ポイント
・認定理学療法士(以下,認定PT)と専門理学療法士(専門PT)の「認知」「関心」「取得志望」は学生全体の3〜4割程度であった.
・修士と博士に関して,学生全体の「認知」は6割以上であるが,「関心」と「取得志望」は2割以下と低かった.
本研究成果は2024年2月15日,「日本リハビリテーション教育学会誌」にオンライン掲載されました.
研究の背景および研究内容(第1回目の記事同様のため省略)
結果(第2回では認定・専門理学療法士や修士・博士の必要性のみ)
資格の必要性として,認定PTでは,全体で「認知」が36.4%(1:とても知っている,2:やや知っていると回答した人数の割合),「関心」が47.3%(1:とても関心がある,2:やや関心があると回答した人数の割合),「取得志望」が40.6%(1:とてもなりたい,2:ややなりたいと回答した人数の割合)であった.学年間では,Kruskal-Wallis検定にて「認知」と「取得志望」に有意差を認め(p<0.05,p<0.05),その後のBonferroni法の多重比較にて「認知」は1年生より4年生が多く(p<0.05),「取得志望」は2年生より1年生に多かった(p<0.05)(表1).専門PTでは,全体で「認知」が34.3%,「関心」が45.2%,「取得志望」が34.3%であった.性別間では,Mann-WhitneyのU検定にて男性より女性に「認知」が多かった(p<0.05)(表2).学位の必要性として,修士では,全体で「認知」が61.9%,「関心」が18.0%,「取得志望」が12.6%であった.性別間では,Mann-WhitneyのU検定にて男性より女性では「関心」や「取得志望」が少なかった(p<0.05,p<0.01).学年間では,Kruskal-Wallis検定にて「認知」と「関心」,「取得志望」に有意差を認め(p<0.01,p<0.01,p<0.01),その後のBonferroni法の多重比較にて「認知」では1年生より3年生や4年生に多かった(p<0.05,p<0.01).また「関心」では1年生より4年生で少なく(p<0.01),「取得志望」では各学年より4年生が少なかった(1年生:p<0.01,2年生:p<0.05,3年生p<0.05)(表3).博士では,全体で「認知」が61.9%,「関心」が16.7%,「取得志望」が8.8%であった.性別間では,Mann-WhitneyのU検定にて男性より女性では「関心」や「取得志望」が少なかった(p<0.01,p<0.01).学年間では,Kruskal-Wallis検定にて「関心」と「取得志望」に有意差を認め(p<0.01,p<0.01),その後のBonferroni法の多重比較にて「関心」では1年生より4年生が少なく(p<0.01),「取得志望」では1年生や2年生より4年生で少なかった(p<0.01,p<0.01)(表4).
今後の展望
本研究では,資格である認定PTや専門PTの「取得志望」は一定数あるが,学位である修士や博士に関しての「取得志望」は少ない傾向であった.この点に関しては,実際に資格や学位の有無によるキャリア調査がないため,キャリア形成に関しては取得することの意義を見出せていない現状も背景にはあると考えるため,今後さらなる調査が必要である.
掲載誌情報
【発表雑誌】日本リハビリテーション教育学会誌
【論文名】私立大学の理学療法士養成校学生におけるキャリア意識の実態調査
【著者】稲垣郁哉1)、山口和人1)、堀本ゆかり2)
1)日本医療科学大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻
2)国際医療福祉大学大学院 医療福祉教育・管理分野
掲載URL:https://rehaac.org/pdf/nihonreha/2024_nihonriha_vol7_no1.pdf
注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 さらに研究や実験を進める必要があります。十分に配慮するようにしてください。
【目次】
第1回:PT養成校学生は特に将来の経済面に不安があり、将来の希望年収は平均年収以上であった
第2回:PT養成校学生が考える認定・専門理学療法士や修士・博士の必要性とは