最終回:リハビリテーションの概念改革【日本理学療法士協会 会長|理学療法士 半田一登先生】

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前回からの続き

「リハビリテーション」はなぜカタカナなのか

ー 個人的に、認定理学療法士必須研修での半田会長のお話で、欧米と日本の身体と心に関する理解の違いについての話が、非常に興味深かったです。

半田会長:これを象徴としているのが、日本で臓器移植が広がらない理由にあるのですが、今でも心臓移植を海外で受けるための募金活動を日本でやっているのを見かけます。

 

手術手技でも、知識でも日本が世界に劣っているということはないはずなのになぜでしょう。それは、臓器提供者がいないということです。

 

なぜ臓器提供者がいないのか、と考えると、そこには日本人の感性が関係していると思っています。自分たちのご両親どちらかが、まだ生きている状態で、でも意識が戻らない。臓器提供をするというのは、この状態から命を絶つという選択をするということです。

 

この選択において、欧米哲学では考える力を失った身体というのは、モノとして扱われる傾向が強く、臓器提供という選択をすることが多くあります。一方日本では、そういう感性ではありません。

 

つまり、異なった感性・文化の国同士が行うリハビリテーションが同じ概念・定義でいいのでしょうか?という話を、必須研修会ですることがあります。

 

日本人というのは特に形式・形重視の面があります。スポーツでも一時期、柔道で活躍できなくなった一つの要因として、柔道の“形”にこだわりすぎた点が関係していると言われています。

 

リハビリテーションにおいても、同じことが言えます。その形にこだわる民族性というのを理解した上で、患者さんの対応に当たるべきなのです。

 

しかし、日本におけるリハビリテーションは未だ異質です。なぜなら、日本の病院内にある各診療科は全て内科、外科のように日本語に置き換えられています。一方リハビリテーションは未だカタカナのままです。つまり、欧米哲学を日本式に置き換えられていないということです。

 

障害を負えど、権利は失わず

半田会長:学校教育では、リハビリテーションを「全人的復権」という言葉で教えることが多いようです。世の中に、「全人間的評価」なんてものは存在しません。

 

それにもかかわらず、障害を持った人に対して、“全人間的”という言葉を使うのはおかしなことだと思います。もう一つは、「復権」という言葉です。

 

復権というのであれば、失った権限を新たに取り戻すということです。脳卒中や骨折をした患者さんが「復権」とはどういうことなのか。一体何の「権限」を失ったのか。障害を持たれた方は、障害はあれど「権限」を失ったわけではないはずです。

 

また、この考え方を辿るとキリスト教の“復活思想”から来ているのではと思います。欧米のリハビリテーションは非常に宗教的で、キリストの考えを多く含んでいると感じます。

 

その考えがそのまま日本に持ち込まれているため、どこかで歪みが生じています。この点に関して、カリキュラムの変更を考えています。

 

養成校の教育で、まず初めに習うものとして「リハビリテーション概論」というものがあります。WCPTで定めている理学療法とは、6つあり、ヘルスケア、プリベンション、トリートメント、インターベーション、ハビリテーション、リハビリテーションとなっています。

 

つまり、リハビリテーションは理学療法の一部であるということです。それをあたかも、リハビリテーションの一部が理学療法なのだと思わせる。私は政策的意図があると感じざるを得ません。本来は、「リハビリテーション概論」ではなく「理学療法概論」をまず先に行うべきなのです。

 

まずはその参考書を、協会が主導となって作成していこうと考えています。最初の方でも話しましたが、我々はリハビリの専門家ではないのです。あくまでも、理学療法の専門家であり、理学療法士なのです。

 

まずは、若い人に理学療法士として自信を持ってもらい、胸を張って「私は理学療法士です」と、周りに広めてもらえるようになってほしいと願っています。

 

ー完ー

 

【目次】

第一回:PT養成校に入学するに至った不純な動機

第二回:聖域なき構造改革

第三回:理学療法士になって良かったとつくづく思う

第四回:世界の中心で理学療法と叫ぶ

第五回:開業権の話をしよう

第六回:PTが介護士になれば介護士不足は解消する?

第七回:競争社会を作る

第八回:理学療法士ライセンスの希少性

第九回:会員を守るために“戦える集団”をつくる

最終回:リハビリテーションの概念改革

 

半田一登会長のプロフィール

1971年、九州リハビリテーション大学校卒業 後、労働福祉事業団(現・独立行政法人労働者健康福祉機構)九州労災病院に入職。

1987年、社団法人日本理学療法士協会理事に就任し、2007 年より同協会会長を務める。  

日本健康会議 実行委員、チーム医療推進協議会 代表、一般財団法人訪問リハビリテーション振興財団 理事長 等 

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