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【外側上顆炎】"実践的な鑑別"と"筋膜アプローチ"

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今回は、一般的にテニス肘と呼ばれる外側上顆炎についてフォーカスしてみたいと思います。
臨床でも度々お目に掛かる外側上顆炎の鑑別方法からアプローチまでわかりやすく解説していきます‼︎

✅外側上顆炎の鑑別

外側上顆炎は、

 

繰り返される手関節背屈や前腕回内外動作によるストレス刺激や オーバーユースによって生じる短橈側手根伸筋腱(ECRB)を中心とする、上腕骨外側上顆起始部での微小断裂と血管増生変化を主体とした腱付着部症である。

 

このように定義されています。

今回は、その外側上顆炎と予測するための徒手検査をご紹介します。

☑️Thomsen test (トムゼンテスト)

方法:

①肘関節伸展位、前腕回内位、手関節中間位、手指屈曲位で保持する。

②患者の肘を固定しつつ、母趾外転筋で外側上顆を触診する。

③手関節掌屈方向に力を加え、患者は抵抗に打ち勝つように背屈する。

 

陽性判定:外側上顆に疼痛が生じる。

☑️Cozen's test(コズンテスト)

方法:

①肘関節軽度屈曲位、前腕回内位、手関節中間位、手指屈曲位で保持する。

②患者の肘を固定しつつ、母趾外転筋で外側上顆を触診する。

③手関節掌屈方向に力を加え、患者は抵抗に打ち勝つように背屈する

 

陽性判定:外側上顆に疼痛が生じる。

この2つの検査の違いは、肘関節が伸展位か屈曲位かというところですね。

✅検査の信頼

では、臨床でこの2つのテストどちらを使う方がより検査の信頼性が高いかというところですが、

 

結論から言うと、

 

外側上顆炎に対する整形外科テストの評価精度を検証した研究はない。

 

引用文献

[1]適切な判断を導くための整形外科徒手検査法 エビデンスに基づく評価制度と検査のポイント , 編 : 村松将司 三木貴弘 , メジカルビュー社 , 2020,p182

とされています。

 

そのため、

 

外側上顆炎に対しては上記のテストに加え、

 

・middle finger extension test

・Mill's test

 

などを併用し、複数の検査の1つとして用いることが推奨されると結論づけられています。

✅外側上顆炎と筋膜の関係

まず、外側上顆炎の痛みの原因を考えていきます。

 

基本的な考え方としては、外側上顆に付着する

 

・短橈側手根伸筋

・総指伸筋

・尺側手根伸筋

の張力によって、外側上顆に強い牽引力が加わった結果と考えられます。

 

特に、短橈側手根伸筋と総指伸筋は共同腱として外側上顆に付着します。

 

この共同腱と、その深層の外側側副靭帯機構の間には、腕橈滑液包が存在し、短橈側手根伸筋と外側側副靭帯機構の間に生じる摩擦を軽減している。短橈側手根伸筋の緊張が高まると、腕橈滑液包への摩擦が増強し、滑液包炎が生じる可能性がある。

"運動器疾患の「なぜ?」がわかる臨床解剖学 工藤慎太郎 著"

つまり、短橈側手根伸筋や総指伸筋の伸長性を高めることで、腕橈滑液包の摩擦ストレスを軽減し、疼痛を改善できると考えられます。

 

ただ、

 

外側上顆炎の他にも

 

・滑膜ひだ障害

・橈骨神経管症候群

・腕橈関節の変形

・輪状靭帯の病変に伴う弾発肘

・離断性骨軟骨炎(OCD)

など器質的な変性による肘外側部痛もあるため、機能を改善させても良くならないケースは、それらを疑う必要もあります。

 

さて、

 

短橈側手根伸筋や総指伸筋の伸長性を高めることが必要だということはお分かり頂けたと思います。

 

ここからはその両筋の伸長性が筋膜とどう関係しているかを解剖学的に解説していきます。

 

まず、多くの解剖学書では短橈側手根伸筋は外側上顆という骨に付着すると書かれていますが、

 

実際には110/139検体において短橈側手根伸筋は長橈側手根伸筋・総指伸筋・回外筋・外側側副靭帯・輪状靭帯・関節包に付着していた。(Biggsら,1985)

と報告されています。

 

つまり、上腕骨外側上顆の周囲の組織は一体となった結合組織として外側上顆に付着すると解釈できます。

 

そこで、外側上顆に直接的に牽引力を加える筋膜の構造で最も重要なのは外側筋間中隔です。

 

外側筋間中隔とは、上腕全体を包む上腕筋膜から生じた線維性中隔のことで上腕骨に付着します。要は、上腕の前方と後方を分けるために上腕筋膜が厚くなっている部分

と思って頂いて良いと思います。

 

この外側筋間中隔が三角筋・上腕筋・腕橈骨筋・長橈側手根伸筋・短橈側手根伸筋からの挿入を持ち、外側上顆へ牽引力を伝えています。

 

そのため、短橈側手根伸筋や総指伸筋だけにとらわれず、外側筋間中隔に挿入する筋肉に関与する筋膜の機能障害を改善させるのが臨床上での重要なポイントになります。

 

その中でも、私の臨床経験上、外側上顆炎に最も関与する筋膜が硬くなりやすいポイントをご紹介します。

 

それは、

なぜこのポイントかというと、

 

この筋肉たちは外側筋間中隔に挿入部を持つため、滑走不良を起こすと直接的に張力のエラーを外側筋間中隔に伝え、結果として外側上顆へのストレスを引き起こします。

つまり、外側上顆炎の痛みを解決させるためには、

 

「腕橈骨筋と長橈側手根伸筋の間の滑走を改善させる」

 

ことが臨床上での重要なポイントになります。

✅筋膜の評価方法

では、具体的にどのように評価を行えばいいのか?

 

それは、腕橈骨筋と長橈側手根伸筋の間ゴリゴリしたポイントを探すことです。

 

▼実際にはこんな感じ

皮膚の上を滑らすように丁寧に触っていくと

 

高密度化を起こしているケースでは、皮膚の動きまで悪く固まっているようなポイントがあります。

 

そこを少し圧迫してフリクションした時に痛みを訴えるような場合はそこの筋膜が硬くなっていると判断します。

✅筋膜への具体的なアプローチ方法

では、これに対し実際にどういうアプローチをしていけばいいのか?

それは、腕橈骨筋と長橈側手根伸筋の間ゴリゴリを解消することです。

 

▼実際にはこんな感じ

正しくアプローチできていると、

「ごりごりした感じ」と「痛み」があります。

 

その固さと痛みが取れるまで3分程度続けてみてください。

 

このアプローチは、深筋膜に対し機械的刺激と炎症反応による熱刺激を加えてヒアルロン酸の状態を変えるので、かなりの痛みを伴います。

 

なので、アプローチはマイルドに行ってくださいね。

 

また、アプローチの目的と理由をしっかりと患者さんに説明し、同意を得てから介入してください。

 

さて、このアプローチを行ったら前後でThomsen testや動作時痛などの症状の変化をみてみてください。

 

これで改善がみられるようであれば、数回に分けて介入を続けて症状の改善を目指します。(1回の介入で取り切るのは難しいです。)

 

いかがでしたか?

今回は上腕骨外側上顆炎の鑑別方法と筋膜アプローチをご紹介しました。ただ、今回ご紹介した筋膜アプローチはあくまで「一例」です。本当は、このケースにおいてもまだ何パターンもアプローチの方法があります。

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