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【インタビュー】大和ハウス工業に勤める理学療法士 岩隈彩さん

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大和ハウスに就職した経緯

※このインタビューは2014年12月18日に配信されたインタビューです。

 

ーー 大和ハウスに就職するまでの簡単な経緯を教えていただけますか?

 

岩隈先生 はい。最初は、大学病院で3年働きました。その後、都内の訪問看護ステーションで2年働いて、今の大和ハウスに転職しました。自分が大学病院に勤務していたときDPC制度というものがあったのです。

 

大学病院では「医療」が求められますから、患者さんは治療が終わったらすぐに退院させられてしまいます。内科的にOKであれば、生活として不十分な状況でも退院を勧められます。

 

当時、平均在院日数が2週間きっていて、患者さんは「病院から追い出される」というイメージを持ってしまうことも少なくなかったようです。

 

もちろん、回復期へ転院する方もいらっしゃいましたが、脳血管疾患や整形疾患に限定されてしまうため、その他の疾患の方は自宅か施設への退院が多かった気がします。

 

そんな中、日本では介護保険制度が徐々に整ってきたので、私は在宅の現状を知るために訪問看護ステーションに移り、介護保険分野を学びました。そこで見た現実というのは、利用者さん自身が「自分の望んでいる生活」ではなく「生かされている生活」をしている方が多いという事でした。

 

元々、高齢者が増え社会保障費が膨らんでいく日本社会で「将来は、民間企業で住環境整備に携わりたい」という思いは、社会人になってすぐ感じ始めたことです。

 

そこで、その現実を目の当たりにして、より一層その思いが強くなりました。一刻も早く、民間企業の参入や住環境整備が大切であると感じ転職を決意しました。

 

ーー 募集は「理学療法士来てください」という内容でしたか?

 

岩隈先生 私は一般企業の求人を探していましたが、理学療法士の募集はどこにもなかったんです。転職活動をして初めて気づいたのが、企業で「理学療法士」の受け皿がないということです。

 

私は、理学療法士の専門性は住宅関係で必ず発揮できると確信していたのですが、社会では当たり前ではないんですね。むしろ、転職活動中に住宅メーカーで働いている方へ転職の相談を話したら、「女性が働く現場じゃない」と言われてしまいました。

 

ーー 「女性が働く現場ではない」とはどういう意味ですか?

 

岩隈先生 住宅メーカーの営業というのは、女性が入ってもすぐ辞めてしまうことが多いみたいです。

 

かなり厳しい業界で、10人中10人が私の転職を勧めませんでした。 それでも私は転職のために履歴書を送ったのですが、なかなか良い連絡は来ませんでした。

 

その当時は、私も理学療法士としてどのように企業で貢献できるか曖昧だったのかもしれません。

 

そんな中、友人の紹介で参加した講演会で、大和ハウスが医療福祉の街づくりや先進的な取り組みをしているということを知り、大変魅力を感じました。

 

志望動機書を添えて履歴書を送ったところ、たまたま現在所属するヒューマン・ケア事業部で理学療法士を募集していたこともあり、ご縁あって就職が決まりました。運がいいですね。

 

結局企業では、理学療法士という募集がなければ就職できないです。もちろん、『未経験歓迎と書かれた営業職』とか理学療法士という資格を友好的に使わないような仕事であれば大丈夫だと思います。

 

ただ、私としては理学療法士に強くこだわりを持っていたので、本当に良かったと思います。

 

医療と一般企業のギャップ

ーー 実際会社に入ってみて、認知度をあげると言った時に、周りの人とどうコミュニケーションを図りましたか?

 

岩隈先生 とても苦労しますね。はじめの1年くらいは大変でした。まず理学療法士として募集されたものですから、私としても理学療法士として頑張ろうと思っていました。

 

しかしながら、社内では「理学療法士って知っていますか?」と聞いても、半分くらいは「マッサージしてくれる人」というイメージです。

 

そこで「マッサージじゃない」というのを知ってもらうために、職場の人に空いた時間を使って施術を行ったりもしました。また、仕事内容も初めに与えられたのは飛び込み営業でした。

 

商品としてのエビデンスの有無や費用対効果、感染予防対策などという病院の現状を知っていながら、デモンストレーション獲得を目的に、自分と同じ資格を持っている人に頭を下げ、断られることの繰り返しでした。

 

営業というのはその商品を信じて売るわけですが、私は臨床現場を知っている分、その商品の問題点も見えていました。しかし、当時、専門職が社内で求められていたものは、問題点の抽出ではなく販売するために必要な現場知識の表出だったんですね。

 

私としては現場に提供するのは実用的なもの、最終的に患者さんに還元できるものを売りたいと思っておりましたので、自分で納得できない時期は苦しかったです。

 

ですから、初めは、実績を残すために、とにかく数字にこだわって仕事をしました。もちろん、実用性というところには拘り続けて普及啓発活動も行いました。

 

すると、現場からも「よかったよ」という話を何件か頂けて、少しずつ実用性が大切という声が事業部内でも上がってきたのです。やっと1年半くらいたった時期に、理学療法士としての役割を少しずつ増やして頂いて、現在は理学療法士としての役割半分、営業としての役割半分くらいになりました。

 

あと、現在の職場では、発言や言葉遣いの面は常に勉強させて頂いています。どうしても医療関係の方ですと同業者ということもあって、気軽に話してしまうことがありました。

 

少し丁寧な言葉で会話をすると「何かしこまっているの?」みたいな感じで言われることがあって、そのギャップに悩んだりしました。医療の世界だとあまり言われることではないので、一般社会とのズレをすごく感じました。

 

営業とリハビリテーションのは似ている

ーー そのルールの中で戦わなければいけないところで一般企業の苦しさってありますよね。でも営業ってリハビリテーションと同じだと思うんです。相手に納得して、満足して買っていただくか、どうプレゼンするかというところで共通点てあるなと思うのですが、その辺どう思いますか?

 

岩隈先生 共通していますね。理学療法士の良いところは、客観的に利点と欠点を評価できるところ、相手のニーズを探るのが得意、というところだと思います。そのような点は営業に生かせると思いますので、今後、理学療法士も社会貢献できる場があると感じています。

 

今は、色々な施設を回ることで、それぞれの治療手技や考え方、病院の環境なども見えるようになってきました。客観的に理学療法士の質の格差も見えるようになり、自分が臨床にいた頃の反省点にもいっぱい気付かされました。

 

だから、現在の立場だから気付けた点などは皆様に伝えていきたいとも思っています。研究も大事だったな、とか。教育や理学療法士の社会的地位という面では、政治にもっと興味を持たなければいけなかったな、とか。

 

広い視野で物事を考えられるようになった気がします。

 

 

岩隈彩さん経歴

経歴:理学療法士

所属:大和ハウス工業株式会社 ヒューマン・ケア事業推進室ロボット事業推進室

 

【インタビュー】大和ハウス工業に勤める理学療法士 岩隈彩さん

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