相反神経抑制は内・外転筋にも生じるのか

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教科書には載ってない、脊髄反射のホント。

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1.Ia抑制(拮抗抑制)について考えてみましょう

 前回、脊髄反射について触れましたが、今回はそれに付随して生じるIa抑制反射について述べます。

 

 

前回述べた伸張反射は急激に筋が伸ばされた際に筋の長さを元に戻そうとする反射でしたが、伸張反射が生じている間、拮抗筋が弛緩していなければ合目的な関節運動の邪魔をしてしまいます。

 

 

これを防いでいると考えられるのが拮抗筋の運動ニューロンを抑制するIa抑制です(図1)。

 


図1. Ia抑制の模式図

 

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つまり、Ia群求心生線維は動作筋の運動ニューロンを興奮(伸張反射)させるのと同時に拮抗筋の運動ニューロンを抑制(Ia抑制)するという反射プログラムを作っているのです。

 

 

このような神経支配の様式は「相反神経支配」と呼ばれ、伸張反射弓だけでなく様々な脊髄反射や上位中枢からの下行路に観察されることが知られています。また、筋をリラックスさせる目的でIa抑制を用いようとする治療手技も少なくありません。

 

2.Ia抑制の反射パターン


図1のようにIa抑制を模式化すると非常に単純な反射のように思えますが、蝶番のような関節に拮抗関係が明瞭な筋が付着する関節は身体にほとんどありません。

 

 

それでは、実際の関節のように筋の拮抗関係が運動方向や肢位に依存して、めまぐるしく変化する場合に生じるIa抑制とはどのようなパターンを示すのでしょうか? 

 


実はIa抑制などの相反神経支配は筋の拮抗関係が明瞭な足関節・膝関節の伸筋・屈筋を対象によく調べられているため、より複雑な関節に関するデータはあまりありません。

 

 

しかしながら、いくつかの興味深いデータは存在しています。

 

 

1950年代のネコのデータではありますが縫工筋を対象にIa抑制の空間パターンを調べた研究が存在しています。縫工筋は運動の種類によって筋の拮抗関係が逆転する筋です。

 

 

つまり、股関節屈曲における共同筋は大腿四頭筋、拮抗筋はハムストリングスですが、膝関節屈曲では逆に共同筋がハムストリングス、拮抗筋が大腿四頭筋に入れ替わってしまうのです。

 

 

縫工筋を支配する運動ニューロンに対する相反神経支配を調べてみると、股関節付近の筋を支配する運動ニューロンは大腿四頭筋由来のIa群求心性線維から興奮性のシナプス入力を受け(伸張反射)、ハムストリングスからは抑制性のシナプス入力を受けます(Ia抑制)。

 

 

一方で、膝関節付近の縫工筋を支配する運動ニューロンではこの結合パターンが正反対になっているのです(図2)。

 


図2. ネコの縫工筋の伸張反射・Ia抑制のパターン

*脊髄ネコのデータを人の下肢筋の図に当てはめて作成しています。

 

以上のようにIa抑制の反射パターンは「筋 vs 筋」という単純なものではなく、ずっと複雑であることがわかります。さらに、拮抗筋であれば必ずIa抑制が生じるのかというと、そういうわけでもないようです。

 

 

ネコの内転筋と外転筋の各々には伸張反射が生じますが、拮抗筋である両者にIa抑制は生じないことが知られています。

 

 

いずれも1950年代の脊髄離断ネコのデータであるため、ヒトにおいても同じであるかはわかりません。ヒトのデータに詳しい方がいたら補足していただけると幸いです。

 

3.Ia抑制の調節


ところで、ある動作を行なっている間中、拮抗筋を支配する運動ニューロンはIa抑制を受け続けているのでしょうか。

 

 

もし、そうであるならば拮抗筋を支配する運動ニューロンの膜電位はどんどん深くなってしまい、拮抗筋であった筋を収縮させようとしても、その運動ニューロンの膜電位を上昇させるのに相当な時間が必要になってしまいます。

 

 

それに加えて、私たちの運動は動作筋の収縮と拮抗筋の弛緩による運動ばかりではありません。例えば、壁を手で押すような時には動作筋と拮抗筋を同時に収縮させるような同時収縮が生じますが、Ia抑制は同時収縮の邪魔になる可能性があります。

 


しかし、他の脊髄反射と同様にIa抑制性介在ニューロンの活動レベルは上位中枢やRenshaw細胞などの介在ニューロンからの調節を受け、必要に応じてON・OFFあるいは、その強弱が切り替えられているのです。

 

前回の記事>>【固縮と痙性】実習でも勘違いしやすい伸張反射をおさらい!

 

 

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