キャリアコンサルタントが徹底サポート

リハ料推定+5.4%、80-85歳入院が+6.7%で顕著増|令和6年12月「最近の医療費の動向(MEDIAS)」より

241 posts

厚生労働省が発表した「最近の医療費の動向(MEDIAS)」令和6年12月分のデータによると、リハビリテーション関連の医療費が全体の医療費増加率を上回る伸びを示しています。本記事では、医療費動向の最新データからリハビリテーション部門に特化した分析を行い、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士および医療機関経営者にとって重要なポイントを解説します。

※本記事では公開データに基づく客観的分析に加え、一部推定値を含みます。推定値については根拠を明記しています。

医療費全体の増加傾向とリハビリテーション部門の位置づけ

令和6年12月の概算医療費総額は4.2兆円(前年同月比+3.3%)と引き続き増加傾向にあります(MEDIAS令和6年12月分表紙)。特筆すべきは、リハビリテーション料の伸び率が推定+5.4%と、医療費全体の増加率を大きく上回っていることです。

【注】リハビリテーション料の伸び率(+5.4%)について: この値は、リハビリテーション料の個別項目が12月分データに明示されていないため、令和6年11月時点の実績値(+7.2%)および関連指標(筋骨格系疾患、整形外科診療所の伸び率)との相関に基づく推定値です。過去の季節変動パターンも考慮して算出しています。

診療指標の分析

  • 1日当たり医療費:前年同月比+1.7%(MEDIAS令和6年12月分 p.1)
  • 受診延日数:同+1.6%(MEDIAS令和6年12月分 p.1)

これらの基礎的な診療指標はいずれも増加しており、医療機関全体の稼働率向上を裏付けています。特にリハビリテーション部門を有する施設では、この傾向をサービス拡充の好機と捉えることができるでしょう。

リハビリテーション対象疾患の医療費動向

疾病分類別の医療費増加傾向を見ると、リハビリテーション対象となる主要疾患において以下のような伸びが確認されています:

  • 筋骨格系および結合組織の疾患: 前年同月比+2.5%(表Ⅴ-3-1 入院外医療費の対前年同月比)
  • 損傷・中毒・外因の影響: 同+2.8%(表Ⅴ-3-1 入院外医療費の対前年同月比)

特に注目すべきは、11月時点で+10.7%の高い伸び率を示していた「損傷・中毒・外因の影響」による医療費が、12月には+2.8%と大幅に鈍化している点です(11月値は前回公表資料、12月値は表Ⅴ-3-1より)。これは季節要因による外傷・転倒件数の変動が影響している可能性があり、リハビリテーション提供体制の季節調整の必要性を示唆しています。

高齢者の入院動向とリハビリテーション需要の関係

高齢者の新規入院件数は年齢層別に以下のような増加を示しています(表Ⅳ-2-3 年齢別推計入院件数(対前年同期比)より)。

年齢層別の前年同月比増加率

年齢層 前年同月比増加率
75-80歳 +6.3%
80-85歳 +6.7%
85-90歳 +0.5%
90-95歳 +3.0%
95-100歳 +4.7%
100歳以上 +4.2%

特に80-85歳の層で高い伸び率(+6.7%)が見られることは、この年齢層におけるリハビリテーションニーズの拡大を意味します。高齢者の入院増加に伴い、急性期から回復期、そして生活期にわたる切れ目のないリハビリテーション提供体制の重要性が一層高まっていると言えるでしょう。

医療機関種類別の動向とリハビリテーション提供施設への示唆

医療機関種類別の医療費増加率は以下の通りです。

  • 医科病院計: 前年同月比+3.4%(11月は+4.3%)(表3 医療機関種類別医療費より)
  • 医科診療所計: 同+1.7%(11月は+2.1%)(表3 医療機関種類別医療費より)
  • 整形外科診療所: 同+3.6%(表4-2-a 診療科別伸び率より)

注目すべきは整形外科診療所の伸び率が医科診療所全体の平均を上回っている点です。これは運動器リハビリテーションの需要増加と診療単価上昇の両面を反映していると考えられます。病院と診療所の伸び率を比較すると、病院の方が高い伸び率を示していますが、前月(11月)と比較すると両者とも伸び率がやや鈍化していることがわかります。

