令和6年6月25日、厚生労働省と子ども家庭庁は「第47回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」を開催し、令和6年度報酬改定後の主なサービスの動向について詳細な分析結果を公表した。会議では、グループホームを中心とした各サービスで営利法人の参入が急増していることが明らかになり、サービスの質の確保が重要課題として浮上した。
グループホームで質の確保が課題に
報告では、グループホーム全体で営利法人が設置する事業所が大幅に増加していることが判明しました。特に日中サービス支援型では、営利法人による事業所設置の増加が顕著となっています。同時に、利用者の障害支援区分4以上の重度者の割合が相当多いことも分かりました。
橋本美枝アドバイザー(医療法人社団聖母会成田地域生活支援センター統括施設長)は「支援度の低い、手がかからない方だけが選ばれ、困難を抱える方はトラブルや入院をきっかけに退去となるなど、本当に支援が必要な人ほど利用しにくいという実態に疑問を感じている」と指摘しました。
さらに「グループホームは指定基準が緩く、軽度の方も利用可能な上に、実際には支援が不十分でも問題にされにくいという声も聞かれる」として、質の向上に向けた実効性のある取り組みの必要性を強調しました。
厚生労働省障害福祉課は、令和6年度に調査研究事業でグループホームのガイドライン案を作成したことを説明し、「今年度はその案をさらに内容を検討し、これに基づくサービス提供を義務づけるなど、一層のサービスの質の向上を図っていきたい」と回答しました。
就労継続支援A型事業所の大幅減少
就労継続支援A型事業所については、令和6年度に事業所数全体が減少したことが報告されました。これは令和6年度報酬改定でスコア方式による評価項目を見直し、生産活動収支が賃金総額を下回った場合により厳しい評価を行うようにした結果とみられます。
事業所廃止により離職した利用者約4000人のうち、約半分の2000人がB型事業所に移行し、A型を含む一般雇用に移った人は約900人だったことが明らかになりました。
岩崎香アドバイザー(早稲田大学人間科学学術院教授)は「障害者雇用がすごく進んできて特例子会社なんかも増えている中でも、A型を利用している人たちがいて、現状すぐに企業で働くことが難しいという層の方たちを受け入れているのではないか」と分析しました。廃止事業所の利用者がB型に移ることの影響について懸念を示しました。
生活介護で重度者への対応強化
生活介護については、障害支援区分5・6の重度利用者が増加傾向にあることが判明しました。人員配置体制加算では、令和6年度改定で新設された1.5対1の手厚い人員配置を評価する区分の算定事業所数が増加しています。
延長支援加算の算定状況では、改定後に8時間以上サービスを提供している事業所が大きく増加しました。これは改定により、8時間以上のサービス提供を基本報酬で評価し、9時間以上は延長支援加算で評価する仕組みに変更した効果とみられます。
児童サービスでも営利法人が増加
児童発達支援と放課後等デイサービスでも、営利法人が設置する事業所の増加が目立ちました。両サービスとも令和6年度改定で時間区分を創設し、1時間30分超え3時間以下と3時間超え5時間以下を算定している事業所がそれぞれ約35%ずつ、合わせて全体の約70%を占めています。
田村和宏アドバイザー(立命館大学産業社会学部教授)は、放課後等デイサービスについて「不正受給により倒産・廃業するところが出てきている」と指摘しました。「不正受給をせざるを得ない状況の背景に何があるのかも含めて把握し、監査を厳しくすればいいということだけではない対応が必要」と提案しました。
地域格差の是正も重要課題
各サービスの人口10万人あたりの事業所数を都道府県別で分析した結果、相当な地域格差があることが明らかになりました。石津寿惠アドバイザー(明治大学経営学部教授)は「地域格差の是正が重要な課題」と指摘し、事業所の規模別や設置主体別の詳細分析の必要性を提案しました。
今後の検討課題
小澤温アドバイザー(長野大学社会福祉学部教授)は、グループホームの質の問題について「営利法人が設置する事業所が多く、重度者の割合が相当多いことから察すると、かなり詳細に検討しないといけない課題になっている」と総括しました。
会議では、次期報酬改定に向けて経営概況調査や従事者処遇状況等調査などの各種調査を順次実施していくスケジュールも確認されました。処遇改善加算については、令和8年度予算編成過程で検討することとされている実態把握の重要性が改めて強調されました。
今回の分析結果は、サービスの質の確保と持続可能な制度運営の両立が重要課題であることを浮き彫りにしました。特にグループホームにおける支援の質の向上については、ガイドラインの策定と併せて実効性のある取り組みが求められています。