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急性期医療の評価見直しを議論 DPC制度の課題と地方医療支援が焦点

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厚生労働省の診療報酬調査専門組織(入院・外来医療等の調査・評価分科会)が3日開催され、DPC(診断群分類別包括支払い制度)の見直しや急性期入院医療の評価方法について議論しました。特に人口減少が進む地方の医療提供体制をどう支えるかが重要な論点となりました。

DPC制度の深刻な課題が浮き彫りに

DPC対象病院は令和6年6月時点で1,786病院となっていますが、制度の根幹を揺るがす問題が明らかになりました。全許可病床に占めるDPC算定病床の割合が50%未満の病院が増加傾向にあり、データ数下位25%の医療機関(439施設)のうち約2割が「直ちに退出する予定」または「今後退出を検討している」と回答しています。

令和7年度特別調査で退出理由が判明

退出を検討している医療機関の約8割が「1月あたりデータ数90以上」の基準の影響を「大きい」と回答。退出を検討する背景として、「地域での人口減少、少子高齢化を踏まえた病棟再編の検討」「近隣の高度急性期病院からの下り搬送増加による地域包括ケア病棟等への転換検討」などが挙げられました。

一方で、DPC制度に参加するメリットとして「医療の標準化」「平均在院日数の短縮」が挙げられており、制度の本来の目的は評価されています。

複雑性係数の評価見直しが急務

DPC制度の機能評価係数Ⅱの複雑性係数について、現行制度では誤嚥性肺炎など平均在院日数が長く1日当たり包括範囲出来高点数の小さい疾患に偏った症例構成の場合、急性期入院医療における評価として不適当との指摘があります。

作業グループでは「入院初期により多くの医療資源を必要とする診断群分類を十分に評価できていない」として、入院日数の25%tile値までの包括範囲出来高点数に着目した分析を進める方針を示しました。

急性期機能の地域格差に新たな評価指標

急性期医療については、一般的な急性期機能と拠点的な急性期機能に分けて評価する方針が示されました。救急搬送件数、全身麻酔手術件数、総合性の3つの観点から医療機関の機能を評価する考えです。

地方医療圏の厳しい実態が数値で判明

人口20万人未満の二次医療圏では、救急搬送受入件数2000件以上の病院が約10%、4000件以上が約1%という厳しい実態が明らかになりました。また、約8割の医療圏で急性期充実体制加算や総合入院体制加算の届出がない状況です。

しかし注目すべきは、地域シェア率(当該医療機関の年間救急搬送受入件数/二次医療圏内全医療機関の合計受入件数)の観点です。人口20万人未満の医療圏のほぼ全てで、最大受入病院が地域の救急搬送の4分の1以上をカバーしており、中には半数以上を担う病院も存在します。

委員からの多様な意見

今村委員は「高齢化が進む中で、患者の安定する期間が年齢によって変わってくる。急性期病院として効率化を求められる一方で、高齢者で複数の疾患を持つ患者への配慮も必要」と指摘。

鶴井委員は「同じ20万人未満でも、大都市部に隣接した医療圏と完全な過疎地では状況が全く違う。医療機関機能を救急搬送件数や手術件数で切り分けることが果たして適切か。地域が認めるケアミックスが求められている」と柔軟な評価の必要性を訴えました。

中野委員は「人口減少を踏まえて二次医療圏の見直しも考えられる中、地理的要因なども考慮しながら人口規模に応じた基準の検討が必要」と提言しました。

短期滞在手術の外来移行が課題

短期滞在手術等基本料について、白内障手術(水晶体再建術)や内視鏡的大腸ポリープ切除術の外来実施率向上が重要課題として取り上げられました。

白内障手術では、OECD諸外国の外来実施率が90%以上である一方、日本は54%と低く、都道府県間でも大きな格差があります。入院で実施する理由として、「患者数に比して外来対応可能な手術室や回復室が整備できていない」「高齢者や独居患者が多く、手術後翌日の通院が困難」「全身状態不良や合併症リスクが高い症例が中心」などが挙げられています。

重症度医療看護必要度のB項目で激論

重症度医療看護必要度のB項目評価について、病院団体からの負担軽減要望と、看護現場からの継続必要性の主張が対立しました。

賛成論

秋山委員は「急性期こそ患者の状態評価は不可欠。A項目・C項目による基準該当患者は3割で、残り7割の患者の看護の手間はB項目以外では評価できない。B項目を含めた重症度医療看護必要度データに基づいて適正な看護師配置を確保することが、提供される医療看護サービスの質を担保する」と強調。

竹井委員も「高齢者の誤嚥性肺炎患者では、看護師が気道浄化や認知症患者への酸素投与、嚥下機能評価などを適切に行うことで、急性期での短期間治療効果と合併症予防につながっている」と具体例を挙げて支持しました。

慎重論

牧野委員は「病院団体からB項目測定の負担軽減要望が出されている事実を伝えておく必要がある」と指摘し、現場の負担に配慮を求めました。

救急医療の構造的課題

救急医療については、搬送人員が過去最多となっている一方、救急患者連携搬送料の算定回数が少ない現状が問題となりました。

届出していない理由として「搬送に同乗するスタッフが確保できない」「救急自動車を保有していない」「メディカルコントロール協議会との協議要件の達成が困難」などが挙げられ、制度の使い勝手の悪さが浮き彫りになっています。

牧野委員は「三次救急施設で受け入れた患者を他施設で受け入れてもらうことで次の救急車を受け入れ可能にするのが本来の目的。メディカルコントロール協議会との事前協議要件などの見直しが必要」と述べました。

鶴井委員は「受け手側の下り搬送病院にもインセンティブが必要。上り搬送時の医師・看護師のタクシー帰院費用など、現場の負担も考慮すべき」と実務面の改善を求めました。

急性期医療の未参加病院の実態

急性期一般入院料を算定しながらDPC制度に参加していない404医療機関を対象とした調査では、86%が「現時点で参加は検討していない」と回答。理由として「DPC制度に参加する必要性を感じない」が最多で、「診療報酬算定上、DPC制度に参加しない利点が大きい」が続きました。

今後の方向性

会議では、地域の実情に応じた医療機能の評価方法について継続的な検討が必要との認識で一致しました。特に人口減少が進む地方では、複数の機能を担うケアミックス型の医療機関の重要性が高まっており、従来の枠組みにとらわれない柔軟な評価体系の構築が急務となっています。

DPC制度については、急性期医療の標準化という本来の目的を維持しながら、多様化する医療機関の実態に対応できる制度設計の検討が求められており、次回以降も具体的な制度設計に向けた議論が継続される予定です。

急性期医療の評価見直しを議論 DPC制度の課題と地方医療支援が焦点

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