イギリス・リーズ大学院の博士課程とは
2015年8月からイギリス・リーズ大学院の障害と開発コースで障害学と開発学を専攻し、修士研究を行っております。
日本の病院における理学療法士勤務とガーナにおける青年海外協力隊理学療法士としての活動を経て、同コースへの進学に至りました。
同コースは社会学・社会政策学部に属し、障害の概念化と国際的障害政策に関して批判的に考察・研究を行います。
障害問題を障害者個人の問題(機能障害/impairment)ではなく人権問題・社会問題と捉える、"障害の社会モデル"という概念を基礎に、障害者の機会の均等に向けて多くのプロフェッショナルと共に研究をしております。
同校はイギリス障害学発祥の地であり、学生・教授陣のモチベーションは非常に高く、質の高い研究がなされていると感じます。
しかしながら、この"障害の社会モデル"の考え方は先進国を中心に発展し、政策に反映されているのが現状であり、開発途上国における障害の概念は、「障害=機能障害/impairment」という "障害の個人モデル" によるものが主とされています。
障害を呪いと結びつけて考えている地域も見られます。
従って、開発途上国において障害を人権問題・社会問題として捉える動きはまだまだ少ないと言ってよいと思います。
"障害の社会モデル"という概念
その一方、障害統計によると、世界人口の約20%になんらかの障害があり、その80%が開発途上国に暮らしています。
障害と貧困の関連性が認識されてきている中で、"障害の社会モデル"という概念は開発途上国においても重要であり、また開発課題に障害問題を積極的に取り入れるべきだという主張が近年なされています。
ただし、西洋の歴史・文化背景・価値観から生まれた "障害の社会モデル"を基盤とするインクルーシブ社会の実現という理想は、開発途上国の各地域、異なる歴史・文化背景・価値観を持つ人々や社会に、どの程度またどのように適応していくのかさらに議論を深める必要があるでしょう。
世界中の多種多様な人々、価値観を理解すること
障害と開発の問題を追いかけ始まった海外生活も4年近くになり、イギリスでもガーナでも幾度と病院にお世話になりました。
言葉、価値観、設備や医療技術の質は違えど、彼らとは全く異なる日本人の私を理解しようとしてくれる、病院スタッフの丁寧で親切な対応は、大きな安心感を与えてくれました。
異国で病気になり病院へ行くという事は、想像以上に不安であったり辛いものです。
今後、日本国内においても人種・宗教・性・障害等の多様性が予測される中、リハビリテーション職種にも、世界中の多種多様な人々、彼らの価値観を文化背景と共に理解する事がより必要となってくるのではないでしょうか。
全ての患者様・利用者様により良い医療福祉サービスを平等に提供するためにも、少し国際的(=多様)な視点を持って日々の仕事に従事して頂けたらと思います。
*目次
【Vol.1】なぜ、日本ではなくイギリスへ? -イギリス留学のための準備-
【Vol.2】リーズ大学院での生活 -イギリス留学のための準備-
米田裕香先生 経歴
2009年3月金沢大学医学部保健学科理学療法学専攻卒業
2009年4月石川県芳珠記念病院リハビリテーション室入職
2012年3月退職
2012年6月青年海外協力隊理学療法士隊員としてガーナ派遣
2014年11月任期満了し日本帰国
2015年1月三重県松阪市民病院リハビリテーション室入職
2015年7月退職
2015年9月 University of Leeds, Faculty of Arts, School of Sociology and Social policy, Master of Disability and Global Development 入学。現在、"障害と開発"について就学中。