島根大学地域包括ケア教育研究センターの安部孝文助教、身体教育医学研究所うんなん(島根県雲南市立)の北湯口主任研究員らの研究チームは、島根県雲南市の幼児を対象とする運動能力調査のデータを分析したところ、コロナ前と比べコロナ禍の運動能力が低いことを明らかにしました。
新型コロナウイルスの蔓延に伴い、普段とは異なる生活様式に変わり、子どもの運動習慣の減少やテレビ等のメディア視聴時間の増大などにより、小児期の発育発達への悪影響が懸念されています。スポーツ庁をはじめ国内外では、小学生以上のコロナ禍の体力低下の現状について報告されていますが、幼児の現状についてはこれまで十分わかっていませんでした。今回の研究では、2019年10-11月(コロナ前)と2020年10-11月(コロナ禍)に実施された運動能力調査の608人のデータ分析を行いました。その結果、全ての学年(年少、年中、年長児)において、ソフトボール投げの記録が下がっていることがわかりました。ソフトボール投げは、巧緻性という体の動きを調整する力を示しており、コロナ禍でこの巧緻性を高める運動経験が不足している可能性が考えられました。また、年長児では、25m走の記録もコロナ禍で下がっていることがわかりました。この結果は、雲南市はもとより全国的にも運動能力低下が懸念されることから、発育発達の基礎である幼児期の健全な育成の観点からも、適切な運動や遊びの機会確保を講じる必要性を示しています。
この成果は、日本衛生学会の学術英文誌(Environmental Health and Preventive Medicine)に掲載されています(2022年4月30日受理、6月18日付けで、オンライン上で無料公開済み)。調査研究の一部は、文部科学省等の補助を受けて行われました。
【論文】Fundamental movement skills in preschoolers before and during the COVID-2019 pandemic in Japan: a serial cross-sectional study
【著者】Takafumi Abe, Jun Kitayuguchi, Noritoshi Fukushima, Masamitsu Kamada, Shinpei Okada, Kenji Ueta, Chiaki Tanaka, Yoshiteru Muto
【掲載誌】Environmental Health and Preventive Medicine
【論文URL】https://doi.org/10.1265/ehpm.22-00049
詳細▶︎https://www.cohre.shimane-u.ac.jp/docs/2022052000010/
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