギャップがあるのではないか」と指摘しています。
今後の展望
今回の調査結果は今後、介護給付費分科会に報告され、次期介護報酬改定に向けた検討材料として活用される見込みです。特に医療と介護の連携強化、人材確保・定着の難しさ、地域差を考慮したサービス提供体制の構築など、多くの課題が浮き彫りとなりました。
吉田慎老健局認知症施策・地域介護推進課長は「訪問介護の経営維持には単純な介護報酬引き上げだけでなく、地域の実情に合わせた事業所数のコントロールや大規模化・共同化によるコスト低減なども検討すべき」と指摘しています。今後の介護保険制度の持続可能性を高めるためには、地域や施設の特性に応じたきめ細かな対応が求められています。