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【マインドフルネス作業療法 |  織田靖史先生】#1あるがままを受け止める

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作業療法はマインドフルネスの要素を含んでいる

 

ー 先生の活動であるマインドフルネスの研究に至った過程について教えて下さい。 

 

織田先生(以下、織田):私がマインドフルネスに出会った経緯ですが、元々は感情調節が困難な人たちのプログラムとして弁証法的行動療法(Dialectical Behavior Therapy, DBT)を実施することになり、その中にマインドフルネスがありました。

 

作業療法は,マインドフルネスの要素を含んでいるように感じました。その経験がきっかけで、マインドフルネスと作業療法の研究をやろうと思いました。

 

マインドフルネスとは

ー マインドフルネスについてのご説明をいただけますか? 

 

織田 そうですね。一言でいいますと“あるがままを受け止める”ということです。

 

そのもの、その事それ自体を受け止めるということ。そういう行為であったり、そういう姿勢や自身のあり方自体のことをマインドフルネスといいます。

 

でも,それって意外に難しいことなんですよね. 

 

くわえて、現象そのものも、姿勢も、あり方も、マインドフルネスと言いますので、幅広い概念になってしまい、理解が難しくなります。

 

単純に言うと、ありのままに受け止める、受け入れると言うことになります。私が患者さんに説明するときは「抱える」という言葉を使って伝えることが多いです。 

 

マインドレスな状態にならないこと

ー 今マインドフルネスが心を落ち着かせる技術として広まっているように感じています。実際には、どのようなプロセスで行われるのでしょうか? 

 

織田 概念としても、スキルトレーニングとしてもマインドフルネスと呼ぶ場合があります。“マインドフルな状態をマインドフルネス”という場合もありますし、そういうあり方や生き方をマインドフルネスということもあります。

 

ものすごく広い概念なんですよね。 

 

少し逆説的な言い方をすると“マインドレスな状態にならない”事です。これが正しい伝え方かどうかはわかりませんが…(笑)

 

今を心で満たしておく、訳すと「念」ということになります。念という漢字は「今」に「心」と書きますね。ですから「今を心で満たしていく」という状態で説明しています。 

 

元々の語源であるパーリ語では、マインドフルネスを「サティ」といいます。 

 

さらにサティの語源は「サラティ」という言葉なのですが、それは「思い出す」という言葉になります。 

 

今の瞬間、瞬間を感じ、思い出す。思い出し続けることで心が今にとどまり続ける、ということだと思います。 

 

(Photo:国際学会での発表)

 

マインドフルネス作業療法

ー 臨床ではどの様に活用されていますか? 

 

織田 呼吸瞑想や歩く瞑想、ボディスキャン(体を感じる瞑想)、食べる瞑想などを用いたマインドフルネスのスキルトレーニングの練習も、もちろん行いますが、基本的には作業療法ですね。

 

作業活動を実施する中で、マインドフルに気づくという事を実践しています。

 

わたしたちが開発しているもので、マインドフルネス作業療法(Mindfulness-Based Occupational Therapy:MBOT)と呼んでいます。

 

といっても、作業療法、作業には、もともとマインドフルネスの要素を含んでいます。その部分に再注目したものがMBOTだと考えています。 

 

マインドフルネスについては、先ほども言いましたが、自分の主観的な感覚を“思い出し続ける”という事ですので、単純にいうと“気付き”ということになるのでしょう。

 

自分自身が気付いていく。例えば、指で絵の具を塗っていくフィンガーペインティングでも、手の感覚や指を置いた時の紙の材質、絵の具の匂いや手を動かす感覚を感じ取っていきます。 

 

まずは、身体感覚を感じ取っていきます。そこから徐々に広がっていき、その場の空気感や描いているときに考えたこと、感情ありのままに感じ取って行きます。 

 

ー それは、話しながら、その状態を答えてもらうということですか? 

 

織田 それは、ガイドをしています。活動を実施していく中で、「自分の中に立ち現われてくるものを感じながらやっていく」というようにですね。 

 

マインドフルネス作業療法を行うことによる患者さんの変化

 

ー 実際に続けていくと、患者さんはどの様に変わりますか? 

 

織田 わたしたちの研究の結果が星和書店の精神科治療学に掲載されています(織田靖史,京極真,西岡由江,宮崎洋一:「感情調節困難患者がマインドフルネス作業療法(MBOT)を実施した際の内的体験の解明,精神科治療学32(1):129-137,2017」.

 

MBOTを臨床で実施するときには、始めに導入期の不安が出現します。それでも続けていると、集中する瞬間を経験できます。

 

その時には、頭がスッキリするようですね。でも、なかなかその感覚が継続することは難しくて、集中をそぐような身体感覚を体験したりするのです。

 

そのような感じで、揺れ動きながら次のフェーズに入っていきます。次に治療の効果が出現しだします。 

 

例えば「少し痛みが減ったよ」や「なんかいい事がありました」というポジティブな要素と、ちょっとフラッシュバックが起きたりというようなネガティブな要素があったとします。

 

そのポジティブとネガティブの間を行ったり来たりすることを経験しながら、共に過ごす仲間の存在を通して、最終的には自分の命を感じ「生きている」という感覚を感じることにつながることが多いようです。 

 

例えば「今、自分はここに生きている」みたいな感じで,自分の存在を感じることになります。

 

または、そういうともに取り組む仲間と繋がり、自分自身の「気づき」をそのまま感じ、抱えることができるようになります。そうなると、揺り返しが起こります。

 

例えば、自分の存在自体を揺るがす様な過去のトラウマが出現したり、自分の生き方を縛るような思考にがんじがらめになることもあります。

 

そんな揺れ動きの中で、今生きているということに気付き、それをただ引き受け、抱える中で、新しい生き方が選択されていくのではないかと考えています。 

 

今を生きる

ー それが今を感じるという事なんですね。 

 

織田 そうです。だから未来や過去ではなく、今を生きる事ですね。今を生きる事の積み重ねです。

 

そして、そのためには他のひととのつながりというものが、自分の中の体験として支えになっていることを忘れてはならないでしょう。

 

いろいろな形のかかわりがあるとは思いますが、とにかく自分が受け入れられると思える場で共に生きる仲間がいること。そんな場を共に作っていくこと。それでしょうか。

 

わたしたちのグループでも「ここに来るだけで、なんかリラックスできます」「ホッとして、落ち着きます」「ここならば言えるんですよね」という感想を述べられる方が多いですね。 

 

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織田靖史先生 プロフィール 

作業療法士,博士(保健学) 玉野総合医療専門学校 作業療法学科

吉備国際大学保健福祉研究所 準研究員

(一社)日本作業療法士協会教育部 重点課題研修班 中四国エリア エリア長

精神障害者Futsal team "CitRungs Tossa" 監督

日本ソーシャルフットボール協会(JSFA) 地域推進委員(高知県) 

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