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第1回:透析患者に対する腎臓リハビリテーション

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慢性透析患者数が35万人を超え、CKD患者の高齢化・多疾患化が進む中、理学療法士や医療従事者には「腎臓リハビリテーション(腎リハ)」の役割がこれまで以上に求められています。本コラム第1回では、腎リハの定義・必要性・制度的背景(透析時運動指導等加算)を整理し、運動療法や透析患者への支援の全体像を紹介します。

はじめに

日本におけるCKDの患者数は増加傾向にあり、患者数は約2,000万人に達し、成人の5人に1人が該当すると報告されており1)、慢性透析患者数は、2023年末時点で約35万人に達しています2)。以下の図は1968年から2023年前の慢性透析患者数と人高100万人あたりの有病率の推移を示したものです。透析療法は生命維持に不可欠ですが、患者の身体的・心理的負担は大きく、日常生活活動(ADL)や生活の質(QOL)の著しい低下が問題となっています。

図:慢性透析患者数(1968–2023)と人口100万人あたりの有病率の推移(日本透析医学会2024年報告より)

そこで、近年注目されているのが「透析患者に対する腎臓リハビリテーション(以下、腎リハ)」です。筋力低下、サルコペニア、心血管リスクの増大、精神的な抑うつなど多面的課題に対して、包括的な支援である腎リハが求められています。

このような背景から、腎リハの普及の重要性が認識され、2022年度の診療報酬改定において「透析時運動指導等加算」が新設されました。この新たな加算の導入は、透析患者に対する腎リハの重要性が診療報酬上で正式に認められたことを示しており、透析医療における標準的ケアの一環として、腎リハの必要性と役割は今後ますます拡大すると見込まれます。

本コラムでは、透析患者の腎リハの基礎的な内容から具体的な方法、患者教育、予防・最新情報などを全5回にわたって解説していきます。第1回となる今回は、「透析患者の腎臓リハビリテーション」について、基礎的な内容をご紹介します。

透析患者に対する腎臓リハビリテーションとは

日本腎臓リハビリテーション学会が定義する腎臓リハビリテーションは、「腎疾患に基づく身体的・精神的影響を軽減させ、症状を調整し、生命予後を改善し、心理社会的ならびに職業的な状況を改善することを目的として、運動療法、食事療法と水分管理、薬物療法、教育、精神・心理的サポートなどを行う、長期にわたる包括的なプログラム」とされています3)

重要な点は単に運動指導を実施することにとどまらず、患者の身体機能・生活の質(QOL)・生命予後・社会参加を総合的に改善することにあります。

腎リハの特徴

  1. 1. 透析患者の運動療法
    透析中の時間を活用し、ベッド上で行うエルゴメーターやセラバンド等を用いた下肢の筋力トレーニングなどが推奨されています。これにより透析スケジュールによる運動機会の制限を克服し、習慣化しやすい介入として注目されています。また、透析中に限らず、透析前や非透析日における運動も重要です。
  2. 2. 包括的評価と合併症管理
    透析患者の平均年齢は70歳前後と高齢化しており、心不全、糖尿病、認知症などの多疾患を抱えているため、運動耐容能や栄養状態、心理状態、ADL・IADLの包括的評価が必要です。
  3. 3. 多職種によるチーム医療
    腎リハの実践には、腎臓内科医、看護師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、臨床工学技士、薬剤師、ソーシャルワーカーなど、多職種による連携が不可欠です。
  4. 4. 患者教育と自己効力感(self-efficacy)の支援
    運動療法のみではなく、自己管理能力の向上を図り、食事・運動・内服・フットケアなど日常生活の中での健康行動を促進することが重要です。患者の自己効力感を高めることが、透析生活の継続と予後に大きく寄与します。
  5. 5. 社会参加・就労支援の視点
    透析患者に対する腎リハの目的は単なる筋力強化にとどまらず、患者が社会的役割を再獲得することにあります。透析を受けながら就労や趣味活動を再開する支援も、腎リハの重要な側面です。

まとめと学会参加のすすめ

透析患者に対する腎リハは、単なる「透析中の運動」のみではなく、「その人らしく生きる力を支える包括的支援」であり、統合的なケアシステムといえます。次回からは透析患者に対する腎リハの具体的な内容についてお話させていただきます。

また、透析患者の腎リハを学ぶうえで、日本糖尿病理学療法学会や日本腎臓リハビリテーション学会は非常に有益な情報源です。第11回JSPTDM学術大会では糖尿病のみならず、腎リハに関する演題や取り組み報告も多く発表されます。糖尿病はCKDの原因の1つであり、透析予防のためにも早期からの予防や対策が重要です。

最新の治療法、専門家との交流、他施設での取り組み事例など、学会に参加することでより深い知識を得ることができます。糖尿病・透析患者の腎臓リハに関わる医療従事者の方は、ぜひ積極的にご参加ください!

・日本糖尿病理学療法学会
 開催日:2025年12月20日(土)、12月21日(日)
 URL :https://pub.confit.atlas.jp/ja/event/jsptdm11

・日本フットケア足病医学会
 開催日:2026年2月27日(金)、2月28日(土)
 URL :https://www.6thjfcpm.jp/index.html

参考文献

  1. 1. 日本腎臓学会. (2024). CKD診療ガイド2024. 東京医学社.
  2. 2. 日本透析医学会. (2024). 第52回 日本透析医学会統計調査(2023年末現在). https://docs.jsdt.or.jp/overview/file/2023/pdf/01.pdf
  3. 3. 日本腎臓リハビリテーション学会. (2018). 腎臓リハビリテーションガイドライン. 南江堂.
第1回:透析患者に対する腎臓リハビリテーション

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