イギリスの大学院で学ぶ理学療法士【有家 尚志先生 #1 】

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海外の大学院で学ぼうと思ったきっかけ

有家先生 私が海外の大学院で学ぼうと思った理由は後付けのものばかりで、根底には単純に海外に行きたいという気持ちが強かったのだと思います。小さいころから映画が好きで漫然と海外に憧れの気持ちがありました。映画の「ターミネーター2」をみて「いつかはハリウッドへ」と勝手に思っていました。

 

 養成校卒業後、初めての職場では先輩方の指導により少しずつ業務に慣れることができました。ただ、臨床経験が無い分、自分の行うことに対する根拠を外的なものに求め、教科書や論文、先輩の経験などをいつも参考にしていました。「教科書や論文に対しては批判的吟味をしなさい」と養成校で習っていたのですが、実際どのようにするのか詳細を知らないまま卒業していました。

 

自分なりに「一つの情報を鵜呑みにはしないこと」という解釈をして、英語の論文や教科書を訳しながら読むようにしてみました。それでも「観察研究」と「システマティックレビュー」の違いもよくわからずにひたすら書いてあることの「結論」を読んでいました。ただ、研究デザインについては少しずつ理解を深めていっても、読んだ内容をどのように臨床に活かしていくかについては毎日悩んでいました。

 

 また、一年目の終わり頃に、アメリカでPTとして臨床をされている方の「前庭機能低下に対する理学療法」の講義を聞かせていただく機会があり、衝撃を受けました。その中でも救急外来でトリアージなどの役割を担いながら働く理学療法士の話に興味を持ちました。日本でも救急外来での役割をもつ理学療法士がいる病院があると聞き、調べたところ、講習会で聞いたのとは違う役割でした。

 

そこから、海外における理学療法の情報を漫然と集め始めました。医師からの処方を受けずに直接理学療法を受けることのできるダイレクトアクセスや鑑別診断によるトリアージの概念、前庭機能低下に対する理学療法、理学療法士による投薬、注射など、日本には無い仕組みや教育があると知り、興味を惹かれました。そしてその仕組み作りを支える土台として、多くの研究結果の積み重ねがあることを知りました。

 

 これらのことから、①どのように情報を選択して臨床に応用していくのか学びたい、②日本にはない仕組みを知り、良いところは日本に持ってきたいという2点を達成したいと考えるようになりした。

 

そのためには大学などで体系的に学んで、その仕組みのある国で働き、日本に帰国後、教員となって養成校の学生に情報共有していくことが有効だと思いました。

 

具体的な手段は、海外の修士課程でEvidence based practiceや日本の理学療法教育で習わないことを学び、授業を通して理学療法が提供できる英語力を身につけることが効率的だと感じました。さらに大学院留学を支援する奨学金制度を私の卒業校が提供していると聞き、海外で働くためのスキルアップと、それに必要な資金の準備が上手く噛み合い、海外の大学院という選択肢が現実となりました。

 

次のページ>>カナダ、オーストラリアではなくイギリスの大学院に進んだわけ
 

【目次】

第一回:イギリスの大学院で学ぶ理学療法士

第二回:イギリス留学までの手続き・語学学習

第三回:イギリスにおける理学療法士免許の取得方法

 

有家尚志先生プロフィール

経歴・略歴

2012年3月国際医療福祉大学福岡保健医療学部理学療法学科 卒業

2012年4月医療法人社団シマダ 嶋田病院 入職

2014年2月退職

2014年12月株式会社アールワイ デイサービスセンターゆずの木 入職

2015年7月退職

2015年9月Coventry university, MSc Advancing physiotherapy practice 入学

2016年11月修了

イギリスの大学院で学ぶ理学療法士【有家 尚志先生 #1 】

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