前月比較から見るリハビリテーション部門の動向

リハビリテーション料の伸び率を前月(11月)と比較すると、以下のような変化が確認できます。

  • 11月: +7.2%(前月MEDIAS資料より)
  • 12月: +5.4%(推定値)

【注】12月のリハビリテーション料推定値について: この推定値は、11月実績値(+7.2%)に加え、過去の季節変動パターン、および関連指標(筋骨格系疾患、整形外科診療所の伸び率)との相関関係に基づいて算出しています。具体的には、令和6年11月から12月にかけての関連項目の変動率を加重平均して推計したものです。

鈍化傾向が見られるものの、依然として全体医療費の伸び率(+3.3%)を上回る水準を維持しています。これはリハビリテーション部門が医療機関内で相対的に高い成長を続けていることを示しています。

リハビリテーション専門職に対する示唆

これらのデータから、リハビリテーション専門職(PT・OT・ST)に対して以下のような示唆が得られます。

  1. 1.高齢者リハビリテーションの専門性強化: 特に80-85歳層の入院増加に対応するため、フレイル予防や認知機能へのアプローチを含めた専門性の向上が求められています。
  2. 2.季節変動を考慮したサービス提供: 損傷・外因による医療費の季節変動を踏まえ、転倒予防プログラムなどの予防的アプローチの強化が効果的でしょう。
  3. 3.多職種連携の重要性: 医療費全体の増加傾向の中で、効率的かつ効果的なリハビリテーション提供のための多職種連携がますます重要になっています。

医療機関経営者に対する示唆

医療機関の経営者にとっては、以下のような戦略的視点が重要です。

  1. 1.リハビリテーション部門の強化: 全体の医療費増加率を上回る伸びを示しているリハビリテーション部門は、経営戦略上の重要な柱となり得ます。
  2. 2.高齢者向けサービスの拡充: 高齢者の入院増加に対応するため、回復期リハビリテーション病棟の効率的運用や、地域包括ケア病棟との連携強化が求められます。
  3. 3.次期診療報酬改定への備え: リハビリテーション関連の診療報酬項目は今後も注目される可能性が高く、戦略的な施設基準の取得や人材確保が重要です。

まとめ:これからのリハビリテーション部門に求められるもの

令和6年12月の医療費動向データからは、リハビリテーション分野の継続的な成長と、高齢者を中心とした需要の拡大が読み取れます。このトレンドを踏まえ、リハビリテーション専門職には臨床技術の向上だけでなく、効率的なサービス提供と多職種連携の強化が求められています。

また医療機関経営者にとっては、リハビリテーション部門を戦略的な成長領域として位置づけ、人材確保・育成や施設整備を計画的に進めることが重要です。さらに、今後の診療報酬改定や地域医療構想の進展を見据えた中長期的な視点も欠かせません。

リハビリテーション医療は、超高齢社会における医療・介護システムの中核を担う分野です。今回のデータが示す成長傾向を、質の高いサービス提供と持続可能な経営基盤の構築に活かしていくことが、リハビリテーション関係者に求められています。

出典・参照資料

  1. 1.厚生労働省「最近の医療費の動向(MEDIAS)」令和6年12月分
    • 表紙・概要:医療費総額4.2兆円、前年同月比+3.3%
    • p.1:1日当たり医療費+1.7%、受診延日数+1.6%
    • 表3:医療機関種類別医療費(病院+3.4%、診療所+1.7%)
    • 表4-2-a:診療科別伸び率(整形外科診療所+3.6%)
    • 表Ⅳ-2-3:年齢別推計入院件数(対前年同期比)
    • 表Ⅴ-3-1:入院外医療費の対前年同月比(筋骨格系+2.5%、損傷+2.8%)
  2. 2.厚生労働省「最近の医療費の動向(MEDIAS)」令和6年11月分
    • リハビリテーション料の伸び率+7.2%(推定値算出の基礎データとして参照)

※リハビリテーション料の伸び率(12月:推定+5.4%)については、上記資料を基に筆者が推計した値であり、今後の確定値と差異が生じる可能性があります。

▶︎https://www.mhlw.go.jp/topics/medias/month/24/12.html

リハ料推定+5.4%、80-85歳入院が+6.7%で顕著増|令和6年12月「最近の医療費の動向(MEDIAS)」より

最近読まれている記事

企業おすすめ特集

編集部オススメ記事