令和6年度介護報酬改定に対する全国リハビリテーション医療関連団体協議会の重点要望項目​まとめ|全文文字起こし

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2日第226回社会保障審議会介護給付費分科会が開催され、全国リハビリテーション医療関連団体協議会ほかPTOTST3協会が令和6年度介護報酬改定における要望を伝え、ヒアリングが行われた。今回は全国リハビリテーション医療関連団体協議会の当日の要望内容を全文文字起こしするとともに、要望内容をまとめた。特に注目すべきは、以下の7つの重点要望項目。

リハビリテーション専門職の処遇改善

20年間で大きな給与の変化がないリハビリテーション専門職に対し、給与水準の引き上げが求められています。これは人材の流出を防ぎ、リハビリテーションの質を維持するための重要なステップです。

通所リハビリテーション費における運営基準の見直し

現行の人員基準に対する見直し要望があります。特に、リハビリテーション専門職が多く配置されている場合、生活の質が向上するとされています。

退院・退所前カンファレンスへの通リハ・訪リハのリハ専門職参加の評価

通所リハビリテーション及び訪問リハビリテーションのリハビリテーション専門職が退院・退所前カンファレンスに参加することの評価が求められています。

活動と参加の状況を継続的に情報共有できる体制の整備

高齢者の日常生活の自立度を高めるためには、リハビリテーションの必要性を継続的に評価できる体制が必要です。

訪問リハの研修修了等期間の延長と退院退所直後の未実施減算除外

訪問リハビリテーションにおいて、研修修了期限の延長と、退院・退所直後の未実施減算の除外が求められています。

生活機能向上連携加算算定拡大への取組み

生活機能向上連携加算の算定率が低いため、その取り組みを拡大することが求められています。

共生型サービスの推進に向けた自立訓練開設基準の緩和

自立訓練事業所が少なく、その数も減少しているため、自立訓練の提供についての基準緩和が求められています。

まとめ

これらの要望項目は、高齢者社会においてリハビリテーションが果たすべき役割と、それを支える専門職の処遇改善に焦点を当てています。今後の介護報酬改定において、これらの要望がどのように反映されるのかが注目されます。

*他3団体要望内容は追って報告する。

▶︎https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_35427.html

当日の要望内容を全文文字起こし

全国リハビリテーション医療関連団体協議会の近道と申します。本日はこのような貴重な機会を設けいただきまして感謝申し上げます。当協議会は資料に掲載されている9団体で構成されており、共同要望としてご説明させていただきます。各項目に入る前に、当協議会が定めた同時改定におけるリハビリテーションの基本的な考え方についてご説明申し上げます。我が国では少子化による人口減少に加え、高齢者が急激に増加するいわゆる2040年問題が重要課題となっており特に超高齢社会と呼ばれる85歳以上の人口が増加しています。高齢者は複数の疾患や障害を抱えているためリハビリテーションの必要性が高く、実際に入院での各疾患別リハビリテーション実施までの75歳以上割合は約50〜80%に達しております。様々な疾病外傷などによる高齢者の心身機能活動低下を予防するため、急性期から生活期までのシームレスかつ継続的なリハビリテーション実施は重要でありそれが阻害されることがあってはいけません。

一方で、一部の医療機関ではリハビリテーション実施体制が十分と言えない状況があります。加えて回復期リハビリテーション病棟協会の全国調査によると、2022年において回復期リハビリテーション病棟の入棟患者において自宅復帰後にリハビリテーション実施を予定していない方の割合は56%であり、近年増加傾向にあります。また生活期患者に対する急性増悪の対応については、医療・介護保険においていくつかの制度が設けられていますが、いずれもADL評価に基づくものでありリハビリテーション非実施者に対する適応は困難といえます。

リハビリテーションの提供体制をさらに強化するため、急性期から生活期にわたってすべての患者、障害者、要介護者に対してリハビリテーションの必要性を継続的に評価できる体制を医療・介護・福祉と合わせて構築する必要があると考えます。まずは重点要望項目についてご説明申し上げます。

