インタビュー174回:理学療法士(PT)井ノ原裕紀子先生 リンパ浮腫治療と保険適応外でのケア no.3

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リンパ浮腫、診療しないと...

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インタビュアー:リンパ浮腫はどのタイミングで出てくることが多いのですか?

井ノ原先生:色々な説はありますが、私の考えだと、特に近年は個人の価値観の違いによるものが大きいかも知れないと思っています。原則として「痛み」はないので、初期や軽度の場合には患者さまご本人の自覚が乏しく、エコーなどの検査をして、組織が肥厚していることやリンパ管の拡張が認められることがわかって、初めて発症を知るというケースは多いです。

 「むくんできたかな」と思っても日常生活に支障がなければあまり気にしない方も多いですし、神経質な方であれば気にして術後早々に受診するケースもありますので、「いつ頃から発症」と提示されても、厳密には信頼性としてどうなのかな?と感じます。

インタビュアー:リンパ浮腫に対する処置をしないことによる弊害はありますか?

井ノ原先生:リンパ浮腫はこれまで「命に関わらない」という理由で、まぁ言ってしまえば放置されることが多かったんです。「命が助かったんだから、それくらい我慢しなさい」的な。でも、放置すると増悪する一方で、患肢の免疫環境も悪化して感染しやすくなり、そこから蜂窩織炎を発症したりします。それをさらに放置すると、敗血症から死に至る、というケースが、今でも無視できない程度の症例数あるらしく、100%命に関わらないとは言い切れないんです。

 リンパ浮腫に悩まれる方は、サイズだけを気にする方が多いのですが、実際にはこのようなリスクをはらんでいるため、見た目だけの問題だけではないんですよ。とは言え、見た目の問題は、精神的な苦痛を招き、QOLの著しい低下に繋がります。そこに重さやだるさも加わると「もう、切り落として欲しい」とまで仰る患者さまもいらっしゃいましたから、人としての満たされた生活を営んでいただくために、QOLを尊重することは最優先にすべきだと私は考えています。

インタビュアー:これらを考えるとリンパ浮腫の患者にもリハビリは必要ですよね?

井ノ原先生:そうですね。ただ、経験から感じてきたものとして「治してもらう、良くしてもらう」という受け身の姿勢は望ましくないですね。「リンパ浮腫=リンパドレナージ(マッサージ)」というイメージは根強く、最初はリンパドレナージ(マッサージ)を「してもらう」目的で来室される方がほとんどです。けれども、実はリンパ浮腫のケアに最も重要なのは「セルフケア・セルフコントロール」なんですよ。

 リンパ浮腫は、糖尿病や肥満などの生活習慣病と同様で、一生付き合っていかなくてはならないものです。セラピストの手に頼って改善がみられたとしても、その後の維持と管理は、やはりご本人次第な訳です。つまり意識付け、動機付けにより、セラピストにしてもらう「受け身」から、「自発的」にセルフコントロールができるようになることが、患者さまにとって真の意味あるリハビリテーションとなると考えています。

患者さまの最大の不安は「わからない」こと

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井ノ原先生Her’sの方針は「卒業」即ち、患者さまの「自立」です。ケア部門の立ち上げ当初は、本当にどこにも相談できず、ケアも受けられず、泣く泣く放置せざるを得ないまま長い年月を経過された方も多く来室されていましたので、それはもう重篤な方もたくさんいらっしゃいました。そんな方に対しては、まずは繰り返し施術して状態を整えますが、次第にご自分でのセルフケアに移行できるように促していきます。

 ただでさえ情報の少ないリンパ浮腫について、患者さまの最大の不安は「わからない」ことなんですよ。どうしてこうなったのか、わからない。今、どうしていいかわからない。今後、どうなっていくのかわからない。わからないから、怖い、何かにすがりたい、誰かに頼りたい。でも、現状を把握できたり、対処法を知ったり、先行きが見えたり、わかることが増えれば安心できますよね。だから、Her’sでは初回カウンセリングで、必ずリンパ浮腫の機序やケアの必要性を解説するとともに、患者さまの抱える疑問や不安にお答えしています。そうすることで、第一段階の「わからない」の不安を減らして「自分でも出来るかも知れない」と小さな自信を感じてもらうんです。

 まずは最初の問診で得た情報(職業、家族構成、生活習慣、趣味など)をもとに、その方の尊重するべきQOLを見極めます。そうして、通室の中で交わされる何気ない会話の中に様々な希望を読み取りながら、してもいいこと、しない方が良いこと、してはならないこと、などその希望に沿った注意事項をお伝えして、セルフコントロールに向けてさらに自信を持っていただけるように方向付けしていきます。その辺りは、精神的なリハビリと言えるかもしれません。

 通室を続けられるうちに、もう私の手を離れても大丈夫かな、と思えるようになったら「卒業勧告」を行うようにしています。通室は終了しても、もちろんその後のアフターフォローは対応しますよ。メンテナンスという位置付けでご自分の判断に応じていらっしゃる方、終了とはせず通室のスパンをうんと長くする方、気になることが起こって数年ぶりにご連絡くださる方もあります。けれども、いまだに対応可能な施設は少ないので「もう来ちゃダメですか?」と不安を拭いきれない方もいらっしゃいます。そこは自費対応の強みで、お断りする理由はありませんから快くお引き受けしています。七〜八年通室を続けている方も、結構いらっしゃいます。

 セルフコントロールにあたってのキーワードは、月並みですが「無理をしない」これに尽きますね。この「無理」を自覚、把握できて、適切に対処できるようになれば、セルフコントロールは完成したと考えて良いと思っています。


  *目次
【第1回】ブラックジャックに憧れて
【第2回】保険適応外のケア
【第3回】リンパ浮腫、診療をしないと…?
【第4回】自費診療と病院との違い
【第5回】産後1ヶ月の職場復帰
【第6回】開業について、私はこう考える!

井ノ原先生も登壇し、女性医学が学べる「ウーマンズヘルスケアフォーラム2016」!

詳しくは、こちらから↓woman2016

井ノ原裕紀子先生経歴

1993年3月 神戸大学医療技術短期大学部 理学療法学科卒業
同 4月 ㈱塩野興産入社
2005年 11月 【Her's】創業
2006年12月 ㈱塩野興産退社
2007年3月 Her's・ケア部門立ち上げ
2008年4月 第3子(次女)出産
2013年1月 第1回リンパ浮腫療法士認定
2013年9月 一般社団法人WiTHs設立(代表理事)
2015年1月 一般社団法人WiTHs退社
2015年3月 がんリハビリテーション インテンシブコース修了
2015年11月 EPochアカデミック事業部部長就任

  【ようこそ!Her’sへ】
 http://hers.ko-co.jp/
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