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【書評】臨床研究の羅針盤|症例・事例報告から始める PT・OTのための臨床研究実践法

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PT・OTの臨床現場で直面する課題は多岐にわたります。それらの課題に対して科学的根拠に基づくアプローチで応えることは、臨床技術の研磨と患者のQOL向上のために不可欠です。しかし、具体的な研究手法や科学的根拠の統合については、多くのセラピストにとって挑戦的なものとなっています。「本書を作成した動機は至ってシンプルであり、セラピストとして未熟かつ研究初学者であった頃、このような指南書があればよかったという思いからである」 という編者の言葉が示すように、本書は臨床現場での研究に新たな道を拓く羅針盤となる1冊です。

臨床の疑問から研究への一歩

この書籍は、日常的な臨床の問いかけを科学的研究に結びつける架け橋となります。EBM(Evidence-Based Medicine: 根拠に基づく医療)とEBP(Evidence-Based Practice: 根拠に基づく実践)の違いを理解することは、このプロセスにおいて不可欠です。EBMは、医療決定を下す際に、最良の利用可能な証拠に基づいて行うアプローチを指します。一方で、EBPはより広範な概念であり、医療だけでなく理学療法や作業療法など様々な分野の実践において、最良の証拠に基づく意思決定を推進します。特にEBMに対する誤った認識が、本来の目的を妨げていることに気づきます。PT・OTがEBMとEBPの原則を日々の臨床に統合し、根拠に基づいたケアを提供するために役立つ内容となります。

実例に学ぶ臨床研究の道

実際の臨床ケースを基にした研究事例を通して、臨床現場で直面する多様な状況に対応し、それらを科学的な問いとしてどのように扱うか学ぶことができます。これらの事例は、セラピストが自らの疑問を研究問題に転換し、最終的には患者ケアの質の向上に繋がる過程を示しており、実践的な解決策も提示しています。ここで取り上げられている事例の一つ一つは、セラピストが1つの困難に直面し、乗り越えようとする様を表しています。

臨床と研究の循環

この書籍は、臨床と研究は循環的な関係にあるという視点を身につけることができる内容となっています。症例・事例報告から研究に進み、新たな臨床的知見を得て、それを再び臨床にフィードバックするプロセスは、セラピストがより良い臨床判断を下し、患者に最適なケアを提供するための科学的根拠を絶えず更新していくうえで不可欠です。

まとめ

「症例・事例報告から始めるPT・OTのための臨床研究実践法」は、臨床現場で直面する問題に対して、科学的なアプローチで応答するための実践的なガイドブックです。セラピストの経験に基づき、臨床研究への道を切り拓くこの書籍は、すべてのセラピストにとって、日々の臨床において直面する課題を乗り越えるための貴重なリソースとなるでしょう。

▶︎https://www.medicalview.co.jp/catalog/ISBN978-4-7583-2089-4.html

【目次】
第1章  EBM/EBP・臨床研究においてケースに着目する重要性を理解する
総論
 臨床研究に関する基礎知識   尾川達也・石垣智也
第2章  論文検索の方法を理解する
Ⅰ総論
 論文検索に関する基礎知識   石垣智也
Ⅱ実例
 ❶検索語の選択   石垣智也
 ❷文献入手の方法   石垣智也
第3章  ケースに生かすための論文の読み方を理解する
Ⅰ総論
 論文の読み方に関する基礎知識   丁子雄希
Ⅱ実例
 英語論文へのハードルを下げるツールの紹介   丁子雄希
第4章  ケースカンファレンスの目的と意義,方法を理解する
Ⅰ総論
 ケースカンファレンスに関する基礎知識   壹岐伸弥・石垣智也
Ⅱ実例
 ❶効果的なケースカンファレンス①(PT)   生野公貴
 ❷効果的なケースカンファレンス②(PT)   奥埜博之
 ❸効果的なケースカンファレンス③(OT)   丸山  祥
第5章  ケースレポートの目的と意義,方法を理解する
Ⅰ総論
 ❶ケースレポート・ケースシリーズスタディの定義   石垣智也・丁子雄希
 ❷ケースレポートのテーマ設定   石垣智也・丁子雄希
 ❸ケースレポートのまとめ方   石垣智也・丁子雄希
Ⅱ実例
 ❶要介護高齢者の実例(PT)   石垣智也
 ❷神経疾患(脊髄障害)の実例(PT)   深田  亮
 ❸運動器疾患(慢性腰痛)の実例(PT)   重藤隼人
 ❹神経疾患(脳卒中歩行)の実例(PT)   蓮井成仁・水田直道
 ❺身体障害領域(脳卒中)の実例(OT)   丁子雄希
 ❻精神障害領域(感情調節困難患者)の実例(OT)   織田靖史
 ❼発達障害領域(小児)の実例(OT)   吉田尚樹
 ❽老年期障害領域(訪問リハ)の実例(OT)   佐野裕和
第6章  ケースレポートと実証研究の相互作用を理解する
Ⅰ総論
 実証研究に関する基礎知識とケースレポートとの循環関係   石垣智也
Ⅱ実例①
 ❶要介護高齢者の実例(PT)   石垣智也
 ❷神経疾患(脊髄障害)の実例(PT)   深田  亮
 ❸運動器疾患(慢性腰痛)の実例(PT)   重藤隼人
 ❹神経疾患(脳卒中歩行)の実例(PT)   水田直道
 ❺身体障害領域(脳卒中)の実例(OT)   丁子雄希
 ❻精神障害領域(感情調節困難患者)の実例(OT)   織田靖史
 ❼発達障害領域(小児)の実例(OT)   吉田尚樹
 ❽老年期障害領域(訪問リハ)の実例(OT)   佐野裕和
Ⅲ実例②
 ❶要介護高齢者の実例(PT)   石垣智也
 ❷神経疾患(脊髄障害)の実例(PT)   深田  亮
 ❸身体障害領域(脳卒中)の実例(OT)   丁子雄希

【書評】臨床研究の羅針盤|症例・事例報告から始める PT・OTのための臨床研究実践法

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