第180回 株式会社gene代表取締役 理学療法士 張本浩平先生 no.4

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理学療法とリハビリーションは違う

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ーーー医療保険分野と介護保険分野の理学療法・リハビリテーションは違う」と伺ったことがあります。400メートルとマラソンで例えられていましたが、具体的に聞かせていただけますか?

 

張本先生:私にとって、セミナー事業も出版も介護保険事業も、すべて臨床なのです。

 

最終顧客は「医療・介護を必要している方」なので、変わりません。その点を踏まえると、私はリハビリテーションの手段として、セミナー事業や出版や介護保険事業を選択しているだけなのです。

 

そして、同様に方法論としての理学療法と考え方・哲学としてのリハビリテーションは分離すべきだと考えています。

 

今のリハビリテーションは、身体の悪い人が運動や体操・訓練をすることと捉えられていますが、理学療法士もリハビリテーションのことを「リハビリしましょう」という言葉を使っています。これは凄くおかしなことです。

 

リハビリテーションは「全人間的復権である」という考えかたを理解しないと、さらに混乱を招くことになると思います。

 

『リハビリしましょう』と言った時に、その日本語訳は『全人間的復権しましょう』ということになります。意味が通りません。

 

私は、理学療法は、予防理学療法・治療理学療法・リハビリテーション理学療法に分けられると考えていますが、理学療法とリハビリテーション、または、予防・治療・リハビリテーションの境界線が曖昧になっていると考えています。

 

団塊の世代が前期高齢者になったときの脳卒中モデルと今のモデルとでは、違いが生じています。例えば以前の脳卒中モデルは、健康な人が脳卒中になり、病院に入り、回復期でリハを行い、病前生活に復帰し自立することがゴールでした。

 

これからは益々後期高齢者が増え、2回目の脳卒中で寝たきり状態の方、転んで圧迫骨折や大腿骨頸部骨折などで寝たきり状態になった方々へのゴールをどう考えるのか?

 

重度の方がより重度の状態になって入院することや地域に帰ってくることが多くなるのです。

 

「よくするとだけが我々の仕事」「治療理学療法だけが理学療法士だ」とだけ考えてしまうと地域での対応は困難を極めます。

 

改善の可能性が限りなくゼロに近い方には、何もやることがなくなってしまいます。

 

これは上田先生の言葉ですが「リハビリテーションとは、改善の可能性が少ない人にこそ必要な哲学」だと思うのです。

 

自覚を持つこと

 

ーーー先生にとってプロフェッショナルとは?

 

張本先生自覚でしょう。

 

自分がプロだと自覚できるか、プロフェッショナルだと思えるかどうかですね。色々と失敗をすることがあると思います、全ての人間は成長の途中ですから。

 

プロという自覚を持った時、自分の責任だと思った時、人間は成長できるのだと思います。成長する自覚こそがプロフェッショナルだと思います。

 

張本先生オススメ書籍

 

張本先生:本との出会いは人との出会いとよく似ている。

 

どんなものを読むかと言うよりも、いつその本と出会うのかタイミングがとても大事だと思います。

 

僕の趣味は読書しかないので、kindleには3500冊くらいあります。

 

kindle便利ですよね。 マンガも実務書も小説もなんでも読みます

 

紹介したい本は山ほどありますが、一つは、V.E. フランクルの『それでも人生にイエスと言う』。リハビリテーションとは何かということに近いと思います。

 

それでも人生にイエスと言う
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V.E. フランクル
春秋社
販売価格 ¥1,836
(2016年10月7日3時56分時点の価格)
売上げランキング: 3411

 

この本のすごいところは、フランクルという人は、アウシュビッツで家族を全員殺され、そして自分自身も命からがら生き抜いた人です。


あとは、ナイチンゲールの『看護覚え書』と河合 隼雄先生の『臨床とことば』、朝日新聞の『ルポ・精神病棟』も面白いです。

看護覚え書―看護であること看護でないこと
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フロレンス ナイチンゲール
現代社
販売価格 ¥1,836
(2016年10月7日3時57分時点の価格)
売上げランキング: 7126

『看護覚え書』の一節で

『責任者たちは往々にして、「自分がいなくなると皆が困る」ことに、つまり自分以外には仕事の予定や手順や帳簿や会計がわかるひとも扱えるひともいないことに誇りを覚えたりするらしい。私にいわせれば、仕事の手順や備品や戸棚や帳簿や会計なども、誰もが理解し扱いこなせるようにーーすなわち、自分が病気で休んだときなどにも、すべてを他人に譲り渡して、それですべてが平常どおりに行なわれ、自分がいなくて困るようなことが絶対にないようにーー方式を整え整理しておくことにこそ、誇りを覚えるべきである。』

150年前にこのような管理論をしっかりと本に書いているナイチンゲールという人の凄さを思います。

ただ、僕がナイチンゲールのことが好きなのはその人生の前半ではなく、後半のおそらくは不幸であったであろう、彼女の振る舞いについてとても人間らしさを感じるからなのです。

ルポ・精神病棟 (朝日文庫 お 2-1)
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大熊 一夫
朝日新聞出版
売上げランキング: 49638

『ルポ・精神病棟』は最近読んだのですが、昭和45年に朝日新聞の連載でルポ・精神病棟という連載があって、記者がアル中だと言って精神病棟に入って、内幕を書いたというものです。

45年前の精神病院の赤裸々な環境が書かれている。時代がそういう時代だったと思うけど、読んでいるうちに、僕たちのしていることが45年後、同じように思われないかと思い、少し背筋が寒くなった。

