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高齢者のせぼねの骨折と介護リスク ビッグデータで関連性明らかに 〜 もともと要介護の人、介護度上昇リスクがおよそ 10 倍 〜

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群馬大学大学院医学系研究科整形外科学(筑田博隆教授)、東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学(康永秀生教授)、自治医科大学データサイエンスセンター(山名隼人講師)の研究グループは、レセプト情報(*1)のビッグデータを活用することで、高齢者に多い脊椎圧迫骨折(*2)の受傷後の経過の詳細を初めて明らかにしました。

研究グループは、65 歳以上の圧迫骨折患者 18,392 人のレセプト情報(*1)から、受傷後の生存期間、鎮痛剤の処方期間、要介護度(*3)の変化を調べ、さらにそれぞれのリスク要因について解析しました。その結果、圧迫骨折の前から介護を受けていた人は、受けていなかった人に比べて、圧迫骨折の後に介護度が増すリスクが約 10 倍高いことがわかりました。

本研究成果は、日本時間 2024 年 7 月 2 日公開の国際医学雑誌『Journal of Bone and JointSurgery 誌』にオンライン掲載されました。

1.本件のポイント

・脊椎圧迫骨折は、骨粗しょう症をベースに起きる骨折で、高齢化にともない増加しています。

・脊椎圧迫骨折は、通常 3 か月程度で治癒するとされていますが、なかには、背中の痛みが残ったり、日常生活の障害がおきたりする場合があります。

・リアルワールドデータ(*4)を活用し、これまで実態が不明であった脊椎圧迫骨折後の経過を明らかにしました。

・脊椎圧迫骨折後、1/4 の患者さんは 4 か月を過ぎても鎮痛剤が必要でした。

・骨折前から介護が必要だった患者さんでは、骨折後に介護度がさらに悪化するリスクが非常に高いことがわかりました(もともと自立していた人のリスク比 10 倍)。

・特に、すでに介護を必要としている人は、脊椎圧迫骨折の予防が極めて重要です。

2.本件の概要

成果

脊椎圧迫骨折は、加齢に伴う骨粗しょう症が主な原因で、転倒やしりもちなどのちょっとしたけがで生じる骨折です。高齢者の約 5 人に 1 人が経験する骨折ですが、多くの場合は数週間から数ヶ月で治癒します。しかしながら、一部の患者さんでは持続する腰痛やせぼねの変形などに悩まされることもあり、足の痛みやしびれ、麻痺などの症状が出てくる場合には手術が必要になります。これまでの研究では、どのような患者さんで痛みが持続し、日常生活に影響があるのかについては明らかになっていませんでした。

群馬大学整形外科学教室と東京大学臨床疫学・経済学教室および自治医科大学データサイエンスセンターによる研究グループは、高齢者の圧迫骨折後の長期経過を、大規模レセプトデータを用いて調査しました。その結果、圧迫骨折後に 4 ヶ月以上の長期にわたって鎮痛剤が必要な患者さんが23%いることが明らかになりました。さらに、骨折前から介護を受けていた患者さんは、骨折後により多くの介護が必要となるリスクが、リスク比で 10 倍であることが判明しました。

新規性

これまで不明であった高齢者の脊椎圧迫骨折後の鎮痛剤の処方期間や要介護度の変化について調査し、鎮痛剤を長期間処方された人や要介護度が悪化する人のリスク要因について初めて明らかにすることができました。

このような脊椎圧迫骨折後の長期的影響を詳細に検証した研究は過去に例がなく、得られた知見は今後の適切な医療・介護の資源配分に役立つと考えられます。

3.今後の展望

我々は今回の研究において、圧迫骨折後の長期的な痛みの持続や介護度の変化などの実態を明らかにしました。本研究の結果からは、すでに介護を必要としている患者さんについては、骨粗しょう症の治療を行うなど適切に圧迫骨折を予防することが重要であることがわかりました。

しかしながら、実際に患者さんが日常生活においてどのようなことで痛みに困っているのか、どのような介護が必要となったのかの詳細までは明らかにできていません。具体的な日常生活動作のレベル(歩行できるのか、杖や車椅子が必要なのか)や必要な介護(食事の介助、入浴の介助、トイレの介助などが必要か)などについて、詳しく追跡調査することが必要です。また、骨粗しょう症の重症度(どれだけ骨が折れやすいか)や、骨折の重症度(変形をきたしているか、麻痺などの神経症状が出ているか)による違いは検討できていません。さらに、骨折の後、骨粗しょう症治療を行うことで痛みや介護度が改善するかどうかについての検討もできていません。これらの重症度を考慮することで、将来的には患者さんにとってより最適な治療を提供できるようにすることが求められます。

