1.利用者からのハラスメント行為、我慢していませんか?
こういった「利用者からのハラスメント」の事例は後を止みませんが…。
実際の現場では、このような理由から、ハラスメント被害に耐えざるを得ず、「利用者からのハラスメント行為」は問題として明るみになっていないだけなのです。特に、近時、セクハラ被害のケースが散見されるので解説いたします。
2.セクハラは「違法行為」です
場合によっては、「犯罪行為」にも該当することも
まず、セクハラは、法的にも重大な問題であることを認識しましょう。法的には、「人格権」という権利、つまり、被害を受けた側の「人格」、「人としての尊厳」を傷つけます。それとともに、場合によっては、以下に紹介するような「不同意わいせつ罪」として有罪となる「犯罪行為」にも該当しうる違法な行為です。セクハラとは、法的には、「相手の意に反する性的な言動」を指します。いくら利用者であっても、職員・担当者へのセクハラは、法的に許容されるものではなく、利用者からそうした言動を受ければ、それはセクハラとして違法であるといえます。具体例としては、大きく分けて以下3つに分類できます。
3.セクハラ加害者が犯罪者になることもあり得ます
セクハラを行った利用者が有罪となった近時の事例を紹介します。2024年4月、利用者の70代男性が、リハビリ担当の20代前半女性の理学療法士に対して胸を触るなどのわいせつ行為を行ったことで、不同意わいせつ罪として有罪とされました。このように、セクハラというのは、場合によっては有罪になる犯罪行為である、ということを念頭に、利用者からのセクハラの言動に対しても毅然とした対応を取る必要があります。
4.リハビリ・介護の現場ではセクハラ被害が起きやすい環境的要因があります
リハビリ・介護の現場では、患者・利用者と従事者との身体的・精神的な距離が近く、また、閉鎖的な空間でのサービスも多く、セクハラが発生しやすい環境的要因があるため、注意が必要です。そうであるにもかかわらず、利用者のセクハラ言動に対しても、「捉え方次第ではないか?」、「プロとして適切に対応すべきではないか?」、などと軽視して、問題を放置しがちです。
しかし、セクハラの問題の放置は、スタッフの精神状態や職場環境の悪化、スタッフの離職、施設・事業所としての評判・信用低下など、由々しき事態を招く重大な問題であることを十分理解するようにしましょう。
何より、セクハラ防止のための対策を取ることは法的に義務化されており(男女雇用機会均等法)、施設・事業者側ではセクハラ防止のための対策を取らなければならないことも今一度見直すようにしましょう。
5.セクハラ防止対策は、法的な義務であるため、具体的に講じましょう
利用者から、セクハラの言動をされた場合には、曖昧にせずに利用者に毅然とした対応をとること、具体的には、利用者にセクハラに対する拒否の意を明確に示すことが重要です。それとともに、上司などにも報告・共有をして、被害の内容など(いつ、どこで、誰に、何をされたか、など)を記録に残しましょう。利用者側がセクハラ言動を否定してきた場合でも、セクハラ被害を受けた後、間もなく上司などの第三者に報告をしていることが有力な証拠になることもあります。その意味では、スタッフ個人の対応に委ねることは言語同断であり、施設・事業者側で見て見ぬふりをするなどの場合には、セクハラ対策の不備として、施設・事業者側の問題となるケースもあるので注意が必要です。
次に、拒否の意を明確に示しても、利用者のセクハラが止まない場合には、「担当を変えて同性の職員が対応する」、「複数名で対応する」、などの被害拡大を防ぐ対策を取ることが重要です。その上で、セクハラの原因や背景(利用者のストレス、不安など)を究明して、利用者家族に相談するなどしながら、再発防止策を検討しましょう。
特に、認知症や精神障害がある利用者の方に対しては、利用者家族を含めて、どんな言動がハラスメントであり、ハラスメントがあった場合には「場合により契約解除もできる」ことなどを事前に説明しておくべきであり、こういった事前の対策から検討することも重要です。
最後に、セクハラの態様が悪質なケースでは、施設・事業所の利用拒否、利用者に対する損害賠償請求、被害届の提出などの法的措置を検討すべきケースもあるため、専門家である弁護士にいち早く相談すべきです。
6.困った場合は、まずは専門家である弁護士にいち早くご相談を
私自身は、かの北里柴三郎が「研究だけをやっていたのではダメだ。それをどうやって世の中に役立てるかを考えよ。」と語ったように、自分の弁護士としての経験やスキルを困っている方のために活かし、世のため人のために役立ちたいという信念を持ちながら弁護士として活動しています。もし、セクハラの被害にお悩みの方、どのように取り組むべきかお悩みの方がいれば、こういった問題に専門的に取り組んでいる弊所までぜひ一度ご相談ください。
【HP リンク】
・https://www.avance-lg.com/lawyer/lawyer_kobayashi.html
今回解説いただいた弁護士は
【略歴】
神戸大学法学部、立命館大学法科大学院を卒業。
2014年に弁護士登録。
2015年に弁護士法人ALG&Associatesに入所後、東京法律事務所で勤務開始。
その後、2019年、神戸法律事務所の開設に伴い、所長に就任。
交通事故や医療過誤案件をはじめ、損害賠償請求に関する案件や、企業のハラスメント対策・勉強会に多数携わるほか、柔道整復師向けのセミナー、理学療法士を始めとする医療従事者向け講演などの実績を有する。