ポイント
・全体での卒後進路は「病院施設」が最も多いが,性別間では,女性より男性の方が「一般企業」を考えている学生が多かった.
・興味ある専門分野は「スポーツ理学療法」が多く,次いで「運動器理学療法」であった.
・起業や兼業に興味ある学生は2〜3割程度であり,起業・兼業ともに「パーソナルジム」を選択する学生が最も多かった.
本研究成果は2024年2月15日,「日本リハビリテーション教育学会誌」にオンライン掲載されました.
研究の背景および研究内容(第1回目の記事同様のため省略)
PT養成校学生は特に将来の経済面に不安があり、将来の希望年収は平均年収以上であった
結果(第3回では卒業後の進路や興味ある専門分野,起業や兼業願望の有無とその内容のみ)
卒後進路では,全体で「病院施設」が72.0%と最も高く,次いで「まだわからない」が15.1%であった.性別間では,Fisherの正確確率検定後,調整済み残差にて女性より男性の方が「一般企業」が多かった(p<0.05)(表1).興味ある専門分野では,全体で「スポーツ理学療法」が39.7%と最も高く,次いで「運動器理学療法」が20.1%であった.性別間では,モンテカルロ法後,調整済み残差にて男性より女性の方が「神経理学療法」や「心血管理学療法」が多く,逆に女性より男性では「まだわからない」が多かった(p<0.01).学年間では,モンテカルロ法後,調整済み残差にて「運動器理学療法」では1年生は少なく,3年生に多く,「スポーツ理学療法」では3年生と4年生に少なく,1年生に多かった(p<0.01)(表2).起業願望では,全体の20.1%が「やりたい」(1:とてもやりたい,2:やややりたいと回答した人数の割合)を示しており,性別間ではMann-WhitneyのU検定にて女性より男性の方が多かった(p<0.01)(表3).起業内容では,「パーソナルジム」が全体(やりたいと回答した人数)の31.3%と最も高く,次いで「自費リハビリテーション」が16.7%,「デイサービス」が14.6%の順であった(表4).兼業願望では,全体の33.1%が「やりたい」であり,性別間および学年間に有意差はなかった(表3).兼業内容では,「パーソナルジム」が全体(やりたいと回答した人数)の30.4%と最も高く,次いで「学校訪問支援」が17.7%であった.学年間では,Fisherの正確確率検定後,調整済み残差にて「パーソナルジム」では,1年生に少なく,3年生に多かった(p<0.05)(表4).
今後の展望
本研究では,起業や兼業に興味がある学生も一定数いることは従来の学生のキャリア意識と異なる特徴であり,また特に男性では就職先として「一般企業」などの選択肢が増えてきていることなどが示唆された.今後はPTの資格を活用し,起業や兼業,一般起業に従事する人も対象に調査していく必要がある.
掲載誌情報
【発表雑誌】日本リハビリテーション教育学会誌
【論文名】私立大学の理学療法士養成校学生におけるキャリア意識の実態調査
【著者】稲垣郁哉1)、山口和人1)、堀本ゆかり2)
1)日本医療科学大学 保健医療学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻
2)国際医療福祉大学大学院 医療福祉教育・管理分野
掲載URL:https://rehaac.org/pdf/nihonreha/2024_nihonriha_vol7_no1.pdf
注)プレスリリースで紹介している論文の多くは、単純論文による最新の実験や分析等の成果報告に過ぎました。 さらに研究や実験を進める必要があります。十分に配慮するようにしてください。
【目次】
第1回:PT養成校学生は特に将来の経済面に不安があり、将来の希望年収は平均年収以上であった
第2回:PT養成校学生が考える認定・専門理学療法士や修士・博士の必要性とは