4.研究の成果発表等

掲載雑誌

Journal of Bone & Joint Surgery(impact factor: 5.3)

(整形外科の代表的国際医学雑誌であり、整形外科のトップジャーナルである。)

タイトル

Mortality, Analgesic Use, and Care Requirement After Vertebral Compression Fractures:A Retrospective Cohort Study of 18,392 Older Adult Patients

著者

本田哲 (HONDA, Akira)

研究責任者

筑田博隆 (CHIKUDA, Hirotaka)

所属

群馬大学大学院医学系研究科整形外科学

 

用語解説

*1 レセプト情報

病院で診察を受けた際に発行される「領収書」のようなものです。加入している医療保険制度によって区別されており、受診した日付、病名、受診した診療科、処方された薬、行った処置、かかった費用などの情報などが記載されています。この情報は、国や市町村などが本邦において保険制度を運用する上で重要な情報ですが、これらの情報を集めると、どんな病気が多いのか、どんな治療がされているのか、どんな薬が多く処方されているのかなどがわかり、医療サービスを改善するための重要な手がかりになります。

*2 脊椎圧迫骨折(vertebral compression fracture)

主に骨粗しょう症により骨がもろくなってしまうことが原因で、腰椎(こしの骨)や胸椎(むねの骨)が、転倒やしりもちなどの軽い外力で潰れて変形をきたす骨折のことを言います。多くの場合は動く時の背中や腰の痛みを生じますが、適切な治療により 3 ヶ月ほどで改善し、治癒します。しかしながら、一部では強い腰痛が持続したり、せぼねの変形が進むことで日常生活に支障が出る場合があります。また、近くに神経の通り道があるため、足の痛み・しびれなどの神経痛や麻痺を生じる場合もあり、神経の保護や変形の改善を目的として手術を行う場合もあります。

*3 要介護度

日本の介護保険制度において、介護サービスの利用資格と介護が必要な程度(要介護度)は、標準化された要介護認定によって判定されます。要介護者は、1 日あたりに必要とされる介護の時間数に応じて、日本では7つの区分に分類されています。「要支援」は、軽度の介護が必要な状態で、要支援1(25−31 分程度)、要支援 2(32−49 分程度)があります。一方、「要介護」は、重度の介護が必要な状態で、要介護 1(32−49 分程度)、要介護 2(50−69分)、要介護 3(70−89 分)、要介護 4(90−109 分)、要介護 5(110 分以上)に区分されています。要介護度が高いほど、日常生活動作における介助の必要性が高く、介護サービスの受給量も多くなります。

*4 リアルワールドデータ

レセプト情報(*1)などのビッグデータから抽出された、実際の診療で得られる情報(病気・けがの発生状況、使用された医療資源の詳細などの情報)を指します。このような実際の臨床データを活用することで、より的確な病気の予防や治療につながることが期待されます。近年、医療分野においてもリアルワールドデータを用いた研究が注目を集めています。東京大学臨床疫学・経済学教室および自治医科大学データサイエンスセンターの研究チームでは、2002 年に日本でも導入された、患者さんの病名や治療内容に応じて 1 日の入院費用を計算する方式(DPC; Diagnosis Procedure Combination)において発生する医療情報をデータ化(DPC データ)し、この DPC データを用いた研究や、国民健康保険や後期高齢者医療制度などで使用された診療報酬データ(レセプトデータ)による大規模レセプトデータ研究を行っています。こうした膨大な量のリアルワールドデータを解析することにより、これまで研究が難しかっためずらしい病気やケガについても、新たな知見が得られるようになってきました。

詳細︎▶︎https://www.gunma-u.ac.jp/information/181537

注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 さらに研究や実験を進める必要があります。十分に配慮するようにしてください。

高齢者のせぼねの骨折と介護リスク ビッグデータで関連性明らかに 〜 もともと要介護の人、介護度上昇リスクがおよそ 10 倍 〜

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