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診療所の高収益是正へ 26年度報酬改定で「メリハリ」案|財政審

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2026年度診療報酬改定に向け、財政制度等審議会(財政審)が4月23日に公表した資料は、無床診療所(外来診療所)の報酬体系に大胆なメスを入れる方針を示しました。診療所の高収益構造や地域偏在が国民負担を押し上げているという問題意識の下、「メリハリのある改定」を通じて外来機能を適正化し、かかりつけ医中心の医療提供体制へ再設計する狙いです。本稿では、財務省資料に基づき主要論点を整理します。

1.今回の論点

財政制度等審議会は4月23日に示した資料で、無床診療所(外来診療所)を軸に報酬配分を見直すべきだと明記しました。診療所の利益率が病院より高く、地域での偏在も大きいことがその根拠です。改定のキーワードは「メリハリ」です。​​

2.外来診療所に対する三つのメス

論点 財務省資料における記載 想定される改定方向
① 高利益率是正 無床診療所の23年度利益率は8.6%で病院2.1%・中小企業平均3.6%を大きく上回る*1 外来初・再診料や加算の整理で単価を調整
② 地域偏在への減算 医師多数区域で機能提供要請に応じない開業医は診療報酬を減算する案を提示*2 都道府県単位で点数を差し引く仕組みを検討
③ かかりつけ医機能の再評価 「26年度はメリハリ改定とすべき」と明記し、報告制度との連動を示唆*3 初・再診料と関連加算を抜本的に再編

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3.個別点数の見直しが焦点に

3-1 機能強化加算(初診時 80 点)

  • 施設基準を満たせば患者実態に関係なく一律算定できる点が問題視されています。

  • 財政審は 「廃止を含めた抜本見直し」 を提案しています。​

3-2 外来管理加算(再診時 52 点)

  • 「計画的医学管理」を評価する本加算が再診料に包括化される可能性があります。​

3-3 生活習慣病管理料などの管理料

  • 2024 年度に新設された生活習慣病管理料(Ⅱ) は、ガイドラインに沿った頻度でフォローアップを行うよう算定回数を制限しました。

  • 財政審は引き続き要件の厳格化を求めています。​​

4.医療機関経営情報の「見える化」

医療法人の経営情報データベース(MCDB)に職種別給与や経常利益を義務報告させる方向が示されました。これにより報酬の地域差是正やタスクシフト推進の基盤を整える狙いです。

5.財政インパクト

財務省は「診療報酬を1%下げれば医療費を約5,000億円抑制できる」と試算しており、一方、資料は外来診療所の利益率是正を改定の主要テーマに据えており、編集部では 外来診療所の配点(点数)調整が財政効果を発現させる主戦場になるのではないかと注視しています。

6.今後のスケジュール

2025 年夏:骨太方針 2025 に論点を反映します(主体:政府・財務省)。

2025 年末:医療経済実態調査(2024 年度決算)の結果が公表されます(主体:厚生労働省)

2026 年 2 月:中医協で改定内容が決定されます(主体:支払側・診療側)

2026 年 4 月:診療報酬・介護報酬の同時改定が施行されます(主体:全国の医療機関)

7.編集部メモ

2023 年 11 月の提言(当サイト記事 No. 7294)は「診療所報酬▲5.5%」と単価一律引き下げを打ち出しましたが、24 年度改定では部分的対応にとどまりました。今回の資料では 「かかりつけ医機能報告制度」という新たなデータ基盤 を背景に、地域・機能・アウトカムごとに配点を振り替える“選択と集中”案 がより具体化しています。

8. まとめ

2026 年度改定は、外来診療所の収益構造と機能にメスを入れ、地域完結型の医療提供体制へ報酬を再配分するターニングポイントになります。診療所にとっては 高利益を維持するために実効性ある機能提供を証明する必要がある一方、患者側には質と継続性に基づく診療体制を選ぶインセンティブが強まる ことになりそうです。

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/20250423zaiseia.html

診療所の高収益是正へ 26年度報酬改定で「メリハリ」案|財政審

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