臨床に活かす脳画像読影の基礎と応用 -その2- 【千葉県立保健医療大学|高杉潤先生】

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前回の記事はこちら>>臨床に活かす脳画像読影の基礎と応用-その1-

 

Ⅰ.脳画像読影の基本事項

前回(その1)は、セラピストが臨床で脳画像を活用する意義と実際の症例の画像について少し説明しました。今回は、脳画像読影に必要な基本事項、チェックポイントについて説明します。

 

脳画像は臨床では、CT(Computed Tomography:コンピューター断層撮影)とMRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)が多く用いられています。両者ともに水平断(体軸断面:アキシャル断面)のスライス画像を一番多く目にすると思います。

 

さらにMRIでは、矢状断(サジタル断面)や前額断(冠状断面:コロナル断面)といった他の断面のスライス画像も撮像され、活用されています(最近のCTはMRIのように矢状断や冠状断が撮像できるものも出ています)。

 

CTやMRIの画像から得られる情報源は、共通して「白と黒とグレーのモノクロの画像」ということです。この限られたモノクロの情報源から異常所見の拾い上げが求められます。では何が異常で何が正常なのか、CTから順に説明していきましょう。

 

Ⅱ.CTの基本事項

CTはX線が使われており、体内に照射した際の各組織のX線の吸収度合いの違いをコンピュータで画像変換し、任意に色分けされています。臨床では、X線の吸収値(CT値)の高いカルシウムや鉄分は白色に、吸収値の低い空気や脂肪、水は黒色に、その中間の蛋白質の組織はグレーの段階で色分けの設定がされています。

 

そのため白色の部分を「高吸収域(HDA: high density area)」と呼び、骨や石灰化、血液(ヘム蛋白)が反映されます。一方、黒色の部分は「低吸収域(LDA: low density area)」と呼び、空気や水、髄液(脳室・脳溝)、梗塞巣や陳旧性の出血巣が反映されます。また、グレーの部分は「等吸収域(IDA: iso-density area)」と呼び、タンパク質(脳実質)等が反映されます。

 

 

しかし、同じグレー(等吸収域)の脳実質内でも、よく見ると微妙に濃淡があることが確認できます。白質(皮質下や内包、脳室周囲などの神経線維の領域)の方が灰白質(皮質や基底核、視床などの神経細胞体の領域)より、やや低吸収域になっているのです。

 

この理由は、神経線維を取り巻いている髄鞘の成分が、低吸収域に映る脂肪からできているためで、脳のCTではその微妙な差を反映できるように、任意に設定されているためです。

 

医療従事者同士、専門家同士でCTを前にして、画像所見をディスカッションする際は、「白い部分」とか「黒色の領域」と言わず、「高吸収域」、「低吸収域」と専門用語を使うようにしましょう。

 

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臨床に活かす脳画像読影の基礎と応用 -その2- 【千葉県立保健医療大学|高杉潤先生】

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