日本病院会など4団体が中間報告、物価高騰と賃上げが経営を直撃
日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会の4病院団体は10月6日、2025年度「病院経営定期調査」の中間報告を公表した。2023年度と2024年度の比較では、医業収益が2.8%増加したものの医業費用が3.4%増加し、増収減益の傾向が続いていることが明らかになった。
医業利益・経常利益ともに赤字が拡大
年度比較では、2024年度の100床あたりの医業利益はマイナス1億7530万円となり、2023年度のマイナス1億5571万円から赤字幅が拡大した。経常利益もマイナス7578万円(2023年度マイナス2439万円)と大幅に悪化している。
赤字病院の割合も増加しており、医業利益では69.9%から73.8%へ3.9ポイント増、経常利益では51.1%から63.6%へ12.5ポイント増加した。
[引用資料:「2025年度病院経営定期調査(中間報告)」7ページ、図3「医業損益の年度比較(2023年度/2024年度)」]
費用増の主因は人件費と材料費
報告書によると、全病院の医業費用3.4%増の内訳では、給与費が3.1%増、材料費が3.5%増(特に診療材料費5.6%増)となり、金額ベースで費用増の72.5%を占めた。水道光熱費は5.5%増で、特にガス料金が12.7%の大幅な伸びを示している。
[引用資料:「2025年度病院経営定期調査(中間報告)」8ページ、表2「全病院の医業損益・100床あたりの平均」]
病床区分別・開設主体別でも全面的に悪化
病床区分別では、すべての区分で医業利益・経常利益が2期連続の赤字となった。2024年度の一般病院の医業利益はマイナス2億4862万円、経常利益はマイナス1億885万円だった。
開設主体別では、自治体病院の経営悪化が顕著で、2024年度の医業利益はマイナス5億5244万円、経常利益はマイナス2億2873万円となっている。
[引用資料:「2025年度病院経営定期調査(中間報告)」8-9ページ、表3「病床区分別の医業損益」、表4「開設主体別の医業損益」]
7年連続比較では2024年度が最悪の結果
参考データとして示された2018年度から2024年度までの7年連続比較では、2024年度の経常利益マイナス1億1377万円、医業利益マイナス2億3649万円がともに7年間で最大の赤字額となった。
経常利益の赤字病院割合は77.8%と過去最高を記録している。新型コロナウイルス関連の補助金により黒字を確保していた2020年度から2022年度を除き、病院経営の厳しさが年々増している状況が浮き彫りになった。
[引用資料:「2025年度病院経営定期調査(中間報告)」14-15ページ、図9「7年連続年度比較 医業利益、経常利益」、表10「一病院あたりの損益」]
ベースアップ評価料は93.4%が届出
2025年度の賃上げ対応については、ベースアップ評価料を届け出た病院が93.4%、実際に賃上げを実施した病院が87.7%に上った。全職種の平均賃上げ率の中央値は3.0%だった。
一方、賃上げ促進税制を利用している病院は12.9%にとどまり、利用していない理由として55.3%の病院が「病院形態として賃上げ促進税制を利用できない(公的病院、社会医療法人など)」と回答している。
[引用資料:「2025年度病院経営定期調査(中間報告)」17-19ページ、図13-16]
調査概要
調査は2025年7月10日から8月22日にかけて実施され、4団体の会員病院5149施設に調査票を配布。1289病院から回答があり、うち有効回答は1236病院(有効回答率25.0%)だった。
病院団体合同調査ワーキンググループの島弘志委員長(日本病院会副会長)は報告書の冒頭で、「人口減少・高齢化、コロナ後の医療需要の変化が進むなか、多くの病院が抱える増収減益という経営状況のなか、医師の働き方改革による労働時間の制約を受け入れ、物価高騰よる厳しい環境も乗り越えていかなければならない」と述べ、病院経営が「まさに気を緩めることができない状況」にあることを強調している。
報告書では「今後さらなる賃上げや薬価、診療材料等の費用高騰が続き、病院経営をさらに圧迫することが懸念される」とまとめられている。