厚生労働省の診療報酬調査専門組織「入院・外来医療等の調査・評価分科会」が6月13日に開催され、高齢者の入院医療を中心に、リハビリテーション機能を担う地域包括医療病棟や回復期リハビリテーション病棟の現状と課題について活発な議論が交わされました。
85歳以上の救急搬送が急増、リハ早期介入の重要性高まる
調査結果によると、入院患者の高齢化が深刻で、75歳以上の割合は令和5年に57.2%に達しています。特に85歳以上では人口増加により入院患者の実数が増加しており、救急搬送率も主に85歳以上の年齢階層で顕著な増加を示しています。
「新たな地域医療構想のとりまとめ」では、2040年には85歳以上の高齢者の救急搬送が75%増加し、在宅医療の需要は62%増加すると予測されており、入院早期からのリハビリテーション介入の重要性がますます高まっています。
新設の地域包括医療病棟、リハ職の配置基準を強化
令和6年度改定で新設された地域包括医療病棟は、10対1の看護配置に加えて、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の常勤2名以上の配置と専任常勤管理栄養士1名以上の配置を義務付けており、高齢者医療に必要な多職種連携体制を強化しています。
届出状況を見ると、急性期一般入院料1からの移行が4割程度と最多で、約3分の2が同一医療機関内にDPC対象病床を有しています。届出理由として「高齢者の救急搬送の増加に伴いニーズに沿った対応が可能」「経営が安定する」などが挙げられています。
リハ提供体制の課題が浮き彫りに
しかし、届出にあたって満たすことが困難な施設基準として、「休日を含めすべての日にリハビリテーションを提供できる体制の整備」を回答した医療機関が半数を超えており、リハビリテーション提供体制の整備が大きなハードルとなっています。
地域包括医療病棟を有するA票施設のうち、リハビリテーション・栄養・口腔連携加算の算定回数を1回以上と回答した施設は11%にとどまり、届出しない理由として「休日のリハビリ提供単位数が平日の8割以上を満たさない」が最多となっています。
回復期リハ病棟では実績指数の課題が深刻
回復期リハビリテーション病棟では、40床あたりの療法士数が約16人と他の病棟と比較して圧倒的に多い配置となっていますが、新たな課題も浮き彫りになりました。
介護度が重くなるに従いFIM利得は減少し、特に要介護度4、5ではFIM利得が比較的小さくなっています。実績指数の除外可能な対象患者では80歳以上の項目の影響が大きく、いずれかの除外項目が該当する患者の割合が全施設において40%を超えているのが実情です。
また、運動器疾患の患者では1日あたりの平均リハビリテーション提供単位数が6単位以上でも明らかな改善が見られないことから、令和6年度改定では運動器リハビリテーション料の算定単位数上限緩和対象から除外されました。
療養病棟でもリハ機能の見直し進む
療養病棟においては、医療区分・ADL区分ともに1である患者について、1日につき2単位を超える疾患別リハビリテーション料を包括範囲に含める見直しが行われました。
しかし、療養病棟入院料1で12.8%、入院料2で3.8%の医療機関が医療区分2・3の施設基準を満たしておらず、リハビリテーション機能の充実が課題となっています。
「包括期機能」への転換でリハ職の役割拡大
「新たな地域医療構想のとりまとめ」では、従来の回復期機能を「包括期機能」として位置づけ直し、「高齢者救急等を受け入れ、入院早期からの治療とともに、リハビリテーション・栄養・口腔管理の一体的取組等を推進し、早期の在宅復帰等を包括的に提供する機能」として定義されました。
この方向性により、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の役割はますます重要になり、急性期から慢性期まで切れ目のないリハビリテーション提供体制の構築が求められています。
同分科会では、これらの現状を踏まえ、高齢者医療におけるリハビリテーション機能の更なる強化と効率的な提供体制の構築に向けた検討を継続していく方針です。