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組織作りのポイント
ーー 先生が『組織作り』という点で、ポイントにしていることはなんですか?
諸橋先生 できるだけ僕が目立たない事ですかね。それと自分も出来るだけ臨床をやるという事です。7割くらいはやっています。
ーー 今は上の立場になるほど、書類業務が増えて臨床をやる機会が減りますよね。そういうケースがとても多いと感じています。
諸橋先生 そうなると、次が育たないですよね。私の職場では、主任以上で事務作業を分担しています。そうすることで、私も患者さんを見られるし、他の人も患者さんをみることが出来ますよね。
若いスタッフたちが非番の時に、患者さんのフォローも出来るので、それらを通じて指導したりもできますし。
あとは、仕事を丸投げするのではなくて、Aさんには3割、Bさんには5割とか、任せる割合を提示するということと、自分もサポートをし、最終責任は自分が請け負うことが大事だと思います。
逆に、上の立場の人にとっては、もし任せた仕事を後輩がこなせるようになったら、自分の役割が無くなっちゃうと、危機感を感じてしまうかもしれません。
後輩に仕事を任せ、それが達成できるようになったら、上司の自分はもっと上の次のステージにいけばいいんです。
コンディショニングと運動学習の比率
ーー 先生はコンディショニングというテーマで講習をされたりしていますね。
諸橋先生 もともとは、辻井先生というマイオセラピーで有名な先生のセミナーに参加する期会を頂いて、PTの仕事を始めてからは研修会などで、毎月筋肉の勉強をしていました。
それから研究・臨床・教育も経験して、その中で、生体への感覚入力の多くは筋肉を介しているから、筋肉など末梢の組織が機能不全に陥っていると、脳に対して感覚も上手く入力できないのではないかと思うようになってきました。
よく研修やセミナーで、健常者同士である手技の実技実習をやりますよね。健常者にその手技をやると反応や結果が出るのに、現場帰って患者さんに使ってみると反応や結果が出ないことがよくありますよね。
それって患者さんと健常者のコンディションが違うから当然だと思います。そこを意外とみんな分かっていない。
自分の技術が未熟だとか、その技術が難しいと勝手に考えてしまう。
つまり、しっかりとコンディション把握し、必要に応じてコンディショニングした上で、習ってきた手技や運動学習を行うことが大事だと思います。
プロ野球のキャンプで例えるならば、最初は体作りのコンディショニングがメインで、徐々にピッチングやバッティング、実戦練習へと変わっていきます。
誤解がないように言うと、コンディショニングも静的な徒手的なものだけでなくて、能動的に動きながら身体が整えていく方法もあります。
良い感覚入力をいれてあげると緩む。その人が他動的じゃなくて自動的に、もっと言うと課題指向的にということですね。
運動療法のコツは、コンディショニングと運動学習の比率を適宜変えていくことだと思います。
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諸橋 勇先生経歴
昭和59年理学療法士免許
国立病院、労災病院、東北大学病院を経て、現在いわてリハセンター勤務
東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻 修士課程修了
【その他】
日本神経理学療法学会 運営幹事
青森県立保健大学臨地教授
山形県保健医療大学臨床教授
専門理学療法士 (神経)
認定理学療法士(脳卒中)
【著書 分担執筆】
モーターコントロール 第1版、第2版 翻訳
臨床評価指標入門
理学療法ハンドブック
(編集、執筆)