本日令和7年(2025年)11月28日に開催された第631回中央社会保険医療協議会(中医協)総会の重要ポイントを、医療従事者向けニュース記事の構成案としてまとめました。本日の総会では、「消費税対応」「調剤報酬の見直し」「救急医療・過疎地対策」「業務簡素化」の4つが大きな柱となりました。特に消費税対応については、次期改定での方向性が決定づけられる重要な局面を迎えました。
~補填率100%超も、病院側からは「物価高騰下の実質マイナス」懸念の声~
本日の総会で最も注目されたのは、医療機関等の消費税負担に関する報告です。診療報酬調査専門組織「医療機関等における消費税負担に関する分科会」からの報告を受け、令和8年度診療報酬改定においては、消費税対応分の上乗せ点数の見直しを行わないという方向性が承認されました。
補填状況は「マクロでは充足」
分科会の飯塚敏晃分科会長からの報告によると、令和6年度の補填率は、医科全体で101.5%、病院全体で104.9%、保険薬局で103.7%といずれも100%を超過しており、マクロで見れば消費税負担は十分に補填されているとの結果が示されました 。これを受け、厚生労働省は「上乗せ点数の見直しを行わない」ことを提案しました。

診療側と支払側の攻防
この結論に対し、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「マクロで見れば十分に補填されており、事務局の提案に賛同する」と述べつつ、「過度な補填も好ましくない」と釘を刺しました 。
一方で、診療側からは強い懸念が示されました。小坂真理委員(日本医師会常任理事)は、「令和5年から6年にかけて補填率が下がっているトレンドがある。インフレ基調の中で、実質的にはマイナスになっていくのではないか」と指摘し、将来を見据えた対応を求めました 。また、太田圭洋委員(日本病院会副会長)も、病院団体独自の調査では補填率が100%を下回っていることに触れ、「厚労省の結果には正直驚きがある。なぜ乖離があるのか検証の場を作ってほしい」と要望しました 。
「門前薬局」への評価適正化へ、敷地内薬局の抜け穴も封鎖か
~調剤基本料のあり方で厳しい指摘相次ぐ~
調剤報酬に関しては、制度制定から10年が経過した「患者のための薬局ビジョン」の進捗と、依然として多い「門前薬局」のあり方が議論の的となりました。
「立地依存」からの脱却を
支払側の松本委員は、「薬局の数は増加しているが、薬剤師の数は小規模なまま変化がない。門前薬局が当たり前で、ビジョンとは逆行している」と厳しく指摘。「機能と立地を同時に変えていく必要がある」とし、大都市圏で処方箋集中率が高いにも関わらず機能が限定的な薬局については、調剤基本料1からの除外も検討すべきと主張しました 。
これに対し、診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「業務の広がりに伴い評価項目も増えている。簡素化ありきではなく、やったことを正当に評価すべき」と反論。その上で、同一企業が病院の正門と裏門の両方に出店するような事例には対応が必要としつつも、「中小薬局の経営基盤は脆弱であり、基本料1を原則とすべき」と訴えました 。
敷地内薬局の「抜け道」対策
いわゆる敷地内薬局(特別調剤基本料A)に関しても議論が集中しました。特定の条件下(医療モール等)での除外規定(ただし書き)を利用し、意図的にルールをすり抜ける事例が報告されています。森委員は「意図的なルールのすり抜けを狙っていると言わざるを得ない事例が続いている」とし、ただし書きの削除を含めた対応を求めました 。

救急医療:「下り搬送」の評価と救急外来の機能強化
~高齢者の救急搬送増に対応する地域連携~
救急医療においては、三次救急から後方病院への転院搬送(いわゆる下り搬送)を促す「救急患者連携搬送料」の活用が焦点となりました。
連携搬送が進まない現状
厚労省のデータによると、救急患者連携搬送料の届出は限定的です。診療側の大田委員は、「要件が厳しく届出が進んでいない。不要と思われる要件は緩和すべき」と主張。また、搬送元だけでなく、受け入れ側の医療機関への評価も設定すべきだと提案しました 。
救急外来の「箱」と「人」の評価
救急外来(ER)の体制確保についても議論されました。看護側の木澤晃代委員(日本看護協会常任理事)は、「救急外来ではトリアージや家族への説明、療養指導など看護職が幅広い役割を担っている」と述べ、24時間体制で救急を受け入れる体制そのものへの評価の必要性を訴えました 。一方で、松本委員は、軽症患者の入院判断に使われる指標について、「特定機能病院と一般病院で同程度の算定割合なのは疑問。定量的な基準が必要ではないか」と指摘し、評価のメリハリを求めました。

医療DXで「署名・押印」の廃止加速へ
~入院診療計画書など、形骸化した手続きの刷新を~
医療現場の負担軽減を目指し、業務の簡素化についても議論が行われました。特に焦点が当たったのは、患者や医師の「署名・押印」の見直しです。
電子化による患者・現場双方のメリット
松本委員は、「医療DXを患者との情報共有ツールとして活かす視点が欠けている」と指摘。「紙で計画書を渡して署名をもらうよりも、電子的に共有すれば患者もスマホで確認でき、受付の業務負担も減る」と述べ、形式的な署名の廃止とデジタル化の推進を強く求めました 。診療側の江澤和彦委員(日本医師会常任理事)も、現場の負担軽減の観点から簡素化の方向に異論はないとしました 。
理学療法士としての現場経験を経て、医療・リハビリ分野の報道・編集に携わり、医療メディアを創業。これまでに数百人の医療従事者へのインタビューや記事執筆を行う。厚生労働省の検討会や政策資料を継続的に分析し、医療制度の変化を現場目線でわかりやすく伝える記事を多数制作。
近年は療法士専門の人材紹介・キャリア支援事業を立ち上げ、臨床現場で働く療法士の悩みや課題にも直接向き合いながら、政策・報道・現場支援の三方向から医療・リハビリ業界の発展に取り組んでいる。







