こんにちは、POST編集部の森田( @ksk116street )です。
今回は、どこの病院にもあるであろう「点滴スタンド」のデザインについて考えていきたいと思います。いきなりですが、あなたは医療機器メーカーに配属され、上司から「令和になったことだし、点滴スタンドの新しいものを開発したい」と言われたとしましょう。
その会社が従来作ってきたものは、以下のデザインの点滴スタンドです。(あくまで仮です)
画像出典:アズワン イルリガードル台(ダンパー付き)4本脚・2本架(ショートフック) 4BD /0-5446-12
改良されているものが発売されているということは、ひとまず置いといて、もしあなたが新しい点滴スタンドを開発しようと思ったらどんなものを開発するでしょうか?また、開発するために何をすればいいでしょうか?
ユーザーヒアリングの目的は?
まずは、ユーザーヒアリングがしたいところですね。答えは現場に溢れています。悩むよりもとにかく足を使って現場である病院にいってヒアリングしましょう。
先に一点、ワンポイントアドバイスです。ユーザーヒアリングで聞いてはいけないこと。それは「こんな点滴棒あったら使いますか?」という質問です。こんな質問を投げかけられたら、「っっ、はい!」と、つい、言わざるを得ませんよね。回答にバイアスが入ってしまって、ヒアリングが意味のないものになってしまいます。
ユーザーに対するヒアリングの目的は、「顧客発見」「課題発見」にあります。まず、点滴スタンドの顧客とは誰でしょうか?少し考えてみてくださいね。
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記事冒頭に紹介した従来の点滴棒は、おそらく看護師さんなどの医療者を顧客としたデザインになっています。医療機器の多くは医療者のためのデザインになっていますが、点滴棒は意識レベルの高い患者さんは自分で動かして病棟を移動したり、子供も使うものですよね。後に紹介しますが、顧客をより明確にすることで点滴棒のデザインも改善できるかもしれません。
次に課題発見に関して。「何か不満はありませんか?」と直接聞いてもダメではないのですが、なかなか表面上の課題しか出てこないものです。より本質的な課題を発見するには、点滴スタンドが具体的にはどんな場面で使われているか、5W1Hでファクト情報を掘り下げて聞きながら、課題を探していきましょう。
事例① 怖がらせない優しい点滴スタンドへ
写真は、株式会社メディディア 医療デザイン研究所が開発した「点滴スタンド feel div STAND」です。ステンレスの無機質さが患者を不安にさせるという課題に対して向き合った結果、木製のハンドルを使ったり、親しみやすいデザインを用いています。
点滴スタンドをどんな人に使ってもらうのか掘り下げると、例えば「片麻痺の方用の適切なデザインは?」「視覚障害のある方でも使いやすい点滴スタンドは?」と考えると新しいものが作れるかもしれませんね。
小児科での仕事をしている頃、抗がん剤を受ける子供たちが「あのガラガラという点滴棒の音を聞くだけで気分が悪くなる」と言ったことを何とか解決したくて、嫌いな点滴スタンドから、そばにずっといててほしくなる点滴スタンドを目指しました。
事例② 医療事故をデザインで防ぐ
http://www.okamura.co.jp/healthcare/hospital/sickroom/divo/
写真は、株式会社オカムラが開発した「点滴スタンド ディーボ」です。注目してほしいのは、写真中段のキャスターです。まず夜間でも光るようになっており患者さんがベッドから立ち上がるときも引っかかって転倒事故が起こらないようなデザインになっています。効率よく収納できるということも、ただでさえ物が多い病院にとっては大事なポイントになります。
写真下段は、少しわかりにくいかもしれませんが、指で押し上げることでスタンドの長さを調節できるようになっています。従来のものと比べると、高さの上げ下げの仕方がわかりにくいですよね?
…そこが実はポイントです。点滴スタンドを患者さんがいじってしまうと重篤な事故になる危険性もあります。ここではあえて、「行為を誘発しにくい」というデザインを追求した結果、このようなただの繋ぎ目のようなデザインにしてあります。
伝わるデザインことはじめ
今週末、僭越ながら私がデザインに関するワークショップを開催いたします。今回はデザインの入り口にあたる「情報を整理する」ということにもフォーカスし、実際に手と頭を動かしながら学ぶワークショップ形式で行いたいと思います。
見た目と機能性、UIとUXについて、この機会に一緒に考えてみませんか?
【日時】6/22(土)19:30〜21:50
【場所】大阪府大阪市天王寺区堀越町10-12加藤ビル 4F OKG天王寺ルームFine
【持ち物】「Powerpoint」が「Keynote」が入っているパソコン(できれば)、なければノートと紙を持ってきてください。
【参加費】4,000円/人
※ プレミアム会員(756円/月)の方は無料でご参加いただけます。
定員:21名
申し込みは以下のリンクから