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MLBピッチクロックは本当に「肘」を壊すのか?最新2025年論文と先行研究から紐解くメカニズムと臨床的示唆

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序論:「時短」の代償は誰が払うのか?

2023年、MLBに導入された「ピッチクロック(Pitch Clock)」。走者なし15秒、走者あり20秒(2024年からは18秒)という厳格な時間制限は、平均試合時間を約24分短縮し、試合のテンポを大きく変えました。

しかし、その裏で選手会や医療従事者からは「休息不足が投手の肘を壊すのではないか」という懸念が噴出しました。

「投球間隔の短縮で疲労が抜けない」「心拍が整わないまま次の出力が求められる」──こうした現場の感覚は正しいのでしょうか?

2025年、この問いに科学的なメスを入れる重要な研究(Mastroianni et al., 2025)が発表されました。

本記事では、この最新論文を軸に、過去の生理学研究(Yang et al., Sonne & Keir)を統合します。単なる「怪我が増えた・減った」の議論を超え、私たち理学療法士が「Pitch Clock時代にリハビリをどう変えるべきか」という臨床的解に迫ります。

1. 最新エビデンスの解釈:怪我の「総数」ではなく「中身」を見ろ

まず、議論の土台となるMastroianniら(2025)の研究結果を整理します。ここには、臨床家が見落としてはいけない「パラドックス」が含まれています。

結論①:手術の「総数」は増えていない

Pitch Clock導入後と導入前を比較した結果、年間のUCL手術件数に統計的な有意差は認められませんでした。

「ルール変更で肘の手術が急増した」という言説は、統計的には否定された形です。

結論②:しかし、「誰」が「いつ」壊れるかが激変した

総数は変わらずとも、内訳には明確な構造変化が起きています。

先発投手の危機:導入後、先発投手(Starters)の手術割合が相対的に増加したと報告されています。

シーズン序盤への集中:導入後、手術がシーズン序盤に偏る(早期化する)傾向が示されました(P=.04)。

臨床的な読み解き

これは何を意味するのでしょうか?先発投手は、リリーフに比べて長いイニングを、短いインターバルで投げ続けなければなりません。また、シーズン序盤へのシフトは、オフシーズンの準備が「新ルールの高密度な負荷」に適応しきれていない可能性を示唆しています。

つまり、Pitch Clockは「直接の凶器」ではないものの、「疲労の蓄積構造」を変え、適応できない投手を早期にふるい落としている可能性があるのです。

MLBピッチクロックは本当に「肘」を壊すのか?最新2025年論文と先行研究から紐解くメカニズムと臨床的示唆

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