呼吸理学療法について、海外でこんな研究結果が発表された。
待機的上腹部手術患者では、術直後の呼吸訓練に関する理学療法の講習を術前に受けることで、院内肺炎を含む術後の呼吸器合併症がほぼ半減することが、オーストラリア・メルボルン大学のIanthe Boden氏らの検討(LIPPSMAck-POP試験)で示された。
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胃や十二指腸、肝臓や胆のう等の問題から外科的な開腹手術となった場合、腹筋などの手術侵襲が原因で深呼吸や咳嗽の機能低下を引き起こす為、呼吸器合併症を発症しやすい。
呼吸器合併症は、麻酔や気管への挿管により気道清浄化能が障害される事で気道分泌物が貯留したり、筋弛緩剤の影響で横隔膜の動きが制限される事による無気肺が多く、呼吸困難感や肺炎を合併し、予後の不良や回復の遅延に繋がってしまう。
今回の研究は、6週間以内に上腹部開腹手術を受ける患者432例を対象に実施。情報冊子の配布と術前30分間の理学療法教育と呼吸訓練講習を受けた介入群(218例)、情報冊子のみを配布した対照群(214例)を比較。全体の20%にあたる85例が術後肺合併症と診断されたが、対照群は27%(58例)発症したのに対し、介入群は12%(27例)と優位に減少させた。
国内でもこのような呼吸理学療法の効果に関する様々なエビデンスが構築されている一方で、全体における実施割合は少なく、全呼吸不全患者に対し十分な介入が出来ているとは言い難い状況だとされている。平成22年度から療法士も喀痰吸引の実施が可能となり、先日行われた教育カリキュラム改正案にも、喀痰吸引の教育が盛り込まれている。今回の研究結果で示されたように、療法士の介入が合併症を予防し回復の促進に繋がる為、今後、更なる呼吸理学療法の普及が必要だ。