45年後にそういう時代だったと言われないようなものを提供したいと覚悟を決めることができた一冊です。

臨床とことば (朝日文庫)
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河合 隼雄
朝日新聞出版
販売価格 ¥648
(2016年10月7日3時58分時点の価格)
売上げランキング: 154525

最後にお勧めの本は、河合隼雄先生の本ですが、僕たちの仕事は往々にして、人間の身体にアプロ―チしているように見えて、同時に心理・精神にも働きかけている。

もしくは、身体を通して心理・精神だけにアプローチしていることだってあると考えてます。

そこの中で、人間同士の関係性に着目して、それに一生をささげた河合先生の著作は、臨床に関わる人間全てに読んでほしいと思っております。

*目次

【第1回】いざ「gene」開設へ

【第2回】社長として社員へ伝えていること

【第3回】セミナーの値段設定は適切か?

【第4回】理学療法とリハビリーションは違う

geneセミナー案内

生活期リハビリテーションにおける 運動療法のリスクヘッジとリスクマネジメント~名古屋会場~
日 時:2016 年 5 月 22 日(日) 10:00~16:00(受付 9:30~)
会 場:名古屋国際会議場 2 号館 2 階 会議室 222+223(愛知県名古屋市熱田区熱田西町 1-1)

講 師:大森豊先生(有限会社 訪問看護リハビリテーションネットワーク 代表取締役・理学療法士)

受講料:12,500 円(税込)

 

リハスタッフのための薬剤の基礎知識~東京会場~

日 時:2016 年 5 月 29 日(日) 10:00~16:00(受付 9:30~)
会 場:明治薬科大学 剛堂会館 1 階 第 2 会議室(東京都千代田区紀尾井町 3-27)

講 師:田宮 真一 先生(名古屋第二赤十字病院・薬剤師)

受講料:12,500 円(税込)

 

脳卒中・心疾患の予防・再発予防のための糖尿病リハビリテーション~東京会場~

日 時:2016 年 6 月 11 日(土) 10:00~16:00(受付 9:30~)
会 場:株式会社 日本印刷会館 2 階会議室(東京都中央区新富 1 丁目 16 番 8 号)

講 師:松本 大輔 先生(畿央大学 ヘルスプロモーションセンター・畿央大学 健康科学部 理学療法学科 助教・理学療法士)

受講料:12,500 円(税込)

 

バイオメカニクスからみた運動連鎖とその治療への適用~東京会場~

日 時:2016 年 6 月 12 日(日) 10:00~16:00(受付 9:30 ~) 会 場:株式会社 ヤクルト本社ビル(ヤクルトホール) 2 階 ホール(東京都港区東新橋 1-1-19)

講 師:石井 慎一郎 先生(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 リハビリテーション学科 教授・理学療法士)

受講料:12,500 円(税込)

 

 

 

【張本先生のセミナー】

◆生活期・低 ADL・寝たきりの方のゴール設定 ~リハビリテーション専門職が考えるべきこと~ いずれも受講料:12,500 円(税込)

鹿児島会場 :2016年5月22日(日)  10:00~16:00(受付 9:30~)

静岡会場 :2016年6月12日(日)  10:00~16:00(受付 9:30~)

山口会場 :2016年6月26日(日)  10:00~16:00(受付 9:30~)

埼玉会場 :2016年7月3日(日)  10:00~16:00(受付 9:30~)

長崎会場 :2016年7月10日(日)  10:00~16:00(受付 9:30~)

長野会場 : 2016年8月21日(日)  10:00~16:00(受付 9:30~)

新潟会場 : 2016年8月28日(日)  10:00~16:00(受付 9:30~)


張本浩平先生 経歴

名古屋大学医学部保健学科卒

株式会社ジェネラス(愛知県名古屋市)にて、訪問リハビリ業務に従事

平成19年より株式会社geneを立ち上げ、現在は従業員数100名にて、セミナー事業・介護保険事業・出版事業などを行っている。

従業員100名のうち、理学療法士25名、作業療法士4名、言語聴覚士4名、看護師、12名在籍している。

現在は、セミナー事業を全国に年間300回、20,000人の専門職が受講している。

介護保険事業では、訪問看護ステーションを2箇所、通所介護を2箇所の運営をしており、

出版部門では雑誌『訪問リハビリテーション』やMOOKなどを発行また、名古屋大学にて地域理学療法学などの講義を担当している。

専門は、訪問リハビリテーションに関わる制度論および介護保険領域・生活期におけるゴール設定、リハスタッフのマネジメントである。

 

【役職】

   

NPO愛知県理学療法学会財務部長

名古屋大学医学部保健学科地域理学療法学講師

名古屋大学大学院医学系研究科THPコース講師

 

【法人概要】

株式会社gene

 

本社 名古屋市北区

セミナー出版事業部門

 

【訪問看護事業部門】

 

訪問看護ステーション 仁 春日井

訪問看護ステーション 仁 岡崎

 

【通所介護事業部門】

リハビリテーション デイサービス 仁 春日井

リハビリテーション デイサービス 仁 勝川

 

【法人管理部門】

グループ企業

合同会社iLIFE 岐阜県瑞浪市・・・訪問看護ステーション 仁 瑞浪

合同会社LOVING LOOK 愛知県岡崎市・・・こども訪問看護ステーション 仁 岡崎

第180回 株式会社gene代表取締役 理学療法士 張本浩平先生 no.4

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