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チリのリハビリテーション事情(働き方・対象者) Vol.3

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Vo.2は教育についてお伝えしました。

今回はセラピストの働き方、リハビリテーションの対象者についてです。

私は現在、JICAボランティアとして診療所に配属して作業療法の普及・啓発活動を目的に活動を行っています。

そこのモデルを参考に説明をしていきたいと思います。

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リハビリテーション内容

私の配属先では、以下のリハビリテーションを行っております。

・診療所での外来リハビリテーション

・訪問リハビリテーション

・障害者団体運営のリハビリ施設での外来リハビリテーション

・老人ホームでのリハビリテーション

・予防介護リハビリテーション

また、私の配属先には、市の中心の診療所以外に5つの小さい診療所があり、各職種が定期的に巡回をして地域住民へ医療サービスを行っています。

 

リハシステムは日本同様に、医者の指示の元(指示書)に評価を行い、治療を開始します。

診療所では1対1での対応が基本であり、個室で個別リハビリテーションを行うのが基本になります。

病院等では、リハビリテーション室がありますが、配属先の診療所にはないので、看護師等と時間で交代して使うことがあります。

 

リハビリテーションの対象者

対象者の特徴は、変形性膝関節症・腱鞘炎・上腕骨外側上顆炎・腰痛などの整形外科疾患を有している方が多く、

次いで脳血管障害・認知症の方が多く、合併症として、高血圧・糖尿病・心臓疾患を持ち合わせている方が多いです。

都市部に比べ田舎に行くほど、肥満の方が多く、栄養も偏っていて運動不足の方が多いです。

私の地域では、農業で生計を整えている家庭が多く、重労働を強いられています。

そのため、整形外科疾患などの方が多くなっているようです。

 

日本とチリの相違点

実際に、どのように介入しているか訪問リハビリテーションを例に説明をして行きたいと思います。

 

チリでも対象者中心の医療は日本と同じです。

例えば、脳卒中で寝たきりの対象者がいたとします。

基本は、まず介護者や家族が担当者の看護師・社会福祉士に相談をします。

次に医師、看護師が訪問し、評価を行います。

そこから必要な療養事項を挙げ、リハビリ職種・他職種と連携をして介入をしていきます。

しかし、現状は時間・車の問題等もあり、様々な職種が一度に訪問して治療、指導等を行う事も少なくありません。

私も一緒に同行して家族指導を行いましたが、時間もなく短時間での介入です。

すなわち、実践的でその場において最重要な評価と治療が必要になってきます。

また、日本の場合では、各対象者に対し、他職種と連携をして目標を立て介入をしますが、チリでは目標を立てたり、各患者に治療会議などをすることはありません。

対象者中心のチームで動いてはいますが、いちど治療が始まるとそれぞれが個人で動いており、各職種とも専門にそった介入をしています。

しかも、情報を共有する横の繋がりはなく、全て個人の判断と裁量に任されることが多いのです。

このケースの場合は、患者の関わり方は、調整役の看護師と医師の力量に委ねられます。

ここで問題なのは、たとえリハビリの強い希望が出ても週に1度訪問ができれば、良い状況です。

その理由は車の問題です。田舎では車の台数が足りず悪路も多いため、車が壊れても修理ができないことが多くあります。

金銭的理由から、ヒトはいても物理的理由で訪問ができないことが多いのです。

その為、褥瘡の処置,尿のカテーテル交換などの医療的な行為の優先順位が高い必要な順に介入がされます。

日本であれば週に1度の訪問は行えると思いますが、チリの田舎では継続的で定期的な介入が難しい状況なのです。

 

各リハビリテーションの業務内容

診療所での外来リハビリテーション

こちらでは、変形性関節症などの整形外科疾患の方が多く来られ、ADLは自立か軽介助の方で比較的に症状が軽い対象者が来られます。

痛みの緩和や自宅での自主トレーニング指導などを行います。

障害者団体運営のリハビリ施設での外来リハビリテーション

こちらには、様々な疾患の方が来ます。脳卒中・整形外科疾患・パーキンソン病・ALS・脳性麻痺の方々などが来て各対象者に合わせて治療・自主トレーニングを行い、在宅生活を支えています。