初めにリハビリテーション専門職の処遇改善についてです。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の所定内給与額は20年間で大きな変化はなく、他職種と比較して差が開いております。処遇の低下は、人材の流出を招きリハビリテーションの提供体制及び質が低下することにつながりかねません。そこで政府と産業界で推進された4%の給与水準引き上げと同様にリハビリテーション専門職の給与水準の引き上げを促進すること、さらには公定価格引き上げによる増収が直接給与に反映するような体系整備を要望します。

続いて通所リハビリテーション費における運営基準の見直しです。現行の人員基準は資料に掲載されている基準Ⅲの内容となっていますが、例えばリハビリテーション専門職を多く配置している場合、IADLを評価するFAI、生活空間の広がりを評価するLSAにおいてで有意に改善していると示されています。またリハビリテーションマネジメントの効果は既に周知の通りですが、通所リハビリテーションに併給して訪問リハビリテーションを提供している場合は、リハビリテーションマネジメントの加算の届け出割合が高い傾向にあり、生活の質を向上するための取り組みが多くなされています。また現行では大規模になるにつれて基本報酬が減額されていますが、大規模ほど多くのリハ専門職が配置されていること、さらにはリハビリテーションマネジメント加算の算定を多くされていることから、規模の区分を廃止し、資料にあるような職員配置、訪問リハビリテーションの提供実績、LIFEの利用活用などを組み合わせた運営基準を導入することを要望します。

医療機関や介護施設は退院対象前カンファレンスを開催しますが、現行ではそれに通所リハビリテーション及び訪問リハビリテーションのリハビリテーション専門職は参加しても報酬上の評価はありません。医療介護連携を一層推進することで円滑な在宅生活への移行および早期の介入が可能となり、退院退所前カンファレンスに通所リハビリテーションおよび訪問リハビリテーション事業者が参加することが望ましいと言えるため、例えば退院時共同指導加算のような評価を要望します。

続いて活動と参加の状況を継続的に情報共有できる体制の整備についてです。平成22年11月30日に開催された社会保障審議会介護保険部会介護保険制度の見直しに関する意見において、リハビリテーションについては高齢者の心身の機能が低下した時に、まずリハビリテーションの適切な提供によってその機能や日常生活における様々な活動の自立度をより高めるというリハビリテーション前置の考え方に立って提供すべきであると示されました。在宅の高齢者がその有する能力に応じた日常生活を継続するためにはADL,IADLの変化を捉えリハビリテーションが提供されることが重要となります。しかし、要介護認定の有効期間は最大4年であり認定調査でリハビリテーションの必要性を適時把握することは困難といえます。そのため、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションを終了し、他のサービスに移行した場合一定期間が経過した後に介護支援専門員または地域包括支援センターが当初利用していた通所リハビリテーション、訪問リハビリテーション事業者と活動と参加の状況について情報を共有する体制を構築することで適時適切なタイミングでリハビリテーションの必要性を評価できると考えます。

続いて訪問リハビリテーションを受ける診療未実施減算についてです。当該加算の算定率は減少傾向にありますが、依然として減算の状態で訪問リハビリテーションを提供している事業所が一定数おります。その理由で最も多いのは、利用者都合であることから、減算をゼロにすることは困難といえます。更に適切な研修として定められている日本医師会の「かかりつけ医機能研修」受講にあたっては、医師のさまざまな問題から受講が困難なケースが考えられます。そのため研修終了期限をさらに延長することに加えて、適切な研修に他の団体の研修も含めることで、修了者の増加につながると考えます。退院、退所直後は事業所医師の診察までに時間を要することから、減算を避けるために利用開始を遅くする場合が散見されます。退院退所直後においては、退院退所先の医師の指示に基づき提供することで診療未実施減算の対象外とすることを要望します。

