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何を学べばいい?成人→小児へ転向したい言語聴覚士へ

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筆者は成人→小児へ臨床対象を移行した1人。最初に小児をみたときは“わからない事がわからない状態“で、何から再学習したら良いか途方に暮れた。そこで、5年前にタイムスリップし絶望期の自分に教える気持ちで、小児分野への転換にむけ必要なスキルを紹介したい。

言語聴覚士(以下ST)のうち小児分野で働く人は全体の約1割といわれ、成人分野に比べ圧倒的に少ない。

一方、2004年の発達障害者支援法制定後、自閉症スペクトラム症などの発達障害への認知度が向上し「発達障害児の言語発達を支える小児ST」のニーズが急増している。STとしては世間の需要に対応したい所だが、成人分野で活躍したSTが小児に転向するには、別の知識・技術の再学習が必要で一筋縄ではいかない現実もある。

今回は自身に子どもがいないSTを想定し、転向に必要なスキルを紹介したい。スキルは大きく2つ。1つは経験と共に身につくもの、1つは先に学ぶと良いものだ。

経験と共に身につくもの

⑴子どもへの接し方

これが1番不安な点かと思う。でも安心して欲しい、経験と技術で何とかなる!「不安だー!」という気持ちは最初は拭えないもので、時に子どもに伝播し逃げられてしまうこともある。しかし、余程の子ども嫌いでない限りその不安が消えれば子どもは自然と寄ってくる場合が多い。また、患者様が大人の場合「かっこいい!」「よくできたね〜」とテンション高く褒めちぎる能力は不要だが、子どもはそうはいかない。私は(自称)クールだったが、今や技術として自分の態度を操作できるようになったと自負する(昔からの知人に臨床をみられるのは恥ずかしい)

⑵連携先の情報

子どもの臨床では親、療育施設、学校などと連携が必須になる。成人でケアマネやデイと情報共有するのと同じだ。つまり地域資源の学習になるので、勤めた地域に応じてどのように連携を取る必要があるかを学べば良い。

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先に学ぶと役に立つこと

⑴9ヶ月革命

9ヶ月は共同注意・自他の認識・象徴機能の発達などが起こり、これらは後のことばの学習の基礎になると言われる。他にも学習すべき項目は多々あるが、何よりも優先し事前に頭に叩き込むことをお勧めする。ことばが出ない子ども達は(関わりが多い自閉症児も)、9ヶ月革命のタイミングでつまづきが多いからだ。

⑵応用行動分析(ABA)

米国を中心に多くの研究により自閉症スペクトラムに対して科学的に効果が示されている心理学の手法の一つ。例えば、自閉症児の逃避行動に対しABAは効果が出やすいように思う。大人の逃避行動に臨む態度は、行動の増減に影響するのだ。

小児初心者時代は、子どもの未来のための最良な大人の対応とは?と自問自答の日々だった。ABAを学習後、自分の臨床軸ができ、「えーなんでこんな行動するの?!」に対して応答スピードが上がったように思う。ABAの資格まで至る必要はないが、本ではイメージしにくい学問なので、個人的には実践型講座をお勧めする。

⑶インリアルアプローチ

インリアルアプローチとは相互に反応しあうことで学習とコミュニケーションを促進する、と意図された語用論を背景としたコミュニケーション方法(態度)だ。STの臨床家は自然にインリアルで推奨される態度を取っているなぁ〜と思うが、子どもの障害の程度にかかわらず汎用性の高い手法なので、ぜひ技術の裏付けとして再学習をお勧めする。

⑷遊びの評価

個人差はあるが、2歳半頃までは机上訓練が難しい場合が多い。ゆえに遊びの中でコミュニケーションを評価する必要ある。実は、これが難しい。そこでお勧めはJASPERの遊び評価の研修。私は最近通ったのだが、「小児初心者時代に知りたかった‥」と切なくなった。遊びの階層構造と評価を知ることができ、子どもの発達段階にあわせた遊びをチョイスする力がつくと思う。

⑸発達検査

対象の子どもは発達がゆっくりなケースが多く、ST自身が定型発達を学習するチャンスが少ない。それゆえ、発達検査が訓練プログラム決定の重要な指標となり、検査項目や結果の解釈を頭に入れたい所。ポイントは、地域ごとに使用される検査が異なるため事前にリサーチすること。手当たり次第総復習する必要はない。医療機関では新版K式・ウェクスラー系・田中ビネーなどが主要所だ。

どこに支援の重きをおきたいか明確に

今回は言語発達支援におけるスキルを中心にお届けしたが、重度心身障害児を支援する時は必要なスキルが異なる(嚥下系の子が多い)。その場合は、PT・OT寄りの身体や感覚の発達や、医療ケアの知識アップデートが必要だ。どの分野で働きたいかを考え、学習に優先順位をつけると良い。

最後に、成人STとして得た大人と接する力は必ず保護者対応に役立つし、失語症で言葉のプロセスを解剖した力は必ず子どもの評価にも生きる。経験は全て引き継がれるので、その点安心して小児に飛び込む人が増えることを願う。

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