キャリアコンサルタントが徹底サポート

高額療養費制度の見直し、患者団体から切実な声―専門委員会が本格議論へ

251 posts

月数万円の負担増に「治療を諦める患者が増える」 制度の持続可能性とセーフティネット機能の両立が焦点

高額療養費制度の見直しを検討する厚生労働省の専門委員会が26日、初会合を開催した。この委員会は、昨年示された制度見直し案に対し「検討プロセスに丁寧さを欠いた」との批判を受けて新設されたもので、患者団体の代表も参加し、当事者の声を重視した議論を進める方針です。

13万筆の反対署名、患者の切実な現実

全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長は、制度見直しに関するアンケートでわずか3日間に3623名から寄せられた切実な声を紹介した。

「20代のスキルス胃がんの女性患者さんは『高額療養費制度を使っていますが支払いは苦しいです。毎月さらに多くの医療費を支払うことはできません。死ぬことを受け入れ、子どもの将来のためにお金を少しでも残す方がいいのか追い詰められています』と訴えています」

患者団体が実施した緊急署名には10日間で13万筆を超える反対の声が集まった。天野理事長は「これ以上医療費が高額になると治療を諦める患者が増えるのは確実です」との患者の声を代読し、制度見直しの影響の深刻さを訴えました。

難病患者にとって「命綱」の制度

日本難病・疾病団体協議会の大黒宏司代表理事は、現在約109万人が対象となる指定難病制度だけでは医療費負担をカバーしきれない現状を説明。自身の25年間の闘病体験を振り返り、「医療によって予後が改善されてきているわけですが、制度によって予後が短くならないよう、この委員会の皆さんの英知に期待している」と述べました。

大黒代表理事は、高額療養費制度の見直しによる財政影響として「受診抑制効果」が2270億円見込まれているという資料に驚きを示し、「患者が不合理的な危険を負わすようなことはやめた方が良い」と警告しました。

第192回社会保障審議会医療保険部会:高額療養費制度の見直しについて

現行制度への具体的な問題提起

天野理事長は制度の構造的な問題も指摘しました。乳がん治療を例に、標準治療薬「ベージニオ」の薬価が月約50万円(3割負担で約15万円)であり、患者は病気が進行するまで毎日この治療を続ける必要があると説明。

さらに、現在の多数回該当制度について「上限額に達するようにするインセンティブが現場で働いている」と指摘。「全く不要な検査をしているわけではないが、検査を早めて入れたり、より高額な薬を使うため先発薬を優先して使うということが現場で実際起きている」として、制度設計の見直しが医療費適正化にもつながると主張しました。

委員から多角的な視点

国民健康保険中央会の原勝則理事長は「一般の疾病と治らない病気で高額医療費がかかる場合を一つの括りで議論すること自体が制度化する面では非常に難しい」と、制度設計の複雑さを指摘しました。

早稲田大学の菊池馨実教授は「所得に応じた一定の引き上げ自体は行わざるを得ない状況にある」としながらも、基礎データに基づく家計への影響分析の必要性を強調しました。

日本労働組合総連合会の村上陽子副事務局長は「保険料を応能負担する中で給付においても応能負担をこれ以上強めることについて、被保険者の納得を得るのは難しい」と、制度の公平性への懸念を表明しました。

制度を取り巻く厳しい現実

厚労省の資料によると、健康保険組合における1000万円以上の高額レセプト件数は、平成22年の174件から令和5年には2156件と約12倍に急増。上位100位の平均金額も平成26年の約1861万円から令和5年の約5586万円と約3倍に増加している状況です。

高額療養費の支給件数・支給金額も年々増加傾向にあり、直近の2022年度は支給件数7102万件、支給金額約3兆円に達している。

今後の議論の行方

事務局は今後の進め方について「具体的な開催頻度は未定だが、丁寧に議論を重ね、関係者からのヒアリングやデータ分析を行う」と説明。天野理事長からは「社会保障制度全体の中での議論が必要」として、他省庁の参加も要請されました。

政府は本年秋までに高額療養費制度の方針を決定する予定ですが、初回会合では制度の持続可能性確保と患者のセーフティネット機能維持という困難なバランスを取る必要性が改めて浮き彫りになりました。

患者にとって「命綱」とも言える制度の将来をめぐり、今後の議論の展開が注目されます。

▶︎https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_58126.html

【合わせて読む】

高額療養費制度の見直しに向けて専門委員会を設置へ

高額療養費制度の見直し、患者団体から切実な声―専門委員会が本格議論へ

Popular articles

PR

Articles