今年2月に行われた医師国家試験に合格し、研修医としてのキャリアをスタートさせた”さんだ”さんは、もともと理学療法士として働いていた。これまでの経緯についてお話を伺った。
「医師の指示を受けて」ではなく
さんだ:医師になろうと決意したのは、理学療法士になって2年目の12月のことでした。ある合併症の多い患者さんを担当して「〇〇のことは整形外科に聞いて」「△△のことは内科に聞いて」と、患者さん共々宙ぶらりんになったことがありました。
医師は「疾患の治療」を専門に行うスペシャリストですから、仕方ないといえばそうかもしれませんが、疾患も障害も全てひっくるめて、身体全体として捉えたいと、医師への道を考えるようになりました。
また、当時、急性期病院で働いていたのですが、そこで重症度の高い障害さんを担当することが多く、「もう少し早い段階で介入できれば」と思ったのも、医師になることを後押ししました。
例えば、COPDの方の外来のカルテとか見ても「運動指導をした」と一言で済まされていることが多く、もっと予防的に運動の専門家が入っていければいいなと思いました。栄養指導についても同じです。
勿論、そういうことをしている病院も探せばあると思いますが、そういったチームに自分が入るというよりかは、自分が医師としてそういうチームを作りたいと思ったんです。
受験勉強とお金について
そういった経緯ですので、なにも「PTが嫌いだった」とか、「PTになる前から医師になりたかった」というわけではないです。
もう少しPTとしての経験を積んでから受験をするというのも考えましたが、センター試験の形式が変更されるというのを知り、自分が高校生の頃に勉強していない範囲が含まれるようになるのは厳しいと思って、翌年に受験しようと決意しました。
もともと高校生の頃にセンター試験で8割は取れていたのですが、いざ取り組んでみると、けっこう忘れてしまっていて、思い出す作業に苦労しました。
病院は翌年の8月まで働いて、それからは勉強一本という形です。一応、3回受験しても受からなかったら医学部を諦めようと決めていましたが、一発で受かることができました。
センター試験は778点で(900点中)で、その成績と二次試験問題の相性や再受験の寛容さを考えて志望校を決めて、前期試験で合格しました。
金銭面はどうしたかというと、国立大学なので私立大学ほどかからなかったのと、あとは奨学金と妻(在学中に結婚)の給料とバイト代で生活していました。
奨学金に関しては、悪いイメージを持っている方も多いと思いますが、私は未来への投資だと思っています。詳しくはブログに書いてあるのでご参照いただければと思います。
在学中に結婚。そしてパパになる。
授業に関しては、理学療法士を経験していた分、有利だった部分はあります。口頭試問で筋肉の起始・停止を聞かれたりするのですが、同期はとても大変そうにしていました。また、患者さんがイメージできるので、座学のモチベーションが維持されやすいというのもあると思います。
あとはブログのタイトルにもある通り、医学部在学中にPT時代から付き合っていた彼女と結婚して、その後娘も生まれました。
学生結婚に踏み切った理由は、妻が同い年で同棲もしていたので、卒業まで待たせる理由がなかったからです。あと妻の方からプレッシャーも少しありました(笑)
互いの両親からも、入籍するにあたって特に反対はされず、それは、同棲も含めて自分たちのお金で生活ができているというのがあったと思います。
出産のタイミングは、医師国家試験の受験とは被らないようにしようとは話していましたが、授かりものなので、それが在学中だったという話です。
悩んでいる人に、このキャリアをオススメはしない
今年の3月に医師国家試験にも無事合格し、今は研修医をしています。将来はリハビリテーション科、神経内科で働こうと考えています。
医師免許届いたから並べてみた! pic.twitter.com/flOtZRSLK4
— さんだゆうぞう (@sanda_igaku) June 7, 2020
理学療法士から医師というキャリアに関しては、頑張ろうと思っている方は全力で応援しますが、どうしようか迷っているくらいの方に特におすすめすることはありません。
やはり、受験勉強は大変ですし、辛いです。受かった先にも、6年間という長い時間が取られるわけです。
さらに、私もこれからですが、初期研修が2年、後期研修が3-4年という研修医生活が続くわけです。ちなみに、研修医のうつ病や抑うつ症状の頻度は3割近いと言われています。確かにやりがいはありますが、安易におすすめするほど楽な道ではないと感じています。
理学療法士の方で、将来のキャリアに悩んでいる人も多いと聞きます。ただ、今振り返ってみても、理学療法士はいい仕事だったと思います。
医師と比べて患者さんと近いところにいて、手の届かないところまで助けることができますし、自分たちが思っている以上に患者さんの困りごとをカバーすることができる職業です。
だからこそ、もっと理学療法士として自信を持って楽しんで臨床してほしいと思います。また一方で、医療に関わりたいのであれば、資格にとらわれず外の世界に出てみるのもいいと思います。