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膝の内側疼痛はここを見逃すな

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『膝の内側が痛いです』患者様からこの訴えを聞いた時にどのような仮説を立てますか?

内側側副靱帯損傷なのか、半月板損傷か、、はたまた鵞足炎か、、、

【膝の内側疼痛】で、痛みを生じやすい組織が頭に入っていることでこれらが連想され、問診・検証を行いアプローチに至ると思います。それでは、【膝の内側が痛い】というワードから伏在神経はパッと閃いたでしょうか。私は臨床経験が浅い時期には連想できていませんでした。しかしながら、伏在神経由来の病態や評価、アプローチ方法を知ることで相応に存在していることを臨床で経験してきました。この記事を読んでいただいているあなたには、膝の内側疼痛の病態を見逃して欲しくありません。そこで今回は伏在神経の評価やアプローチについてお伝えします。

1.伏在神経の理解

伏在神経は大腿神経から恥骨下方の鼠蹊部付近で分岐している感覚神経です。大腿神経の感覚枝であり運動麻痺は生じません。縫工筋の下、内側広筋と大内転筋の付近、内転筋菅(ハンター菅:広筋内側筋板)を走行し、膝蓋下枝と内側下腿皮枝に分岐しています。知覚領域としては膝前内側部から下腿内側部と広範囲です。鵞足炎との混同に注意が必要となります。

〈ハンター管症候群〉

ハンター菅症候群とは、広筋内側筋板によって作られた内転筋菅(ハンター菅)を走行しているところで絞扼障害が生じていることをいいます。内側広筋と大内転筋の間かつ膝蓋骨より拳一個近位のところに圧痛があるかを評価します。

〈縫工筋との関連〉

伏在神経由来での疼痛を考える際、とても重要なポイントとなるのが縫工筋です。

伏在神経の表層は縫工筋が覆っています。松永らは、膝蓋下枝は縫工筋後縁を回り、筋表面を前方に向かうもの(41.7%) 縫工筋筋腹を貫通して筋表面を前方に走るもの(52.8%)と報告しています。これらの報告からも、縫工筋に短縮や滑走障害が起こった場合に伏在神経由来の疼痛が発生することとなります。

図1:伏在神経の走行

2.伏在神経の疼痛

患者様からの訴えの特徴として、局所的な訴えより広範囲での訴えを多く経験します。
内容としては、「重だるい感じがする」や「ビリビリと内側全体が嫌な感じがする」というような訴えがあります。

動作においては、階段の昇段時と歩行時の痛みがあります。

階段の昇段時では、下肢をあげる際に縫工筋が作用するため、神経絞扼が生じて疼痛が発生することが考えられます。

歩行においては、PSWからISWにかけて縫工筋の活動が増大するため、短縮や滑走不全を生じていることで疼痛が発生していることが考えられます。また、股関節の伸展不足も伏在神経の絞扼が生じることが考えられ、疼痛の発生に起因していることが多いです。

3.伏在神経の誘発テストとアプローチ

〈誘発テスト〉

縫工筋に短縮や滑走障害が起こることで伏在神経由来の疼痛が発生するため、縫工筋の伸長を利用して伏在神経が圧迫された状態での誘発テストを実施します。伏在神経の知覚領域に痛みや違和感の訴えがあると伏在神経由来ということがわかります。

実施肢位:患側が上側での側臥位

実施方法:股関節を伸展・内転・内旋させます。その状態で、膝関節の屈曲・伸展を繰り返して     いきます。

〈アプローチ〉

・縫工筋リリース

背臥位にて、内側広筋、薄筋と半膜様筋の境目部位を触診し縫工筋を把持します。

筋の走行と垂直方向にリリースします。

・股関節伸展ストレッチ

歩行時の立脚相後半の股関節の伸展不足を解消するために股関節伸展ストレッチを行います。

動画での実施方法を参照してください。

動画1:伏在神経の誘発テストとアプローチ方法

〈自主練〉

リハビリの場において症状が改善しても、自宅ではまた症状が出てしまうということは多く経験すると思います。それでは、目標に向かって前進することができなくなってしまうので、患者様にも触診方法をお伝えして、自宅や入院中の空き時間でもリリースの自主練を行っていただきます。リハの時間内にて、こちらからの一方的なアプローチだけでなく患者様本人にもご自身の身体にしっかり向き合ってもらうことが大切です。

今回、膝の内側疼痛の中でも伏在神経由来の評価法とアプローチについてご紹介しました。仮説検証を繰り返し、有効なアプローチを行うことはとても大切です。そして、痛みをとった先に患者様がどんな生活が待っているのかを想像してもらえることで、リハビリへの意欲が湧いてくると思います。患者様に良い未来を想像していただけるように仮説検証をしていく中での一つのアプローチとして役立てていただければと思います。

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