自宅復帰と排泄自立
ー 理学療法士になったキッカケを教えてください。
岩田先生 高校生の頃、サッカーの練習中に腰を怪我(腰椎分離症)してしまい、初めて理学療法を受けました。
その時、担当していただいた理学療法士の方は怪我に対するアドバイスだけでなく、大切な大会を間近に控え、出場できるかどうか不安だった私の「心」のケアまでしていただきました。
それまで、進路については深く考えたことはありませんでしたが、その理学療法士の方の影響を受けて、やりがいがありそうだなと感じ、決めました。
ただ入学するまで、理学療法士のことをスポーツトレーナーと思い込んでいましたし、養成校時代も、授業中は、ほとんど寝ている不真面目な学生生活を送っていました。
反面、臨床実習はすごく楽しかったのを覚えています。
脳卒中の患者さんが徐々に歩けるようになっていく姿に感動して、就職も中枢疾患を診れる病院に決めました。
ー 病院に勤めながら、大学院への進学を決めた理由は?
岩田先生 養成校の関連施設で働いていたので、研究をやらなければいけない環境だったのですが、学生時代は統計の授業とかも、ほとんど寝ていましたし、授業後は一番早く学校を飛び出し、バイトに行っていました。
研究もどうやってすればいいのか分かりませんでした。
リハ科の平均年齢も低く、後輩に研究指導もしなくてはいけない立場だったんですが、何も教えられないなと感じました。独学でも不安だったこともあり、1回基礎から研究を学びたいなと思い大学院進学を決めました。
上司の理解もあり、常勤として働きながら通えました。
研究内容は脳血管障害の排泄動作で、担当した患者が排泄自立をできず、施設転院となったことが悔しくて開始しました。排泄自立は、歩行自立と同じくらい重要だと考えています。
後輩の杉浦くんの報告でも、回復期退院時の移動手段が車椅子となった脳卒中患者の自宅復帰条件として、「食事」と「トイレ動作」が求められています。
青年海外協力隊への参加と3つの要請
ー そこからまた、なぜ青年海外協力隊に行こうと思ったんですか?
岩田先生 大学院も後半に差し掛かって、今後の進路を考えていた時に、三重県の理学療法士県士会で「世界の理学療法」という講演を聞きました。
そこで耳にしたのは、その当時、世界の77カ国は理学療法士が1,000人以下で、リハビリ養成校すらない国があるという事実でした。
養成校を含めて、それまで「発展途上国の医療や介護事情」について聞いたことがなかったので衝撃を受けて、実際に「自分の目で確かめてみたいと思い、挑戦をするタイミングは今しかない」と思い試験に申し込みました。
ちなみに、私はこれまで国際協力に全く関心はなく、英語も一番苦手な教科でした。
ー 青年海外協力隊での活動について教えてください。
岩田先生 青年海外協力隊の要請では大きく3つあり、「入所者に対して運動療法の提供」、「職員に対して知識・技術の伝達」「施設のイベント行事への参加」といったものでした。
海外での生活は本当に色々な発見がありましたが、「自分の弱点に気づけた」という点は大きかったなと思っています。
その当時のタイJICA事務所の次長が、青年海外協力隊の活動では、「自分の一番の弱み」
が分かると言っていました。
派遣中に、耳の不調から身体と精神のバランスが崩れてしまったときに、自分自身、それまではあまりストレスを抱えないタイプだと思っていたので、自分がまさかこんな風になるとはと思いましたし、「身体は資本」という意味が良くわかりました。
現在も、仕事でタイに行く機会が多いですが、私が懲りずに体調が悪化するタイに行く理由は、タイでの2年間の活動が、タイに貢献できた気がしていなくて、それが悔しいからです。
第五回タイスタディーツアー開催!
【日時】2019年3月25,26日(ホテル3泊)
【料金】学生35,000円、社会人40,000円 料金に含まれるもの:ホテル3泊、食事6回、移動費
【旅行協力】名鉄観光サービス(株)名古屋伏見支店
【内容】現地の私立病院、有料老人ホーム、PTクリニック、公立の障害者ホーム、公立病院、タイの家屋状況などを見学予定。
詳細は直接、岩田先生のFBにメッセージをください。
▶︎ https://www.facebook.com/kenji.iwata.9
【目次】
第一回:タイで受けた洗礼
第二回:Made with Japan
第四回:排泄関係の悩み。日本ではタブー
岩田先生オススメの本
岩田研二先生プロフィール
学歴
2010年4月 - 2012年3月 藤田保健衛生大学大学院 保健学研究科
2008年4月 - 2010年3月 日本福祉大学 通信教育部 福祉経営学部
2004年4月 - 2007年3月 藤田保健衛生大学リハビリテーション専門学校 理学療法科
職歴
2015年10月 - 現在 医療福祉科学研究所
2013年7月 - 2015年9月 Phrapradaeng Home for Disabled People(青年海外協力隊)
2007年4月 - 2013年6月 医療法人松徳会花の丘病院
受賞歴
2013年4月 第24回理学療法ジャーナル賞 奨励賞
委員
課題解決型福祉用具実用化開発支援事業「タイ国内における福祉産業の市場規模及び法制度等に関する調査」検討委員会委員