続いて生活機能向上連携加算に関してです。前回改定においてICTの活用が認められ加算区分が10種類になりましたが、依然として算定率は低調です。その背景には派遣側に報酬がつかないことが大きく影響しています。生活機能向上連携加算の要件に資する取り組みは、地域で支える体制として重要な観点であることから当該加算の取り組みを行っている通所リハビリテーション及び訪問リハビリテーションに関わる加算要件となる体制を要望します。また派遣可能な期間を増やすために200床以上の保険医療機関、認知症疾患医療センターを追加してはいかがでしょうか。

続いて共生型サービスの推進に向けた医療介護保険施設などにおける自立訓練の提供についてです。これは障害福祉の分野になりますけれども、自立訓練事業所は全国で403件と非常に少ない上に年々減少しています。自立訓練事業所の課題として利用者の確保が難しいことをあげている場合が多く、その背景には認知度の低さ実施事業所数の少なさ、利用に期間があることが挙げられます。障害者は健常者に比べて身体機能や生活能力が低下しやすく自立訓練のサービス提供がなされないことで、機能低下が見過ごされている恐れがあります。そこで病院、診療所および通所リハビリテーション事業所において自立訓練による訓練給付をみなし指定事業所として提供可能とすることを要望します。みなし指定とした場合、対象者層が変化することで技術や知識を始めとした支援全般に関する教育育成の実施、異なる制度による請求方法の変更などによる事務負担の増大が生じます。その為料金単価は最低でも基本報酬の最低単価以上に合わせた金額とすることを要望します。

重点要望項目は以上となります。続いて、重点要望項目外の共同提案項目についてご説明いたします。まずはリハビリテーションマネジメント加算の見直しについてです。リハビリテーションマネジメント加算の効果は周知の通りですが前回改定では単位数が減算されました。これにより算定に消極的なケースが散見されており、サービスの質の管理が不十分な状況と言わざるを得ません。当該加算の算定に向けた取り組みより活動参加に資する取り組みが推進されることは明白であり、さらなる増額を要望します。またLIFEは当該加算にとどまるものでないことから、要件を見直しさらなるサービスの質向上につながりを、例えば、定期的な居宅訪問の必須か地域診断や地域住民との関わり栄養改善や口腔機能向上に向けたアセスメント実績などを追加してはいかがでしょうか。

次に訪問リハビリテーションにおいて理学療法士、作業療法士言語聴覚士の3職種を配置している施設及び事業所に体制加算を新設することを提案いたします。3職種を配置している訪問リハビリテーション事業所は約3割と少なく特に介護老人保健施設において低調です。3職種を配置すると各加算の取得率が高いことから、利用者にとってより良いサービスを提供できるんじゃないかと考えています。

続きまして生活機能向上連携加算の取り組みの推進に向けた二つのご提案です。一つ目は利用者の身体機能、生活機能の向上のため生活機能向上連携加算の施設要件に看護小規模多機能型居宅介護事業所を追加することを希望いたします。二つ目は連携加算を推進する観点から、例えば個別機能訓練加算を算定している利用者の加算(Ⅱ)の減算を削除。新興感染症によって直接訪問が困難なときにICTを活用した個別訓練計画の共同作成を加算(Ⅱ)の要件に含めること、連携を提供する側の評価、法人外事業所と連携した場合の評価、提供施設側の報酬施設基準の専従条件の緩和などの見直しを要望します。

最後になりますけれども居宅系サービスにおける医療ニーズへの対応の推進に向けて介護老人福祉施設で医学的管理の下に、リハビリテーションサービスを提供できる体制を整えた場合など、在宅医療を推進する観点での提供体制のあり方を検討し評価いただくことを要望します。また特定施設におきましては、医療ニーズを調査した上で個別機能訓練加算の評価の見直しを行うことを要望します。そして短期入所生活介護利用後の状態悪化を予防する観点から機能訓練体制加算、個別機能訓練加算の評価の見直しや基準緩和を行うなどの評価の見直しを要望します。

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