令和3年度介護報酬改定の主な事項については厚生労働省より具体的な内容の通知がなされ、Q&A等通達が活発となっているところである。今回はリハビリテーション・個別機能訓練、栄養管理及び口腔管理の実施に関する考え方について再度振り返っていきたい。
【本日の目次】
① リハビリテーション・機能訓練、栄養管理及び口腔管理の一体的な実施の考え方
② リハビリテーションマネジメントの基本的な考え方
リハビリテーション・機能訓練、栄養管理及び口腔管理の一体的な実施の考え方
一体的なサービスの提供にあたっては、以下の考え方が厚労省より示されている。リハビリテーション・機能訓練と栄養管理の連携においては、筋力・持久力の向上、活動量に応じた適切な栄養摂取量の調整、低栄養の予防・改善、食欲の増進等が期待される。
栄養管理と口腔管理の連携においては、適切な食事形態・摂取方法の提供、食事摂取量の維持・改善、経口摂取の維持等が期待される。口腔管理とリハビリテーション・機能訓練の連携においては、摂食・嚥下機能の維持・改善、口腔衛生や全身管理による誤嚥性肺炎の予防等が期待される。
このように、リハビリテーション・機能訓練、栄養管理及び口腔管理の取組は一体的に運用されることで例えば、
・ リハビリテーション・個別機能訓練の負荷又は活動量に応じて、必要なエネルギー量や栄養素を調整することによる筋力・持久力の向上及びADLの維持・改善
・ 医師、歯科医師等の多職種の連携による摂食・嚥下機能の評価により、食事形態・摂取方法の適切な管理、経口摂取の維持等が可能となることによる誤嚥性肺炎の予防及び摂食・嚥下障害の改善
など、効果的な自立支援・重度化予防につながることが期待される。このため自立支援・重度化防止のための効果的なケアを提供する観点から、医師、歯科医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、管理栄養士、歯科衛生士等の多職種による総合的なリハビリテーション・機能訓練、栄養管理及び口腔管理が実施されることが望ましい。
リハビリテーションマネジメントの基本的な考え方
リハビリテーションマネジメントの考え方についても以下の通り記載された。
⑴ リハビリテーションの目的について
生活機能の低下した利用者に対するリハビリテーションは、単に運動機能や認知機能といった心身機能の改善だけを目指すのではなく、
利用者が有する能力を最大限に発揮できるよう、「心身機能」「活動」「参加」のそれぞれの要素にバランスよく働きかけていくこと、
また、これによって日常生活の活動を高め、家庭や社会への参加を可能とすることを目的とするものである。
⑵ リハビリテーションマネジメントの運用に当たって
リハビリテーションマネジメントは、高齢者の尊厳ある自己実現を目指すという観点に立ち、利用者の生活機能の向上を実現するため、介護保険サービスを担う専門職やその家族等が協働して、継続的な「サービスの質の管理」を通じて、適切なリハビリテーションを提供し、もって利用者の要介護状態又は要支援状態の改善や悪化の防止に資するものである。
利用者に対して漫然とリハビリテーションの提供を行うことがないように、利用者毎に、解決すべき課題の把握(アセスメント)を適切に行い、改善に係る目標を設定し、計画を作成した上で、必要な時期に必要な期間を定めてリハビリテーションの提供を行うことが重要である。
症状緩和のための取組(いわゆる理学療法として行うマッサージ)のみを漫然と行う場合はその必要性を見直すこと。
また、リハビリテーションは、理学療法士、作業療法士、又は言語聴覚士だけが提供するものではなく、医師、歯科医師、看護職員、介護職員、管理栄養士、歯科衛生士、支援相談員等様々な専門職が協働し、また利用者の家族にも役割を担っていただいて提供されるべきものである。
特に日常生活上の生活行為への働きかけである介護サービスは、リハビリテーションの視点から提供されるべきものであるとの認識が重要である。
リハビリテーションを提供する際には、利用者のニーズを踏まえ、利用者本人による選択を基本とし、利用者やその家族にサービス内容について文書を用いてわかりやすく説明し、その同意を得なければならない。
利用者やその家族の理解を深め、協働作業が十分になされるために、リハビリテーション、生活不活発病(廃用症候群)や生活習慣病等についての啓発を行うことも重要である。
⑶ 継続的なサービスの質の向上に向けて
施設サービスにおいて提供されるリハビリテーションは、施設退所後の居宅における利用者の生活やその場において提供されるリハビリテーションを考慮した上で、利用者の在宅復帰に資するものである必要があり、施設入所中又はその退所後に居宅において利用者に提供されるリハビリテーションが一貫した考え方に基づき提供されるよう努めなければならない。
そのためには施設入所中も、常に在宅復帰を想定してリハビリテーションを提供していくことが基本である。
また、居宅サービス(訪問・通所リハビリテーション)におけるリハビリテーションマネジメントにあっては、訪問介護員等他の居宅サービス事業所の担当者に対する情報提供等を行うなど、利用者のよりよい在宅生活を支援するものとなるよう配慮することも必要である。
全体のケアマネジメントとリハビリテーションマネジメントとの両者におけるアセスメントや計画書については、基本的考え方、表現等が統一されていることが望まれる。
さらに、利用者の生活機能の改善状況は継続的に把握(モニタリング)し、常に適切なリハビリテーションの提供を行わなければならない。
リハビリテーションマネジメント体制については、生活機能の維持、改善の観点から評価し、継続的なサービスの質の向上へと繋げることが必要である。
以上が
【リハビリテーション・個別機能訓練、栄養管理及び口腔管理の実施に関する基本的な考え方】として通達された内容となる。令和3年度介護報酬改定案として、解釈を続けてきたところの方針の総まとめに近い内容であり、介護サービスに関わるセラピストにとって、大変に大事な内容といえる。
特に、
【リハビリテーションは、PT,OT,STのみによって提供されるものでない】
【介護サービス自体がリハビリテーションの視点から提供されるべき】
【サービスの質全体の管理】
【症状緩和のための漫然としたリハビリテーションはやめるべき】
上記4点は非常に強いメッセージである。介護サービスに関わるセラピストは、【サービスの質全体を管理し、協働してリハビリテーションが提供できる】ために何をするか、改めて考えねばならない。
【目次】
第九回:令和3年度介護報酬改定案(通所リハビリテーション1)
第十回:令和3年度介護報酬改定案(通所リハビリテーション2)
第十二回:令和3年度介護報酬改定案(通所リハビリテーション4)