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訪問看護の現状を可視化──中医協が実施状況調査報告を公表

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令和6年度の診療報酬改定を受けて、中央社会保険医療協議会(以下、中医協)は2025年4月23日の総会(第607回)で、「在宅医療、在宅訪問薬剤管理及び訪問看護の実施状況調査報告書(案)」を発表しました。 この調査は、改定内容が実際の現場でどう反映されているかを把握するために実施されたもので、医療機関や訪問看護ステーション、保険薬局などが対象となっています。

この記事では、訪問看護に焦点を当て、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)を含む多職種連携の現状について読み解いていきます。

*前回は総会において報告された「医療機関の経営実態」についてまとめています。あわせてご覧ください。

訪問看護の体制と評価の今

令和6年11月1日時点のデータによると、訪問看護ステーションの常勤看護職員数(実数)は全体平均で6.6人。機能強化型では8.7人、非該当のステーションでは4.5人と、機能区分によって明確な違いが見られました。

[令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和6年度調査)の 報告案についてp354]

加算制度の実際:訪問看護管理療養費

【訪問看護管理療養費1】の届出率は61.5%。その取得要件のひとつ「同一建物の居住者が7割未満」という条件については、57.8%の事業所が「満たすのが難しい」と回答しており、制度運用の実態と制度設計のギャップも見えてきました。

[総-4-3-1 在宅医療、在宅歯科医療、在宅訪問薬剤管理及び訪問看護の実施状況調査報告書(案)<概要>]

職種別の訪問回数とリハ職の動き

同じ月の1か月間における訪問回数は、職種ごとに以下のような結果となりました。

  • 保健師・助産師・看護師:平均10.8回

  • 准看護師:平均0.8回

  • リハビリ職(PT・OT・ST):平均1.9回

[令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和6年度調査)の 報告案についてp623]

また、看護師単独での訪問が難しいケースでは、PT・OT・STが同行する複数名訪問看護が行われており、その平均利用者数は0.5人でした。訪問時のケア内容として「リハビリテーション」が選ばれた割合は2.3%にとどまっています。

[令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和6年度調査)の 報告案についてp469]

リハビリ職の配置状況と看護師との連携

訪問看護ステーションにおけるPT・OT・STの配置は、常勤換算(FTE)で次のように報告されています。

  • 理学療法士:1.3人

  • 作業療法士:0.6人

  • 言語聴覚士:0.1人

この数字は、リハ職の多くが非常勤または兼務であることを反映しています。

[令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和6年度調査)の 報告案についてp353]

一方で、リハ職と看護師との日々のやり取りに関しては、次のような回答が得られました。

  • 「日常的に情報を共有している」:80.7%

  • 「訪問看護計画を共同で作成している」:63.2%

[令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和6年度調査)の 報告案についてp475]

なお、訪問看護指示書にリハ職の訪問が明記されているのは全体の29.9%でした。書類上の扱いは限定的でも、実際には密な連携が日常的に行われている実情がうかがえます。

[令和6年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(令和6年度調査)の 報告案についてp630]

ICTを通じた情報共有の活用

在宅歯科医療情報連携加算の算定条件には、訪問看護ステーションの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を含むスタッフがICT等を通じて記録・共有する診療情報の活用が明記されています。こうした仕組みは、今後のチーム医療の質を左右する重要な連携手段として、制度的にも評価の対象になっています。

[総-4-3-5 参考p15]

おわりに 今回の調査結果は、訪問看護の現場における実態を明らかにしたものです。看護職が中心でありながらも、PT・OT・STなどのリハビリ職が現場で果たしている役割も見逃せません。今後の制度改定や加算設計では、こうした多職種の連携をどう評価するかが重要な視点になっていくはずです。

▶︎https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_57122.html

訪問看護の現状を可視化──中医協が実施状況調査報告を公表

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