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糖尿病合併症による脳血管障害の理学療法評価と注意点

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血糖値が正常な人と比べ、糖尿病患者の脳梗塞発症リスクは2倍~4倍高くなるといわれています。さらに患者の身体機能の低下も著しいため、どのような運動療法を提供するべきか、正確に判断する必要があります。両疾患を有する患者への理学療法アプローチについて、評価のポイントや身体機能の特徴、血糖コントロールの重要性、創傷対策などの留意点をご紹介します。

理学療法評価

 (1) 糖尿病患者の評価

○運動機能評価:関節可動域測定、筋力・バランス評価、各種整形外科的テスト

○神経学的評価:感覚検査(表在感覚、深部感覚)、アキレス腱反射、起立性低血圧

○その他:運動耐容能、ADL、活動量、運動実践・継続性評価

(2) 脳血管疾患患者の評価

○運動機能評価:片麻痺(ブルンストロームステージ、バレー兆候など)、筋緊張異常、運動失調

○神経学的評価:感覚検査、病的反射、視野、眼球運動異常、嚥下障害

○その他:高次脳機能障害、ADL、活動量、運動実践・継続性評価

*糖尿病があると身体機能低下するが、ADLは自立していることが多い。脳血管疾患を合併することで、加速的に身体機能低下が出現することが予測される。

(3) 糖尿病と脳血管疾患を合併する患者の評価

○確立された評価法はないため、上記(1)と(2)の評価を綿密に行う必要があります。

○感覚障害は両疾患で起こりうるため、神経伝導検査なども行い判断します。

○片側性か両側性かの鑑別が重要です。

身体機能の特徴

糖尿病と脳血管疾患を合併する患者は、糖尿病のみの患者と比べて身体機能がより低下している傾向にあります。

理由1) 糖尿病による筋力低下、関節可動域制限

理由2) 糖尿病性神経障害(DPN)による感覚障害やバランス能力低下

理由3) サルコペニア・フレイルの高リスク

理由4) 自律神経障害による厳格な血圧管理の困難さ

理由5) 低血糖による認知機能障害

理由6) 麻痺による運動耐容能・活動量の低下と血糖コントロール不良

血糖変動と身体機能1)

○血糖値の高低差(LAGE)が大きい、または高低差が頻発すると、HbA1cが高くなりやすくなります。

○血糖変動を抑えることで、NIHSSスコア(脳卒中の重症度評価)やSIS(脳卒中の統合的評価)の改善が見られました。

○血糖コントロールが良好な状態で理学療法を行うことが望ましいです。

義肢装具とフットケア

装具使用時の創傷に注意が必要です。

理由1) 糖尿病による血流障害と神経障害で創傷治癒が遅延します。

理由2) 免疫機能低下で感染リスクが高くなります。

理由3) 末梢感覚障害と高次脳機能障害で自己管理が困難です。

*理学療法士によるフットチェック・フットケアが不可欠です。

まとめ

脳血管疾患を合併する糖尿病患者では、両疾患による身体機能の複合的な低下が予測されます。綿密な評価と、血糖コントロール、フットケアを含めた包括的なアプローチが重要となります。

参考文献

1)Lou Q, Yuan X, Hao S, Miller JD, Yan J, Zuo P, et al. Effects of glucose fluctuation targeted intervention on the prognosis of patients with type 2 diabetes following the first episode of cerebral infarction. J Diabetes Res. (2020)

続き▶︎▷2型糖尿病、脳血管疾患に対する高強度インターバルトレーニング(HIIT)の効果とプロトコル

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