本記事では、1~5年目のPT・OTが明日からの臨床ですぐに実践できる、正しい靴の履き方による歩行の整え方と、市販の中敷を用いた簡易的な靴内調整(フィッティング)の視点を徹底解説します。
1. はじめに
歩行分析や動作分析を行う際、皆さんは患者様や利用者様の「足元」をどこまで観察できているでしょうか。「歩行立脚中期に膝が外反する」「骨盤の側方傾斜が見られる」といった関節運動の異常に対し、体幹や股関節へのアプローチばかりに目が向いていませんか?
実は、どれだけ徒手療法や筋力増強訓練で身体機能を高めても、歩行時の唯一の接地点である「靴」の環境が崩れていれば、その効果を日常生活に汎化させることは困難です。特に、臨床経験の浅い時期は見落としがちですが、「靴の履き方」と「インソール(中敷)の調整」は、理学療法・作業療法の効果を最大化するための有効な介入手段となります。
どれだけ良い介入をしてもブカブカの靴を紐も結ばずに履いていれば、立脚初期(の衝撃吸収は行えず、立脚中期以降の支持性も低下します。結果として、膝痛や腰痛、代償動作などを引き起こす原因になってしまうのです。
靴と中敷のアプローチを臨床に取り入れるメリットは以下の3点です。
- 1.即時効果:その場で歩容や痛みが変化することが多く、患者様のモチベーション向上に繋がります。
- 2.持続効果:リハビリの時間以外の日常生活でも、常に正しい運動学習を促す環境を提供できます。
- 3.評価の答え合わせになる:靴の要因がとり除ければ、自分の立てた仮説(例:足部回内が原因で膝外反が起きている)が正しかったことの証明になります。
まずは「靴も評価・治療手段の一部である」という認識を持つことから始めましょう。
2. なぜ靴の履き方が重要なのか?
間違った履き方がもたらす歩行への悪影響
よくある悪い例が、「靴紐を縛ったまま足を滑り込ませて履く」「踵を踏んで履く」「マジックテープを緩く止める」といった履き方です。
これらは靴の中で足が前後に滑る原因になります。足が前方にズレると、MP関節の屈曲が制限され、足指が使えない「浮き指」や「ハンマートゥ」を誘発します。また、推進期において、足指で床を蹴り出す(ウィンドラス機構の活性化)ことができなくなり、歩幅の減少や推進力の低下を招きます。
このように靴を正しく履いていないことのデメリットは大きいと感じると思います。
3. 歩行を整える「正しい靴の履き方」の3STEP
患者様に指導する際は、以下の手順を徹底してください。
STEP①:靴紐やマジックテープを完全に緩める
足をスムーズに入れるためだけでなく、甲全体のホールド感を毎回リセットするために、まずはしっかり緩めさせます。
よく紐を縛った状態で無理やり足をいれる様子を見ますが、これでは靴に負担をかけてしまい靴の構造に余計な負荷をかけたり、ヒールカウンターを崩す原因になってしまう可能性があります。
STEP②:足を入れ、踵をトントンと地面に打ち付ける
靴の「ヒールカウンター(踵の芯)」と、「踵(踵骨)」を隙間なく一致させます。 足のフィッティングの基準点はつま先ではなく「踵」です。ここがズレてしまうと接地期から歩容が崩れてしまい、その後の歩行効率が落ちてしまいます。

STEP③:つま先を浮かせた(足関節背屈位)状態をキープし、紐やベルトを締め上げる
つま先を上げた状態にすることで、足首が安定し、靴の中で足が前にズレるのを防ぎます。
この時、荷重をかけた状態では、足部が広がった状態になるため、荷重をかけない状態(非荷重)で紐を締め上げていくことが重要です。

また紐やベルトを締めていく際には、下から順に「キツイかな」と思う程度で縛っていくことでしっかり締めあげられた状態になります。特にアーチを形成する筋肉が多く存在する部分と一致する3~5番目のシューホール(紐を通す穴)の部分はよく締めていきましょう。筋を圧迫することで筋出力が向上し、アーチの機能がより高まります。
足首に近い紐は足関節を前方から靴へ固定する役割もあるため、神経圧迫が起こらない程度にしっかりと締めていきます。
また「靴の履き方」と「中敷の調整方法」を弊社のYouTubeチャンネルでも解説してますので併せて見てください!

【靴の履き方】
【中敷の調整方法】
4.さらに効果を上げるポイント
ポイント①「外から内」に向けて紐を通す
「内から外」に向けて紐を通すよりも、「外から内」に向けて紐を通すことで、紐が緩みにくく、なおかつ紐が足部と靴を密着させてくれます。
この紐の通し方を「オーバーラップ」といいます。
全てのシューレースホールで行うことが理想ですが、難しい場面ではまずは1番上だけでも下記の図のような通し方にすることで足部を靴へ密着させてくれます。

ポイント②紐が捻れた状態を作らない
靴の紐を締めていると段々と捻れていく経験をしたことはありませんか?これは紐の形状も影響していますが、シューホールの形状と紐の形状があっていないこともあります。ですがすぐに紐を交換することが難しいこともあると思います。
そのため、まずは捻れない状態にすることで、紐の接地面積を広くし面で抑えることができます。捻れた状態で強く締めると違和感につながることもあるため注意が必要です。
4. 中敷での調整方法
今履いてる靴が少し大きいけれど、今すぐ買い変えるのは難しい場面も多いかと思います。
そんな時に100円ショップでも変える中敷で微調整することでフィット感が増したり、内寸が詰まることで前滑りを防止できることがあります。
※大きすぎる靴は中敷を足しても調整が難しいため買い替えをお勧めします。サイズの見方は前回の記事をご覧ください。https://1post.jp/8383
今入っている中敷の形状を確認する
入っている中敷がフラット形状かカップ形状かで中敷の選択が変わります。
- フラット形状であれば、カップ形状を選択
- カップ形状であれば、フラット形状を選択
そして入れる順番としては下からフラット形状⇨カップ形状の順に入れます。
こうすることで内寸がつまり、さらにカップ形状で踵骨のホールド効果が得られます。
注意点としては、カップ形状にさらにカップ形状を重ねてしまうと、ヒールカウンターから踵骨が離れてしまうため注意が必要です。

このように微調整で中敷を使うことも有効なため、いくつか持ち合わせておくことで臨床の現場でも使いやすいかと思います。
5. まとめ
歩行アライメントの異常に対するアプローチとして、身体機能だけでなく、唯一の接地点である「靴」の環境を整える視点は臨床上極めて重要です。どれだけ優れた治療を行っても、靴の中で足が前滑りしていれば、歩行効率は低下し代償動作を招きます。
明日からの臨床では
- ①「3STEPの正しい靴の履き方」を実践
- ②「市販の中敷の重ね履き」による簡易フィッティング
を実践してみましょう。足元からの即時的な歩容変化は、患者様のモチベーションを高める強力な介入手段となります。セラピストの皆さんの臨床の幅を広げるキッカケになれば幸いです。
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講師:弊社代表 理学療法士 菊地 耕
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私たちリハラボBayWalkinhgは横浜市青葉区・都筑区を拠点に、訪問看護ステーション、リハビリ特化型デイサービスを運営しています。また自費サービスとして理学療法士による専門的な靴フィッティングとインソール作製、徒手療法を用いた整体を提供しています。
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