日本でいう、送迎なしのデイケア・デイサービスの形を取っています。

日本同様に施設とセラピストがいる事が障害者の方々にとってとても大切な場所になっています。

また、日本同様に情報共有の場・気分転換・社会参加の場になっており、とても重要な役割を担っています。

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訪問リハビリテーション

重症度・介護度が高い方が多く、寝たきり,車椅子生活,日常生活になんらかの介助を要す対象者が多い状況です。

優先度の高い順に、医師・看護師等が介入した後に、リハ職種も介入をしていきます。

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老人ホームでのリハビリテーション

ここでは、何らかの理由で在宅生活が困難な方が生活をしております。

認知症の方が多いのですが、日中はラジオかテレビを見て過ごしており暇を持て余している利用者が多い状況です。

そんな中、自立歩行可能な利用者は、散歩・草花に水やり・スタッフのお手伝いの作業を行っています。

職員は介護職員のみで掃除・洗濯・清掃・入浴・排泄介助・食事の介助と薬の管理などを行っています。

セラピストの介入が、ほぼなかった事から、私が介入をし始めてきた所で、主に、週に1度体操教室と作業活動を行い、廃用症候群進行予防と認知症進行予防を行っています。

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予防介護リハビリテーション

臨床心理士と社会福祉士と協力して、各市内地域の高齢者の集会に参加して、作業療法啓発活動や介護予防活動を実施しています。

現在は、定期的に血圧・筋力・バランス・体重検査を行い、健康チェックと称して、セルフケア強化に努めてもらい、介護転倒予防活動を行っているところです。

セラピストの介入が皆無だった事と市民の知識・意識向上を目的に介入しているところです。日本の要支援者対象の転倒予防教室といったとこでしょうか。

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上記の通りチリの田舎でも、一定のサービスを行えているのが現状です。

しかし、まだ一般的なイメージとして「リハビリ=身体を鍛える」というイメージがあります。

しかし、その場所・時間でしている「作業活動」が生活を支えていることはまだ認識がされていない状況です。

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また、大きな問題点として、お金・交通の問題・車などの物理的問題があり、障害者の方が外に行けない環境であることが上げられます。

チリには公的な介護保険制度などはありません。

しかし、各地域毎に自主的・定期的に独自に高齢者の集会などを行って参加しています。

また、歩行困難な方には、近所で協力して車を出したり馬車を出して助け合って受診や集会に足を運んで来ます。お金や物がない中で工夫をしている姿があります。

集まって、バーベキューしたりご飯を食べたり、歌を歌ったり踊ったり、お話を沢山したりしています。

総じて運動とセルフケアの意識は高いとは言えないですが、それぞれに「作業」を持ち役割を持っている姿を見ると色々な「作業」の形があるのだと感じられます。

立派な閉じこもり防止・介護予防になっているのだと感じられました。

貧しさや不便さはありますが、昔の日本と同じように、家族や地域でお互いを支え合う文化がチリにはあると言えます。

日本のようにデイケアやデイサービスはありませんが、何かがあった時は近所で協力をして障害者の生活を支える姿は学ぶべき点であると思います。

 

 

*目次

【Vol.1】チリの医療事情

【Vol.2】リハビリテーション教育の特徴

【Vol.3】リハビリテーションの対象者・セラピストの働き方

【Vol.4】リハビリテーションに関わる住宅環境・福祉サービス

池本英哲先生 経歴

池本

経歴

1982年生まれ 埼玉県出身

健康科学大学卒

2008年 作業療法士免許取得

医療法人社団富家病院で作業療法士として、回復期リハビリテーション,療養型,特殊疾患病棟,透析,訪問リハビリテーション,デイケアなどの領域で7年勤務

現在:2015年3月より青年海外協力隊としてチリ共和国に派遣。作業療法の普及活動と啓発活動を行っている。

連絡先:Facebook 池本英哲 pond.book1026@gmail.com まで

 

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