感情とは
対極の感情で揺れ動くアンビバレンスを語る前に、まず感情について整理します。感情とは急速に起こり、短い時間で終わるものと定義されています。一方長期的に続くものを気分と呼んでいます。感情は思考や意思決定を行う機能を司っており、認知や行動についても影響を及ぼします。例えばポジティヴな感情でいる時には、ポジティヴな出来事を記憶しやすくなります※1。
そのような前提を踏まえて、アンビバレンスについて深めていきます。
※1 Bower,G.H.が提唱した『気分一致効果』と呼ばれています。
アンビバレンス
精神科領域で出てくる言葉で両価性とも言います。人間は様々な感情を経験しますが、愛憎感情のような2つの対立した感情が同じ時期に存在する時にアンビバレンスな状態だと言います。
例えば『憎いけど愛している』とか、『好きでもあるし嫌いでもある』、というような感情のことです。形容詞形の『アンビバレント』は某アイドルグループの楽曲タイトルにも使用されていて、一般にも広まりつつある心理学用語になっています。
アンビバレンスの語源はドイツ語の『ambivalenz(アンビヴァレンツ)』に由来しています。意味は「両面価値」や「両価性」、または「両価感情」のように訳されています。また精神疾患の代表格ともいえる、統合失調症にも関係しています。
スイスの精神医学者Bleuler E(ブロイラー)が統合失調症の基本症状を、
・連合弛緩(loosening of association)
・感情鈍麻(flattening of affect)
・自閉(autism)
・両価性(ambivalence アンビバレンス)
という『4つのA』と定義しました。統合失調症におけるアンビバレンスとは、相反する感情が対立したままで決定不能に陥るという特徴のことを指しています。